J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]  >  経営課題を解決する  >  資金調達・会計・税金  >  こうして活用しよう 中小企業向けファンド  >  企業事例  >  株式会社ホテル森本

企業事例 再生編
株式会社ホテル森本
身体だけでなく心までも癒す120年以上の歴史を有する老舗旅館
代表取締役社長 森本 康敬
代表者:代表取締役社長 森本 康敬
事業内容:旅館業
本社所在地:石川県加賀市片山津温泉乙63番地の1
URL:http://www.oyado-morimoto.com/
設立年:2013年(創業1892年)
資本金(2018年3月31日現在):15百万円
売上高:非公開
従業員数(2018年3月31日現在):30名
ファンド事業:中小企業再生ファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合名):いしかわ中小企業再生ファンド投資事業有限責任組合(北國マネジメント株式会社)

事業概要

120年以上の歴史を有する老舗旅館

片山津温泉(石川県加賀市)は、加賀三湖の一つ「柴山潟」の湖底に源泉がある。同社が運営する「湖畔の宿 森本」は、その名が示す通り「柴山潟」を一望できる湖畔にあり、1892年(明治25年)の創業以来、実に120年以上にも及ぶ歴史を歩んできた老舗旅館である。

「森本」の玄関先

「森本」の玄関先

明治以降、片山津温泉と共に発展していった「森本」であるが、バブル崩壊以後の長期的な景気低迷等があり、経営不振に陥る。そのような中、2013年、再生ファンドの支援を受けることに成功した同社は、新たに森本康敬氏を代表取締役社長(以下、森本社長)に据えて、経営の建て直しを行った。

現在、「森本」は、身体だけでなく心までも解きほぐすハード・ソフトの両面でのおもてなしを通じて、お客様から非常に高い支持を獲得している。

片山津温泉街の中心地にある「森本」

電車で東京から約三時間、また、大阪から約二時間半でたどり着ける全国でも名湯と名高い片山津温泉、その源泉は、加賀三湖の一つ「柴山潟」の湖底にある。さかのぼること1653年、当時藩主の前田利明公が鷹狩りに訪れた際、水面に水鳥が群れていたことから、温泉が発見されたという。その後、温泉開発が進められるが、水中の湯源確保に難航、発見から200余年を経た1876年、ようやく温泉入浴が可能となった。このような片山津温泉街の中心地に明治時代から旅館を構えるのが「森本」である。

隣接している泉源地の「湯の元公園」では、屋形船のほか、縁日やライブ等季節に合わせた各種イベントが開催される。弁財天と竜神様が祭られ湖に浮かぶ「浮御堂」や観光客に人気の「足湯」は徒歩1分、片山津温泉の源泉を用いた「源泉豆腐」作り、源泉を用いて世界に一つだけのハンカチやスカーフが作れる「晶子染め」といった体験も徒歩数分圏内で楽しむことができる。

身体だけでなく心までも解きほぐす

「森本」の館内は、隅々まで清掃がいきわたり、穏やかで落ち着いた、そして、どこかほっとできる純和風の装い。「閑雲」「紫水館」「本館」の3種の客室がある。ベッドルームを備える和モダンな「閑雲」では、一日に7色の表情を見せる「柴山潟」が眼下に広がり、日本三大山と謳われる霊峰白山を一望できる。湖に浮かぶようにして建つ「浮御堂」、湖からあがる高さ70メートルの日本有数の大噴水、さらに夏には湖上花火、秋には紅葉と、四季折々で豊かな彩りを見せる風景を、お部屋で寛ぎながら堪能することができる。

閑雲棟一例

閑雲棟一例

温泉施設は、大浴場のほか、露天風呂、貸切風呂があり、ナトリウム・カルシウム塩化物泉の天然温泉が24時間掛け流しで満たされている。神経痛、冷え性、切り傷、やけど、慢性皮膚病、痛風等によいとされ、絶景を楽しみながら、身体の芯まで温まることができる。また、女性用大浴場には、人気の各種シャンプー&リンスが揃えられている等、細やかな心配りがなされている。

男性大浴場

男性大浴場

そして、朝食や夕食も「森本」の大きな魅力。ずわい蟹、のどぐろ、能登牛、山菜、茸等、北陸ならではの気候風土が育んだ海の幸、山の幸、大地の恵みを、山本宗徳料理長の技巧と感性のもと、堪能することができる。

懐石料理の一例

懐石料理の一例

さらに、宴会場やカラオケ、ゲームセンター、会議室、クラブ、焼酎バーのほか、「森本」の選りすぐった品が並び見せ方にもこだわったお土産コーナーも時が経つのを忘れてしまう空間となっている。

客室、温泉、料理、各種施設、そして何よりお出迎えから最後のお見送りまでスタッフ一人ひとりのきめ細やかな対応、「森本」だからこそのハード・ソフト両面でのおもてなしが、宿泊サイトも含めて非常に高い評価に繋がっており、多くのファンを獲得している。

再生ファンドに出会うまでの経緯

再生支援協議会を通じて再建を目指す

片山津温泉は、経済発展と共に全国でも有数の歓楽温泉街として発展していった。しかし、バブル崩壊以降は団体客を中心に減少していく。1990年代後半に入ると、次々と大手ホテルや老舗旅館が撤退・廃業に追い込まれ、温泉街全体としての活気も一段と落ち込んでいくという負のスパイラルの状態にあった。

このような厳しい外部環境の中、「森本」も一時は低価格・高稼働率で凌いでいたが、片山津温泉全体の低迷には抗えず、売上が半減する等、深刻な経営不振に陥っていった。

そこで、状況を打開すべく同社は、まず石川県の中小企業再生支援協議会へ相談し、年単位のやりとりを重ねた末、本格的な再建を目指すため再生ファンドを運営する北國マネジメント(株)を紹介してもらった。

再生ファンドの活用について

財務体質の健全化に着手

2013年、同社は自ら作成した再生計画をもとに(独)中小企業基盤整備機構が出資し、北國マネジメント(株)が運営するいしかわ中小企業再生ファンド投資事業有限責任組合から投資を受けた。そして、ファンドの支援のもと、森本社長が新たな代表として設立した新会社へホテル事業を譲渡した後、旧会社を整理するという第二会社方式によって債務超過に陥っていた財務を健全化した。森本社長は、代表として再生の指揮をとることとなった当時の状況について、「財務の健全化だけでなく、経営を抜本的に変えていく必要があった。中小企業再生支援協議会に相談させて頂いてから数年を経て、会社の課題や対応策を私自身も掴めるようになっていた。再生を行える自信みたいなものがあったこと、そして何よりファンドから支援を頂けることから、リスクはあるが代表に就く意思が固まった。また、代表に就任してからは、置かれている現状は厳しいながらも、ファンドの支援によってリスタートのチャンスを頂いたことをスタッフとしっかり共有したため、わりと明るい雰囲気で前向きに再生への道筋を歩めたように感じている。」と振り返っている。

現場に入り込んでの手厚い支援

同社は、金融支援のみならず、北國マネジメント(株)から外部取締役を招き入れ、毎月1回の経営会議を開くと共に、外部取締役も含めた複数の担当者から週1回以上の現場レベルでの経営支援も受けることができた。

経営課題となっていた予算・原価管理では、仕入原価や人件費、設備投資等について期初に予算を作成、毎月実績と照らし合わせながら管理していく手法を学んだ。そして、各種補助金の活用や、食材の仕入れを工夫する等、サービス品質を維持しつつ原価を管理していく体制を徐々に築き上げていった。

営業面では、森本社長自ら立案したプランを、担当者と相談して磨き上げていった。今までは、オールターゲットでプランを作っていたが、特定のターゲットに絞り込んだ戦略的なプラン二ング手法を学び、広告も効果がわかるものにこだわって行った。また、ネットを含めた代理店についても、改めてそれぞれの費用対効果を明らかにし、見直しを行っていった。

森本社長は、「担当者さんには、『森本』のスタッフのように中に入り込んで支援をして頂いた。財務やマーケティングの面だけでなく、人材教育、サービス内容、温泉施設の機械の仕組みやエアコンの集中システムといった設備に至るまで、我々と密にコミュニケーションを取りながら、一通りの業務を一緒になって行って頂いた。業務を知って頂くことで、予算として何がどれだけ必要なのか等、数字の根拠立てを共有できる点も非常に助かった。そして何より、一緒に問題を発見して、一緒に悩み、一緒に解決策を考えてくれることがとてもありがたかった。」と振り返っている。この点、北國マネジメント(株)の中村取締役も、「どのようにすれば投資先が良くなるのかを突き詰めていくと、最後は人の問題にいきつく。したがって、我々は、担当者が支援先に赴き、経営者だけでなく従業員とも一緒になって現場に携わることに重きを置いて支援を行っている。」と述べており、現場にまで入り込む支援で、同社の再生に弾みがついたことが伺える。

なお、森本社長は、再生ファンドの印象について、「ファンドも事業として成り立たせるために儲けが必要であり、その意味では我々はその分も含めてお返しする必要がある。しかし、事業の存続が立ち行かなくなる場面で投資して頂き、手厚い支援も受けることができる。崖っぷちで失敗が許されない中、資金面だけでなく、経営面でも色々とご支援を仰げたことは非常に心強かった。」と述べている。

今後の事業の展望について

価格以上の価値があるサービスを提供できる旅館を目指して

現在、「森本」は、年間17,000~18,000人ものお客様を迎え入れている。北陸新幹線開通後は、関東圏のお客様の割合が増え、最近では外国人の宿泊客も着実に増加している。"言葉が通じないことは一番のストレス"との森本社長の思いからスタッフに対して英語レッスンを毎月3回取り入れてきたが、全スタッフが英語対応可能な旅館として海外の宿泊サイトで高い評価を得る等、成果としてあらわれてきていることも大きい。

再生を果たした森本社長は、3~5年後のビジョンについて、「価格競争に陥ると、またかつてのように原価割れして赤字を積み上げてしまう。だからといって、原価を落とすために、例えば冷凍食品を使うといったことが、お客様にとってどうなのかといった思いもあるし、我々としてもそのような商売はしたくない。したがって、短期的なビジョンとして、宿泊して頂くお部屋やお食事、お風呂、各種施設、スタッフサービスも含めて、お客様から1泊2食で2万円の金額を頂戴するのであれば、それ以上の3万円の価値があるサービスを提供できる旅館を目指していきたい。例えば、お食事であれば、お肉はしっかり品番をつけた能登牛を、魚は近海もので可能であれば一年中獲れる"のどぐろ"も、野菜も加賀野菜といったように原価ぎりぎりのところまで地場の良質な食材を集め、お客様に『森本』ならではの思い出に残る美味しいお食事を召し上がって頂きたい。今は、お食事に関してはほぼ完成形といえるが、旅館や客室内はこれからも常に細かく投資を行って改装していく必要がある。」と語っている。

森本社長から経営者へのメッセージ

一つ目に、中小企業の経営においては、経営者というトップであっても、現場の仕事について一通り全部手を付けておいた方が良いと考える。どこの部署でどのような業務を行っているのか、どの部分に問題を抱えているのかをざっくりでも把握することで、現場で働く人を指導できるし、褒めてもあげられる。また、私たちの旅館は支配人や部長がおらず、社長の下は全員課長で、それが良いか悪いかは一概には言えないが、お客様に目が届くのは確かで、お客様のご不満に対してすぐ対応できているのも事実である。

二つ目に、一歩も踏み出さずに、最初から無理だと諦めてしまう経営者が多い。しかし、中小企業の範囲であれば、やって失敗することはあっても、やれないことはないと思っている。私自身も、行動を起こしたからといって必ずしも業績にプラスとして働かないこともあるが、少なくとも行動に移すことで悔いを残すことは無くなったと感じている。

再生ファンドの運営会社の声

同社に投資をするに至った判断のポイント

社長と会長(社長の父親)が再生の相談に来社され、社長の妹夫婦も含めた家族全員で、片山津温泉や従業員の為にも、再生したいという強い意欲を感じたことが最大のポイントであった。

再生に向けて取組むべき課題は、多くあったが、「顧客から選ばれる旅館にしたい」「従業員も満足できる旅館にしたい」という社長の強い言葉から、目標とした数値の達成に向けて、一緒に支援していけると判断した。

再生の視点からみた同社の成功要因

家族全員が経営にかかわっていたことで、再生に向けて同じ意識で改善が進められたことが大きかった。今後の経営戦略に関しても、各自・各部署の意見を吸い上げるようにして社長が判断を行えた。また、定期会議の資料は当社にて作成したが、数字による管理体制が確立されたことも、要因の一つである。

旅館経営者は、自分の旅館以外には宿泊したことがないというケースも多くあり、自社の強み・弱みを振り返る機会が少なく、当社の担当者等が会議に常時参加することで、外部の意見が経営に反映されたことも良かったと思う。例えば、売上を増加したくて、経営者としては、売店やロビーにお土産商品を陳列していたが、顧客としては、せっかくの湖畔の景色や、くつろいだ雰囲気が失われてイメージダウンを感じるから本当に勧めたい商品だけに減らす等、いろいろと顧客目線の意見を提言してきた。

顧客ニーズは日々変化していくので、これからも常にチャレンジの連続だと思うが、今のパワーで益々の活躍を期待している。

北國マネジメント株式会社

2018年度取材事例

掲載日:2019年3月14日

この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くだいますようお願いいたします。
  • googleplus
  • hatena
  • pocket
  • line
  • evernote