遠心力技法で細密造形を可能に[ユウビ造形]
森田寿一社長
【中小集積・東大阪でも異色の存在】
全国一の中小企業集積地、モノづくりの町・東大阪といえば機械、金属加工の分野で、匠の技を持つ技術職の人たちが多い。そんな中、ユウビ造形は、異色ともいえる“ホビーの分野”で独自の「遠心力技法」を駆使して細密造形物を手掛け、成長を遂げている。
同社のホビー商品は、人気キャラクターのイラストを基に企画、デザインしてシリコン型で立体物をつくり、その原形に樹脂を注入して細密造形商品に仕上げていく。樹脂を注入する過程で、たまる空気をどこに逃がすかが問われるところ。真空状態の中で注入作業を行っている。
森田寿一社長はサラリーマン生活から全く違う道に飛び込んだ。見よう見まねの技法について、空気が100%抜けていないことに疑問を感じた。悩んだ末に考えついた空気抜きが、遠心力を利用した技法。型精度を高め、「微細加工」につながる技術を確立した。92年の会社設立から3年目の出来事だった。
「その瞬間は今でも思い出す」という。円盤上でシリコン型を回転させ、遠心力を利用して注入樹脂を先端まで詰め込み、空気の逃げ道を設けた技法は、細かい線、人形の髪の毛、爪(つめ)の先までもきっちりと仕上がる。卸問屋の評判になった。
さらに、シリコン型に使う離型剤を開発した。従来のオイル状シリコンは成形品に浸透し、べたつくため、後処理の洗浄が難作業だった。注入するポリウレタン樹脂の分子量より離型剤の分子量を大きくして成形品に浸透するのを防ぎ、洗浄しやすくして成形品の品質を高めた。「寝ずの苦労で、テストの繰り返しだったが、ここで基盤技術が確立できた」(森田社長)。
【ホビーから自動車分野へ】
同社は、卸問屋からの注文が殺到するだろうと予測した。しかし、森田社長は「確かに評価は受けたが、受注量は急激には増えなかった」と笑いながら話す。逆に、入る注文は「ユウビだったら難しいものでもやってくれるだろう」と、条件的に厳しいホビーばかりが舞い込んだ。
いま挑戦しているのは、多品種少量生産のホビー商品の工程短縮だ。原形づくりまで10日間を要するほど大変な作業。中小企業基盤整備機構が設置したインキュベーション施設「クリエイション・コア東大阪」に8月に入居し、前川佳徳大阪産業大学教授の力を借りて、3次元CADで3日間に短縮することを目指している。
一方で経営安定化にも余念がない。スポーツ関連、国内のテーマパーク向けの商品開発に力を入れた結果、ホビーの売上高比率は5年前から40%台に下がってきている。
ホビーの基盤技術が認められて自動車産業の分野にも進出。今後、期待するのはワイヤハーネス(樹脂製)製品の加工だ。すでに取引先の製品精度検査に合格し、設計段階からの製作を任された。ITでスキルアップし、次の事業の柱に育てていく。
応接室前に陳列している自慢の商品
【次々と課題を掲げ挑戦】
創業当時、昼夜の別なく働きづめの森田社長の姿を見た幼稚園児の長男が「大人にはなりたくない。あんなに働きたくないから」と言ったように、幾度か“死の谷”を乗り越えてきたベンチャー企業。次から次に課題を掲げて果敢に挑戦、クリアする経営姿勢は見事としか言いようがない。ホビーでは、次のテーマとして各地域の祭りを演出する御輿(みこし)、だんじりを造形品で残す企画を提案、ウレタンのリサイクルも考えている。誠心誠意の経営には協力者が多い。
掲載日:2004年12月22日

