本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

電子商取引となりすまし(1)〜なりすまされた者と販売店との関係〜

テーマ:自社HP・eコマース

2004年11月 4日

解説者

弁護士 土谷喜輝

近年、多くの企業が店舗で行うのと同様のサービスをウェブサイトでも提供するようになっており、消費者は、インターネットを通じて、様々な商品を購入したり、旅行や宿泊の予約、銀行取引や証券取引までできるようになっています。このような電子商取引は、便利である反面、申込者を直接確認することができず、他人になりすました申込なども行われる可能性があります。


本人以外の第三者がした意思表示については、その第三者に代理権がある場合を除いて、本人に効果帰属しないというのが原則です。ただし、表見代理(民法109条、110条、112条)が成立する場合には、本人に効果が帰属します。その要件としては、<1>代理権があるかのような外観の存在、<2>代理権がないことについての相手方の善意無過失、<3>本人の帰責事由です。なりすましの法的効果についても、この表見代理が成立するかどうかが基準になりますので、以下、具体的事例について検討してみます。


*****

AがXになりすまし、Xの名前・住所・電話番号を入力して、Y店から商品を購入した場合。代金決済は、宅配業者が代金支払と引き換えに商品を引き渡すという代引きが利用されたとします。


*****

このようななりすましをしてもAの元に商品は送られてこず、Aには何のメリットもないのですが、Xに対する嫌がらせなどを目的として、このようななりすましが行われることもあります。また、実際にはXが申込をした場合でも、その後、その商品を購入したくなくなったXが、「申込を行っていない」、すなわち、「なりすまされた」と主張する場合もあります。以下、XがY店で既に会員登録をしていたかどうかで場合を分けて検討します。


Xが会員でない場合(1回限りの取引)

Xが今までY店に会員登録などをしたことがなく、全く初めての購入の場合、Xの帰責性(上記<3>の要件)は通常認められないでしょうから、XはAの行った行為について責任を負うことなく、Y店に対しても代金の支払義務を負いません。したがって、Y店としては、費用をかけて商品を発送しても代金を受け取ることができないということになりますが、登録されていない会員でも最初から商品購入ができるようにすることで売上を増やしているという効果もあるでしょうから、この程度のリスクはやむを得ないとも言えるでしょう。申込を受けた後、電子メールを送付して確認するという方法もありますが、Aが自己のメールアドレスを入力して、確認の返信をすれば、結局、なりすましが成立してしまいますので、リスクは残ります。


XがYの会員であった場合(継続的取引)

これに対して、Xが以前にY店に会員登録をしており、AがこのXのIDやパスワードを盗んでなりすましを行った場合はどうでしょうか。Y店のような電子商店は、「登録されたIDとパスワードで契約の申込が行われた場合には、本人に効果が帰属する」という条項を含む取引規約を定めており、これに同意した人(「同意ボタン」をクリックした人)だけが商品の購入を行うことができるようにしています。ウェブサイト上のこのような契約(クリックラップ契約などと呼ばれます)も原則として有効と考えられますので、上記のような合意をした以上、自己のIDとパスワードで契約されれば、全て責任を負うようにも思えます。
しかし、Y店のセキュリティが弱く、AがY店のシステムからXのIDとパスワードを盗んだような場合にまで、Xが責任を負うとするのは妥当ではないでしょう。したがって、いくら利用規約において登録されたIDとパスワードで契約された場合には責任を負うと書かれていたとしても、電子商店側のセキュリティシステムの安全性が低いような場合や一律に利用者の責任を認めるような条項の場合には、民法90条や消費者契約法10条により、無効とされる可能性もあります。
逆に、XがY店に登録したIDとパスワードをきちんと管理しておらずAに知られてしまったような場合には、Aに<3>の帰責事由が認められるでしょうし、Y店は登録されたIDとパスワードを信用して申込を承諾したということで、<1>外観の存在と<2>善意無過失も認められ、Xは代金の支払義務を負うことになるでしょう。ただし、Aがなりすましで高価な商品を大量に注文した場合など、通常の注文とは思えないような場合には、Y店の過失が認められる可能性もあります。


まとめ

以上から、Y店のような電子商店としては、IDやパスワードなどのデータ送信についてはSSLなどで暗号化しておくとともに、消費者契約法に反しない範囲で利用者の責任を追及することができる利用規約を定めておくことが必要です。また、最初の取引の場合には取引額を制限したり、大量の注文があった場合にはチェックすることができるシステムを構築することが望ましいと言えます。
なお、代引きの場合、商品を配達したが購入者が受け取らない(その理由としては、なりすましだけではなく、単に気が変わったなどもあります)こともしばしばありますが、電子商店は、やむを得ず、そのまま商品を引き上げている場合が多いようです。ただ、利用者側、電子商店側ともに、上記のような法律的効果を念頭においておけば、いざ紛争になったときの指針にもなるでしょう。
次回は、代金決済がクレジットカードであった場合を検討します。


<参考サイト>
電子商取引等に関する準則(経済産業省平成15年6月


土谷喜輝
ニューヨーク州法曹資格

主要著書
 『個人情報保護法Q&A』
  <部分執筆> (中央経済社 2001)
 『インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>』
  <共著>(ジェトロ 2001)
 『ビジネスマンのためのインターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001)
 『米国弁護士によるビジネスモデル特許事例詳説』(ジェトロ 2000) 等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2003年5月21日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ