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法律コラム


[人事・労務|2010年4月15日]
弁護士 石井邦尚

人事・労務の基礎(11) 育児休業

弁護士 石井邦尚

 先日(2010年3月上旬)、文京区長が育児休業を取得すると公表して話題になりました。文京区の男性職員に育児休業取得者がいないことも背景にあるようです。男性が育児休業を取得して、昇進などに影響はあるのでしょうか。育児休業中の収入はどうなるのでしょうか。

育児・介護休業制度の発展

 育児休業・介護休業の制度は、育児・介護休業法により義務づけられています。
 育児休業法が成立したのは平成3年(平成4年から施行)、それを改正して介護休業も制度化されたのが平成7年(以降、「育児・介護休業法」と呼ぶのが一般的です)で、その後、何回か改正されてきました。比較的新しい法律ではありますが、「育児休業」「介護休業」という言葉はだいぶ定着してきたのではないかと思います。
 育児休業や介護休業は、出生率の低下、少子・高齢化の進行、核家族化の進行などを受け、仕事と育児の両立の難しさを緩和するために、制度化されてきました。特に育児休業について、当初は女性の就業援助措置、女性労働者の能力発揮の促進といった意識が強い面もあったようですが、育児・介護休業法は、男女に共通の休業の権利を保障する法律になっています。何回かの改正を経て、適用される雇用者の範囲を拡大したり、育児休業期間を延ばす、雇用保険法改正により育児休業給付金を増やすなど、徐々に、より休業を取得しやすいように改正されてきています。
 しかしながら、男性の育児休業の取得はあまり活発ではないようです。新聞報道では、文京区の男性職員に育児休業取得者がいないことも、文京区長が育児休業の取得を公表した背景にあるということでした。男性の育児休業等の取得が進まない理由としては、まだまだ育児は女性がするものという意識が根強いという他にも、育児休業取得がその後の昇進に影響するのではないか、会社に迷惑がかかるのではないかという懸念、休業期間中の収入の問題などがあるようです。これらについて、法律はどのようになっているのでしょうか。

育児休業の取得は昇進に影響するか

 育児・介護休業法は、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と明文で定めており、育児休業取得等を理由とする不利益取扱いは禁止されています。これにより、解雇の他、降格や減給、不利益な配置転換などは禁止されます。
 しかしながら、昇進への影響については、そもそも「不利益な取扱い」があったのか、あったとしても育児休業取得等と因果関係のあるものなのか、評価が難しいと思われます。例えば、同期入社の者が昇進したからといって、自分も昇進すべきとは言えません。昇進は、それまでの業績や、その人の資質・能力(例えば、リーダー向きか)、会社の方針など、様々な要素がからんでおり、評価が難しいのです。
 とはいえ、最近は育児休業もだいぶ浸透してきており、育児休業取得等により、昇進に影響を及ぼさないということを従業員に明示している会社も増えてきているようです。そもそも、育児休業制度は、仕事と家庭の両立を支援することにより、よりよい就業環境を作り、各従業員の能力をより発揮してもらおうというものです。短期的には、会社にとって負担も少なくないかもしれませんが、中長期的には、離職率の低下、意欲の向上などを通じて、会社の発展に寄与するはずです。会社には、昇進も含めて不利にならないよう、配慮が求められます。また、育児休業に消極的な会社の「気風」を変えていくには、育児休業取得者が、会社にとってプラスになるという実績を作っていくことも求められるでしょう。単に「権利」として主張するだけでなく、復職後は、是非、それまで以上に活躍するよう、がんばってもらいたいと思います。
 なお、育児休業の取得は、事故や病気による休職、突然の退職などと異なり、事前にわかります。会社、従業員とも、よく意思疎通を行い、協力して準備を進めることが大切でしょう。

育児休業中の収入

 育児休暇中に、一定の賃金等を支払う会社もありますが、それほど多くはありません。会社に特別の制度が設けられていなければ、働かない以上、ノーワーク・ノーペイの原則で、会社から給料は支払われません。
 ただし、雇用保険から、休業開始前の賃金の50%が「育児休業給付」として支給されます。育児休業期間中は、一定の社会保険料免除などもあるので、手取り金額が厳密に半減するわけではありませんが、それに近い大幅な収入減となります。このことが、男性が育児休業を取得しづらい、取得しても短期間で復職することの大きな理由となっていると思われます。長期間の育児休業を取得しようとする場合は、あらかじめ計画的に準備しておく必要があります。

育児休業等に関する制度の概要

 最後に、法律で求められている育児休業や育児に関する制度の概要を説明します。
 労働者は、子が1歳に達するまでの間、育児休業を取得できます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。一定の場合、子が1歳6か月に達するまでの間、育児休業をすることができます。不利益取扱いの禁止、休業期間中の給与などは、前述のとおりです。
 また、育児休業取得者以外でも、例えば、3歳未満の子を養育する労働者については、勤務時間の短縮等の措置を講じなければならない、小学校就学前の子を養育する労働者が請求したときは、1月24時間、1年150時間を超えて労働時間を延長してはならない、深夜業を免除しなければならないことなどが、法律で定められています。
 前述しましたが、仕事と家庭の両立を支援し、各従業員の能力をより発揮できる環境を整えることは、中長期的には、会社の発展に寄与するはずです。そうした観点から、法律で求められている以外の点も含め、よりよい就業環境を作っていただければと思います。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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