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債権回収(1)〜取引先が代金を払ってくれないときに〜

テーマ:契約・取引

2009年8月 6日

解説者

弁護士 持田光則

1.取引先が代金を支払わない理由

 取引先が増えてくると、取引代金や売掛金を払わないところが出てきます。もちろん、何らかの事情があって払わなくなる(払えなくなる)のですが、理由によって債権回収の方法も違ってきます。
 取引先が支払いをしない理由(延滞理由)にはいろいろあります。大胆に分類すると、
(ア)資金繰りがつかない場合
(イ)引き渡した商品の品質や提供したサービス内容に不満がある場合
(ウ)不合理な支払い拒絶(営業担当者の一言で経営者がへそを曲げていたり、ごねて代金等を減額させようとしていたりするケース)
の3種類に振り分けられると思います。今回は、これらの場合にどのような債権回収の方法が向いているかという観点を交えて、債権回収の方法を概観してみたいと思います。なお、これらの理由は複合的に存する場合も多く、いろいろご意見をいただきそうですが、一つの見方としてご容赦ください。


2.会社等による債権回収の一般的な流れ

 会社等で取引先からの入金が確認できない場合、
a.会社の担当者から督促の連絡をする。
b.書面(請求書・督促状など)を送付する。
c.継続的な取引であれば新規の取引を停止し、商品の引き渡しを停止して、売掛金の増加を止める。
d.営業担当者等が、取引先に出向いて状況を確認する。
e.取引先に引き渡し済みの商品が残っていればその商品を回収する。
といった方法をとるようです。
 延滞額が少なかったり、取引先が遠方であったりすると、dやeは費用対効果のバランスが悪いため行われないこともあります。余談ですが、私の知合いの卸売会社の代表者で、他の取引先の支払拒絶につながるとして、自らが取引先に乗り込んで回収するという方もいました。横のつながりのある業界では、代金の回収という意味だけではない場合もあるようです。


3.会社等による回収が困難な場合

 会社自身による回収が困難な場合には、裁判手続等を前提とした取り立てを行う必要が出てきます。
 弁護士や裁判所を利用した債権回収の方法には以下の方法があり、誤解を恐れずにその効果等を一覧にすると、以下の傾向があります。(実際に手続等を取られる場合は、ご自身でご確認ください。)


方法取扱機関等弁護士依頼費用効果延滞理由
(1)内容証明郵便弁護士など望ましい心理的強制にとどまる(ア)(イ)(ウ)
(2)調停手続簡易裁判所自社対応可合意できれば強制力(イ)
(3)支払督促手続簡易裁判所自社対応可争われなければ強制力(ア)
(4)小額訴訟手続簡易裁判所自社対応可簡易な手続で強制力(ア)(ウ)
(5)訴訟手続簡易・地方裁判所望ましい×判決による強制力(ア)(イ)(ウ)
(6)強制執行手続地方裁判所望ましい×強制力の実現(ア)(イ)(ウ)


 (1)は、配達証明付内容証明郵便で弁護士代理人名義等により支払を催促する通知を送る方法です。この方法は、あくまで任意の支払いを促すものです。ただ、弁護士名義としたり、「配達証明」(郵便局が配達日等の証明書を発行する)や「内容証明」(郵便局が発送した郵便の内容の証明をしてくれる)をつけた郵便で送付したりするため、後の裁判を連想させ(通知内容にも訴訟等を予告する場合も多くあります)、心理的な強制力が働きます。弁護士名義でなくても出せますが、より効果的であるため弁護士への依頼をお勧めします。支払わない理由の(ア)から(ウ)まで、やってみる価値はあると思います。


 (2)は、裁判所の調停制度を利用する方法です。調停委員を介して話合いをするため、双方が合意に至らなければ支払いを強制できません。(イ)のケースで合理的な話し合いのできる取引先であれば、調停委員の説得により合意に達する余地があります。(ア)や(ウ)のケースですと話し合う余地が乏しいケースも多く、あまりお勧めできません。厳密な証拠調べを行わないため、会社の内部の人材を活用して対応可能で、低コストな債権回収の方法といえます。


 (3)は、裁判所に督促の通知を取引先に送ってもらい、支払わない場合には再度の督促通知が発せられて強制執行が可能となる制度です。厳密な証拠調べをしないため、取引先が異議を申立てると通常の裁判に移行します。(ア)のケースで有効な方法のひとつです。この方法も、通常の訴訟になるまでは会社の人材を活用して対応可能であると思います。


 (4)は、簡易な手続で判決を得ることのできる裁判手続です。債権額60万円までの請求で可能です。取引先が異議を述べる場合でも判決が出ます。1回の期日で手続を終結させるため、証拠などの事前準備は(2)(3)の方法よりも慎重にする必要があります。この方法も会社内の人材で対応可能と思います。1回の期日で結論を出すため、(イ)のケースでは会社側の主張が排斥されてしまう可能性もあるので注意が必要です。


 (5)は、通常の裁判です。上記の方法で困難なケース(金額が大きい場合や、取引先が支払わない理由にそれなりの根拠がある場合)では、弁護士を依頼して対応することが望ましいと思います。売掛金の金額が少ない場合には、同種の取引先についてまとめて依頼することで、弁護士費用の減額をしてくれる事務所も多いと思います。支払わない理由の(ア)から(ウ)まで対応できますが、コストはかかります。


 (6)は、(2)〜(5)の結果、和解や判決にも従わずに取引先が支払わない場合にとる方法です。裁判所を通じて、債権や不動産、動産などの財産を強制的にお金に換えます。前提として債務名義と呼ばれる文書が必要で、先の(2)〜(5)の結果取得した判決書や和解調書が含まれます。ただし、取引先の財産を把握していないと申立てることができないことがあります。強制執行に適当な財産の選定などには相応のノウハウが必要であるため、弁護士への依頼をお勧めします。


 (2)〜(4)の方法は、会社の内部の人材で対応する場合には少ない費用で済みますが、弁護士に依頼する場合には、(5)より若干安い程度で、後に通常の裁判を依頼すると割高になる場合があります。


4.今回のまとめ

 取引先が支払わない理由によって債権回収に適当な方法は違ってきます。代金等を延滞する取引先が多いときは、会社の人材を育成して低コストの債権回収方法を取ることが可能です。営業担当者等が対応しているうちに支払わない理由を聴取しておくと後で役に立ちます。


氏名:持田光則

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
2002年・東京弁護士会所属

学歴:
1991年都立昭和高校卒業、1996年専修大学法学部卒業

得意分野等:
不動産トラブル、債権回収、交通事故、医療過誤、離婚、相続、倒産処理など一般民事事件を幅広く扱う。実家が青梅市にあり生梅や梅干の生産をしていることから農業経営にも興味を持ち、若手農業経営者への支援にも取り組んでいる。

所属事務所:
立川北法律事務所(東京都立川市)

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