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インターネット上の発言と法的責任:プロバイダ等の責任(1)

テーマ:ブログ・SNS

2011年3月24日

解説者

弁護士 石井邦尚

【加害者特定の手間】

 前回までに、インターネット上の発言で名誉毀損などの被害者となった場合、直接の加害者、例えば掲示板で発言した人を特定するための手続きなどを解説しました。


 しかし、加害者の特定までには、どうしても手間と時間がかかります。また例えば、ネット掲示板上で話題が盛り上がって会社を誹謗中傷する発言が多数の者から相次ぐようなケースでは、一人一人を特定しながら解決するというのは現実的でないということもあり得ます。


 一方、インターネット掲示板や動画共有サイトの管理者、プロバイダなど(以下では「プロバイダ等」と総称します)は、技術的には、ある特定の発言等を削除するといったことが可能です。さらに、意図的に海外の会社で運営しているような例外的なケースを除けば、直接の加害者を特定するより、プロバイダ等を特定する方が一般的には容易といえます。


 そこで、プロバイダ等に発言等の削除を請求したり、損害賠償請求をしたりしたいという要望がでてくるのですが、こうしたことは法的に可能でしょうか。


 今回は、まず削除請求の前提でもある、プロバイダ等の損害賠償責任について解説します。


【プロバイダ責任制限法】

 前回と前々回で、プロバイダ責任制限法で定められている発信者情報開示請求権について解説しましたが、この法律にはプロバイダ等の損害賠償責任に関する定めも置かれています。


 時々、誤解されることがあるのですが、プロバイダ責任制限法はプロバイダ等の損害賠償責任を根拠づけるものではなく、民法などによりプロバイダ等が損害賠償責任等を負う場合に、その責任を制限するものです。つまり、民法上はプロバイダ等が損害賠償責任を負うはずなのに、プロバイダ責任制限法に定められている一定の要件がみたされていれば、プロバイダ等は責任を負わないという法律なのです。


 そこで、プロバイダ責任制限法を検討する前に、まず、そもそもプロバイダ等が民法等に基づき損害賠償責任を負うのかを考えます。


【プロバイダ等の損害賠償責任】

 当たり前のことですが、プロバイダ等がネット掲示板や動画共有サイトなどの「発言の場所」を提供しているからこそ、インターネット上の発言等が可能になります。したがって、名誉を毀損する発言などがなされた場合、プロバイダ等がサービスを提供していなければ、そのような発言はなされず、被害者が被害を被ることはなかったということになります。


 そうすると、プロバイダ等は、いわば名誉毀損等に寄与あるいは加担しているとも言えそうで、当然に損害賠償責任等を負うべきようにも思えます。実際に、過去の裁判例では、プロバイダ等の損害賠償責任などを認めたものが複数あります。


 しかしながら、安易にプロバイダ等の責任を認めることには問題ないし弊害があります。プロバイダ等に責任を負わせるということは、プロバイダ等に責任を問われないように行動する義務を負わせることを意味します。プロバイダ等としては、まずは事前に、問題のありそうな投稿等を選別して掲載を拒否することになるでしょう。ところがこれは、事実上の事前検閲であり、表現の自由や通信の秘密の保護との関係で問題です。


 さらに、プロバイダ等が名誉毀損、著作権侵害などに該当するか否かを判断することは必ずしも容易ではありません。結果的に判断が誤っていたことにより法的責任が問われるとすれば、少しでもリスクのあるものは掲載しないといった萎縮効果が生じ、プロバイダ等が過度に掲載拒否や削除を行う危険性もあります。これは表現の自由との関係で非常に問題です。


【過去の裁判例】

 そこで、過去にプロバイダ等の法的責任を認めた裁判例でも、名誉毀損等、何らかの問題のある発言等がなされたからといって、直ちにプロバイダ等の責任を認めるということではなく、プロバイダ等に法的責任を問う必要性とその問題点の両面を考慮して結論が出されています。


 具体的には、例えば、大学のネットワークで名誉毀損発言が発信された事件では、ネットワーク管理者は名誉毀損発言が発信されていることを現実に認識しただけでなく、その内容が名誉毀損に該当することなどが一見きわめて明白であるような例外的な場合のみ、名誉毀損についての損害賠償責任等を負うとされています。


 一方、IPアドレス等の情報を保存せず、発信者(加害者)を特定することが事実上不可能な状態で運営されているネット掲示板の管理者の責任が問われたという、少し特殊な事案では、管理者は掲示板において他人の名誉を毀損する発言がなされたことを知り、または知り得た場合には、直ちに削除するなどの措置を講ずる義務があるとし、さらに、このケースでは名誉毀損発言がなされていることを知りながら放置したとして、損害賠償責任が認められています。


 後者の裁判例の方が、「名誉毀損に該当することなどが一見きわめて明白」というような要件を要求しておらず、管理者の責任を広く認めていますが、これは発言者を特定できないようにして運営されているという特殊性が影響していると思われます。それでも、後者の裁判例でも、単に名誉毀損発言がなされたというだけ、あるいは名誉毀損発言を知り得たというだけで損害賠償責任を認めたわけではなく、「知りながら放置していた」ということを踏まえて損害賠償責任を認めています。


 このように、過去の裁判例では、プロバイダ等の責任を簡単には認めていません。しかし、個々の裁判例の判断が必ずしも一致しているわけではないこともあり、こうした裁判例をふまえたとしても、プロバイダ等は法的責任を免れるためにどのように行動すればよいかが曖昧で、具体的なケースで判断に迷うという問題がありました。そこで、平成14年施行のプロバイダ責任制限法で、「このような要件をみたせば損害賠償等の法的責任を負わない」ということが明確にされました。その中で、被害者から「この発言を削除して欲しい」といった要求があった場合の、プロバイダ等の対処方法も実質的に定められているといえます。


 そこで、次回はプロバイダ責任制限法を解説しながら、名誉毀損発言等に対してどのように削除要求を出せばよいかなど、名誉毀損発言等に対する対処方法を説明します。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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