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競業行為とは何か(1)従業員の競業行為

テーマ:労務一般

2011年11月10日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 競業行為とは、自らの勤務する(又は取締役を務める)会社と競合する業務を行うことです。会社法では、取締役の競業行為を禁止する規定があります。取締役だけでなく、従業員や退職後の社員についても競業行為は問題となりえます。今回からは、競業行為についていくつかの場面に分けて説明したいと思います。


 まず今回のコラムでは、在職中の従業員の競業行為について説明します。


【従業員の競業避止義務】

 一般に、会社の従業員は、在職中に会社の業務と競合する業務を行ってはいけない義務を負うとされており、これを競業避止義務といいます。従業員の競業避止義務については明文の規定がなく、法律解釈の問題となります。


【誠実義務】

 取締役のように会社法上の規制はありませんが、従業員も、信義則上、会社との労働契約の付随義務として競業避止義務を負うと解されています。これは法律的には、従業員が会社に負っている誠実義務(労働契約法3条4項)の内容に含まれると解されます。


 誠実義務とは、従業員がその在職中に会社の利益(生命・身体・名誉・信用・財産上の利益など)を害する行為を避ける義務のことです。この義務は、特別の合意や兼職規則がなくとも当然に発生する義務とされています。


【裁判例】

 従業員の競業行為が問題になった裁判例には、以下のようなものがあります。


 よくある事例として、会社の従業員を競合会社に引き抜いた者の責任が問われることがあります。個人には転職の自由がありますから、この自由との兼ね合いが問題となります。


 これについてある裁判例(東京地判決平成3年2月25日、ラクソン事件)では、個人の転職の自由は最大限に保障されなければならないから、従業員の引き抜き行為のうち単なる転職の勧誘にとどまるものは違法とは言えないとした上で、その引き抜きが単なる転職の勧誘を超えて、社会的相当性を逸脱し背信的な方法で行われた場合には、それを実行した従業員は上述の誠実義務に反する、つまり法的な責任を負うとしました。


 適法な勧誘と違法な勧誘の明確な線引きは困難ですが、不法行為責任を負うほどの引き抜き行為の「社会的相当性」と「背信性」を判断するにあたっては、転職する従業員の地位・待遇・人数・従業員の転職が会社に及ぼす影響、引き抜きの方法(秘密性、計画性)等の諸般の事情を考慮すべきであるとしています。


 このケースでは、会社に内密で慰安旅行を装ってセールスマンらを温泉地のホテルに連れ出し、競合会社の役員が会社説明を行って移籍を説得するなどしており、その態様が「計画的かつ極めて背信的であった」と評価されています。
 また、訴えられた従業員は、直前まで取締役兼営業本部長の地位にあった者であり、その営業活動による売上が会社全体の約80%を占めるまでに至ったといいます。このような幹部従業員の行為による会社に対する影響の大きさも考慮されたといえるでしょう。


 また、従業員が競業会社の設立メンバーとして会社の顧客を奪取したり、従業員を大量に引き抜いたりしたケース(大阪高判平成10年5月29日、日本コンベンションサービス事件)では、このような従業員の行為によって会社の業務に打撃が与えられており、誠実義務違反が認められました。


 他の事例としては、従業員が在職中に競業会社を設立し、海外取引先との取引を開始して会社の取引を停止させたケース(東京地判平成11年5月28日、協立物産事件)や、従業員が競業他社に対して業務上入手した販売価格を伝えたり、受注予定の取引相手先を紹介するなどして会社に損害を与えたケースで、従業員の損害賠償責任が認められています。


 競業避止義務といえば取締役が負うものと思いがちですが、今回は従業員についても問題となりうる場合について説明しました。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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