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下請取引の問題点(1)コンピュータソフトウェア開発委託

テーマ:システム

2011年9月 1日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 前回までは下請法の概要について説明してきました。今回からは少し実践的に、下請取引においてよく問題となる場面を取り上げてみたいと思います。中でも、近時特にトラブルの多い事例として、コンピュータソフトウェア開発委託を取り上げます。


【ソフトウェア開発取引の特徴】

 ソフトウェア開発委託取引は、ソフトウェアという、中身が見えず、抽象的で捉えにくい無体物を開発することを委託取引の目的としています。そこで発注者としては、請負人の開発したソフトウェアを実際に使った上で発注側の要求事項が満たされているかどうかを判断することが多く、発注者の要求内容と請負人の作成したソフトウェアの機能との間に不一致があった場合のトラブルが多くなりがちです。
 さらに、ソフトウェア開発においては再委託が常態化している現状があるため、下請法の適用があるケースが多いといえます。


 ソフトウェア開発における下請法に関するガイドラインとしては、「情報サービス・ソフトウェア産業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」があり、これを読めば発注側と請負側の注意すべき事項が詳しくまとめられていますので、一つの参考になるでしょう。


【請負か委託か】

 先に「請負人」という書き方をしましたが、実は「ソフトウェア開発委託契約」を「委任契約」とみるか「請負契約」とみるかという問題があります。すなわち、「請負契約」であれば、請負人は「仕事の完成=ソフトウェアの完成」に対して対価の支払いを受けるということになるのに対し、「委任契約」であれば、受任者は、仕事の完成に関わらず、履行の割合に応じて報酬を請求できることになるからです(民法632条、648条)。


 しかし、一般にソフトウェア開発委託契約は、発注者の要求したソフトウェアの納品が契約の目的であり、それをもって仕事の完成とするのが当事者の合理的な意思と考えられますから、契約書等で特に定めのない限り、請負契約とみなされるのが通常です。


 そして請負契約の場合には、「仕事の完成」が重要なメルクマールになりますから、「仕事」の内容と範囲が明確に定められている必要があります。一般に、完成すべき「仕事」の内容は「仕様書」という形で定められますが、ソフトウェアは、家の建築などとは違って、中身が見えず、抽象的で捉えにくい無体物であることから、仕様書の記載や変更を巡ってトラブルになることが多々あります。


【仕様変更に関するトラブル】

 発注者から、当初の仕様内容にない作業を要求された場合、請負人は仕様変更に伴うコストを負担しなければならないのでしょうか。


 この点、下請法では、当初の委託内容にはない追加的な作業が必要となった場合に、親事業者がその費用を負担しないことは、下請事業者の利益を不当に害することとなり、「不当な給付内容の変更」に該当し、下請法違反となるとされています。また、ユーザを交えた打合せで決定した仕様内容について、下請事業者から委託内容を明確にするよう依頼があったにもかかわらず、親事業者が正当な理由なく仕様を明確にせず、下請事業者に継続して作業を行わせるような場合、親事業者は費用の全額を負担しなければなりません。


【契約書の必要性】

 下請法の規制は上記のとおりですが、実際の取引においては、請負人が発注者の要求を受け入れて「仕様変更」を実施し、結果的に「仕様変更」についての合意、つまり変更契約があったと認められるようなケースもあります。この場合、対価についての話を後回しにして、作業のみを先行させてしまい、後になって「仕様変更」に伴って増加したコストを事実上請負人が負担する結果となる、ということもあるようです。


 現実には、ソフトウェア開発委託契約においては、明確な仕様書や契約書すらないまま発注が行われているケースも多く、請負人の自己防衛のためには、最低限、契約に際しては契約書を作成し仕様を明確化するための努力が必要でしょう。仕様を明確にしておかないことによるリスクは発注側にもあります。具体的な紛争になった場合には、その点が致命傷になることもあり得ます。


 そこで次回は、裁判になった具体的な紛争事例に基づいて説明したいと思います。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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