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法律コラム


2010年4月 8日|弁護士 石井邦尚

人事・労務の基礎(10) 労働者派遣(2)

弁護士 石井邦尚

1.労働者派遣の規制 -受入期間の制限

 前回、当初は派遣が認められる業務(「派遣業務」)が一定の専門的業務に限定されていたが、平成15年の労働者派遣法改正により、原則として制限がなくなったと説明しました。とはいえ、派遣労働者の受入期間の制限については、政令で定められている26の専門的業務と、それ以外の業務とで大きく異なります。
 政令で定められている26の業務には、例えば、情報処理システム開発、通訳・翻訳、金融商品の営業などが含まれます。こうした専門的業務は、労働者派遣に伴う弊害が比較的小さいと考えられているのです。
 これら26の専門的業務には、派遣労働者を受け入れる期間に制限がありません。この他に受入期間の制限がないものは、次のとおりです。

  • 3年以内の有期プロジェクト業務(必然的に3年以内になります)
  • 日数限定業務(1ヶ月の所定労働日数の半分以下かつ10日以下のもの)
  • 産前産後・育児・介護休業を取得する労働者の業務(休業取得者が職場復帰するまでに限られます)

 これら以外の業務は、受入期間が原則として1年間に制限されています。ただし、労働者全体の過半数が所属する労働組合からの意見聴取など、そのような組合がない場合は労働者の過半数から選ばれた代表者からの意見聴取などの手続きをとることにより、最長で3年間まで延長することが認められています。1年を超える期間の労働者派遣を受けようと考えている会社は、この手続きを忘れないでください。
 なお、ある派遣労働者についての契約が終了した後、「同一の業務」について別の労働者の派遣を受ける場合、前の派遣労働者についての契約が終了してから3ヶ月を超えていないときには、継続して役務を受けているとみなされ、両者の期間が通算されるので注意が必要です。

2.派遣先の直接雇用義務

 派遣先は、次の場合には派遣労働者を直接雇用しなければならない責務を負います((3)は努力義務です)。

  • (1)派遣期間の制限がない業務について、同一業務に同一の派遣労働者を3年を超える期間受け入れている場合で、その業務に新たに労働者を雇い入れようとするとき。この場合、まずその派遣労働者に対して雇用契約の申込みをしなければならない。
  • (2)派遣期間の制限がある業務について、派遣先が期間満了後も派遣労働者を使用しようとする場合で、その派遣労働者が雇用されることを希望するときには、雇用契約の申込みをしなければならない。
  • (3)派遣期間の制限がある業務について、1年以上(最長3年)、同一の業務に同一の派遣労働者を受け入れており、派遣受入が終了した日以後に、その業務に新たに労働者を受け入れる場合には、その派遣労働者を雇い入れるように努めなければならない。

 (1)(2)の義務があるからといって、自動的に労働契約関係が創設されるわけではありませんが、これら義務に違反した場合には、厚生労働大臣は指導・助言、雇用契約申込みの勧告、企業名の公表などの措置をとることができます。

3.その他の派遣元・派遣先の講ずべき措置

 派遣元は、派遣労働者と雇用契約を結んでおり、雇用主としての責任を負い、派遣先は、派遣労働者が現実に就労していることを踏まえた責任を負うというのが基本的な考え方です。
 派遣元は、基本的責務として、派遣労働者の就業・教育機会の確保、労働条件の向上、雇用の安定に必要な措置を講ずることにより、その福祉の増進に努める義務を負います。また、派遣先が派遣就業に関する法令を遵守し、その他派遣就業が適性に行われるように、必要な措置を講ずるなど適切な配慮をしなければなりません。さらに、具体的には、派遣労働者に対して派遣先での就業条件を明示した文書を交付する義務や、派遣先への派遣労働者の社会保険加入状況の通知義務などが課されています。
 派遣先は、基本的責務として、労働者派遣契約に定められた就業条件に反することのないように適切な措置を講じなければならず、派遣就業が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。さらに、具体的には、派遣労働者からの苦情の申出について、派遣元との密接な連携のもとに、誠意を持って遅滞なく、苦情の適切・迅速な処理を図らなければならないこと、派遣先管理台帳を作成・保存しなければならないこと、派遣先責任者を選任しなければならないことなどが定められています。

4.偽装請負

 以上のように、労働者派遣法は、労働者派遣に伴う弊害を抑えるために、受入期間制限などの規制を行い、派遣元・派遣先に様々な責務を負わせています。
 しかしながら、このような規制や責務を免れようとして、実態としては労働者派遣であるにもかかわらず、形式的には業務処理請負・委託契約が結ばれたり、出向という形がとられたりしていることがあります。労働者派遣か否かは、契約の形式ではなく、実態によって決まります。
 具体的には、労働者派遣でなく真に請負であると評価されるには、(1)自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであり、かつ(2)請け負った業務を自己の業務として相手方から独立して処理するものであることが必要です(詳細については、厚労省が「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」という告示を定めています)。(1)については、業務遂行の指揮命令や労働時間等の管理を自ら行うことなどが必要であり、(2)については、事業主としてのすべての責任を負うとともに、単に肉体的な労働力を提供するものではないことなどが必要です。
 偽装請負である、すなわち労働者派遣であるとされた場合、労働者派遣法違反として、罰則や労働者派遣に関する行政監督の対象となります。偽装請負は、社会的にも非難されるものであり、避けるようにしましょう。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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