循環型鉛筆製造システムで苦境脱却 [北星鉛筆]
杉谷和俊社長
| 会社名 | 北星鉛筆(株) |
|---|---|
| 代表者 | 杉谷和俊社長 |
| 業種 | 製造業 |
| 所在地 | 東京都葛飾区四つ木1-23-11 |
| 電話 | 03-3693-0777 |
おが屑を再資源化
東京都の地場産業の一つである鉛筆製造業。江戸時代から続く伝統産業も近年、少子化や筆記具の多様化、事務機器のOA化、海外生産の増大などに伴い、軒並み苦境に立たされている。50年以上の歴史を持つ北星鉛筆(葛飾区)は約10年前に循環型鉛筆産業システムを考案し、元気を取り戻した。
鉛筆製造の木工工程では40%がおが屑として排出される。排出されたおが屑は工場内の焼却炉で燃やしたり、産業廃棄物として捨てられたりしていた。都市化に伴い市街地での焼却は難しくなり、産廃処理もコストが高い。
「焼却釜の維持・修理費用もばかにならない。良い方法はないか」−。そこで考えたのが、おが屑を圧縮し薪のように固形燃料化することだった。固形燃料はエコマーク商品化に成功、当初キャンプ場などに売り込んだ。だが、需要は少なく失敗した。
「粉末にすれば用途が広がるのではないか」−。数年をかけ、おが屑をブロック状に固めた後、粉末に再加工する粉砕装置の開発に成功した。東京都から創造技術活動・経営革新などの認定を受けて事業化を推進し、木の粘土「もくねんさん」を生み出した。
「木になる」粘土・絵の具を開発
木の材質は鉛筆の木として有名なインセンスシダー。木のパウダーに水を加え、接着剤としてポリビニール・アルコール(PVA)を使用。乾燥後は木に戻る。漆を塗ると日本の伝統乾式漆技法と同等の加工具合になり、湿気や水に強く長期保存も可能。
この技術を応用したのが「木になる絵の具」。創造法・技術革新や、産学公連携の補助金事業の認定を受けて玉川大学芸術学部と共同開発した。水で溶かして配合できる顔料や接着剤、アルギン酸ナトリウムとおが屑粉末を混合して絵の具を製造する。土に埋めても微生物の力で分解される。
画板やベニヤ、コルクなど木製のものによく付き、仕上がりは「和風油絵のような風合い」。ライトの光の照り返しがない艶消し感と重厚感が人気を集めている。乾燥が早いのも特徴だ。「ウッドペイント・もくねんさん」として製品化し、りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社が共催する第17回中小企業優秀新技術・新製品賞の優良賞と産学官連携特別賞を受賞した。
北星鉛筆の杉谷和俊社長は「捨てていた部分を再利用し、利益に還元できれば、中国製品に対抗する力がつく」と強調する。思いは「日本の鉛筆製造業が世界競争に勝てるような企業存続基盤の確立」であり、「世界中で日本の鉛筆が使われる日を夢見ながら企業の体質改善に取り組む」(同)。同社には見学に来る小学生らの声が響き渡っている。
「ウッドペイント・もくねんさん」
先代の思い受け継ぐ
鉛筆の国内生産量はピーク時の3分の1以下。最も消費している小学生は減少の一途を辿り、安価な中国製品が国内メーカーを直撃する中、直球勝負では生き残れないのが現実だ。廃業・転業が相次ぐ。北星鉛筆の杉谷和俊社長は、「鉛筆は我が身を削って人のためになり、真ん中に芯の通った人間形成に役立つ立派な職業。鉛筆がある限り家業を続けろ」という先代の思いを循環型鉛筆製造という形で受け継いだ。
掲載日:2010年3月10日

