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法律コラム


[組織・運営|2010年11月11日]
弁護士 高橋弘泰

取締役と刑事罰(1)

弁護士 高橋弘泰

【取締役にとって必須の知識】

 これまでのコラムでは主に取締役の民事上の責任について説明してきましたが、これから何回かに分けて、取締役の刑事上の責任(刑事罰)について説明していきたいと思います。

 取締役の持つ広範な権限と社会的な影響力の大きさ故に、会社の取締役であるために刑事罰の対象となる行為が存在します。
 こうした行為をわざと(故意に)行ってはいけないのは当然ですが、不注意から間違って犯罪に手を染めることのないように、会社法をはじめとする取締役についての刑罰法規は取締役にとって必須の知識といえます。

 今回は、会社法上の刑罰法規である「取締役の特別背任罪」と「会社財産を危うくする罪」について説明します。

【取締役の特別背任罪】

 取締役の特別背任罪は、「自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を与える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたとき」(会社法960条)に成立します。刑法247条の背任罪の特別法といえますが、行為の定義としては背任罪と同じくかなり抽象的なので、逆に立件の難しい犯罪でもあります。

 「任務に背く行為」とは、一般的には取締役の善管注意義務や忠実義務に違反する行為と考えられています。典型的なのが、法令・定款・株主総会決議への違反ですが、行為の実質を見て検討されます。

 特別背任罪の典型として考えられるのは、銀行の取締役が、実質的に破たんしている取引先に対して、回収の見込みがないにもかかわらず無担保で融資を行い、その結果当該銀行に損害を与えたというケースです。

 もっとも、このような融資行為がすべて特別背任罪として処罰されるわけではなく、本コラムの「役員の法律(2)取締役の善管注意義務とは?」の回で説明した「経営判断の原則」の観点から、犯罪の成立が否定される場合もあります。ごく単純化すれば、そのポストに就いている取締役の持つべき能力に照らして合理的な意思決定といえたか否か、ということです。

 特別背任罪の主体には、取締役のみならず、監査役その他、取締役の職務代行者も含まれます。未遂犯、国外犯も処罰の対象となります。

 刑法上の背任罪が「5年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金」であるのに対して、取締役に適用される特別背任罪は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」と厳しいものになっています。懲役と罰金を併科することもできます。

【会社財産を危うくする罪】

 会社法963条に定められている「会社財産を危うくする罪」とは、取締役(監査役も含む。行為の主体は特別背任とほぼ同じです)が、以下の4種類の行為を行う場合を指します。

  1. 裁判所又は創立総会若しくは種類創立総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたとき
  2. 株式会社の計算において不正にその株式を取得したとき
  3. 法令又は定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき(いわゆる蛸配当)
  4. 株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分したとき

 この犯罪の特徴は、具体的な会社の損害が不要であり、自己又は第三者の利益を図る目的や会社を害する目的がなくても成立することです。

 それだけに、知らず知らずのうちに加担してしまう危険性の大きい犯罪といえるかもしれません。たとえば粉飾決算に会社の取締役が関与していた場合などもこの犯罪に該当します。

 他の実例としては、取締役がデリバティブ取引により会社に損害を及ぼしたとして有罪になったケースがあります(東京高裁平成15年8月11日判決)。このケースでは、デリバティブ取引が定款記載の事業目的の範囲外かどうかが一つの争点となりましたが、会社の資産状態や経営成績に比べて資産運用の規模が過大であり、本業の遂行に重大な影響を及ぼす損失を発生させる可能性を伴うことから、定款所定の目的に沿う業務又はその遂行上必要な附帯的業務の通常の範囲内にあるとは認め難く、「営業の範囲外」における投機取引のための処分行為に該当するとされました。

 法定刑は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金で、懲役刑と罰金の併科も可能です。
 国外犯があることも、特別背任罪と同様です。ただし、特別背任罪とは異なり、未遂は処罰されません。

【関連リンク】

氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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