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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

株式会社ヒューマンウェブ

オイスターの未来を創り、食文化の進歩発展に貢献する

事業内容:主に牡蠣を主体とする直営店舗の運営、牡蠣の卸売
本社所在地:東京都中央区日本橋茅場町2丁目13番13号共同ビル7階
URL:http://www.oysterbar.co.jp/ 設立年:2000年
株式公開年:2015年 市場名:東証マザーズ
資本金(2001年3月期):16百万円 資本金(2015年3月期):313百万円
売上高(2015年3月期):3,851百万円
従業員数(2015年3月期):353人
ファンド事業:がんばれ!中小企業ファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合員名):西武しんきんキャピタル商店街ファンド1号地域商業育成投資事業有限責任組合(西武しんきんキャピタル株式会社)

事業概要

オイスターの未来を創り、食文化の進歩発展に貢献する

2000年4月、同社の代表取締役社長である吉田琇則氏(以下、吉田社長)は、“欧米のオイスター・バーの文化を日本に導入したい”との思いから、(株)ヒューマンウェブを設立した。

現在、同社グループは、“オイスターの未来を創り、食文化の進歩発展に貢献する”という理念を掲げ、牡蠣を主体とするレストラン(オイスターバー)経営の直営店舗事業、牡蠣を安定供給する卸売事業、安全性や品質の原点とも言える種苗生産・養殖事業を展開している。

安心・安全かつ高品質な牡蠣をリーズナブルな価格で提供する仕組み

必須アミノ酸をはじめ、グリコーゲン・ビタミン・鉄分・亜鉛等の栄養素が豊富な牡蠣は、「海のミルク」と呼ばれている。

しかし、同社が創業する以前には、日本に「オイスターバー」がほとんど存在していなかった。それは、牡蠣がいわゆる“あたる”扱いの難しい食材であったことが大きい。このような中で、同社は、2001年に1号店を出店して以来、安心・安全かつ高品質な牡蠣をリーズナブルな価格でお客様に提供する仕組みを構築してきた。

例えば、直営店舗への出荷や卸売に際して、まず、一次検査として、厚生労働省が定める生食用牡蠣規格基準を下回る牡蠣のみを各産地から仕入れる。それらの牡蠣をセンターに集めて、紫外線で殺菌した海水や極めて清浄性の高い海洋深層水(深度200メートル以深の海水で、人体に害のある菌やウィルスがいなくミネラルが豊富。)を利用して、牡蠣の浄化を行う。そして、厚生労働省の規格基準よりも厳しい自社基準の下で二次検査を行った後、各店に配送される。

<国の規格よりも厳しい同社の安全基準>

<国の規格よりも厳しい同社の安全基準>

この他にも、牡蠣の採取海域の細菌やウィルスの海域汚染状況を監視する仕組みにより、汚染リスクがあれば事前に入荷のコントロールを行う体制を整えたり、各店舗に殺菌効果の高い「微酸性電解水」を設置して衛生管理を徹底する等の取り組みを実施している。

このような取り組みもあり、現在、国内最大のオイスターバーチェーンとして、首都圏の百貨店や商業施設を軸に「ガンボ&オイスターバー」をはじめとする複数のブランドによる飲食店を展開している。そして、2014年9月時点では同社の会員数が30万人超であること等、順調にファンを獲得している。

安全・安心・高品質へのあくなき追求

また、同社では、生産の川上まで上り、牡蠣の“種”を人工的に作る種苗生産にも取り組んでいる。受精・生育環境の管理等のノウハウを高めていくことで、身入りが充実して過熱しても身が縮まらず、死骸ロスも少ない安全・高品質の牡蠣を目指し、自社での牡蠣の養殖にも取り組み始めている。

さらに、牡蠣の養殖については、世界に類を見ない研究が進められている。古くより、牡蠣の養殖は海上で行ってきた。しかし、1時間に20?もの海水を吸って吐き出す牡蠣にとって、雑菌が多い海域では、ノロウィルス等を取り込む危険性を常に抱えることとなる。

そこで、安心・安全・高品質を徹底して追い求める同社では、ウィルスを取り込むことのない環境での牡蠣の養殖、すなわち清浄性が極めて高くミネラルが豊富な海洋深層水を利用した"陸上プラント養殖"の研究開発を行っている。この"ウィルスフリー"の牡蠣生産に向けた養殖については、既に実験段階での成功を収めており、現在は商業化に向けた研究を東京大学と共同で行っている。

創業からVCに出会うまでの経緯

歴史と伝統のある食材で勝負

吉田社長が同社を創業したのは、前職時代、頻繁に海外へ足を運んでいたのがきっかけ。「アメリカやヨーロッパを訪れると、オイスターバーが街角にたくさんある。普通に生牡蠣を食べてワインを飲む。こんなに美味しい食文化があるのだと驚いた。調べてみると、最近でこそ、日本食の影響から欧米でも生魚を食すようになってきたが、牡蠣だけは、古代ローマ時代から生で食されていたという。歴史と伝統のある食文化だからこそ、オイスターバーのない日本で、是非この素晴らしい食文化を広げたいと強く思った。」と振り返る。

ノロウィルス問題が転機に

創業後、同社は、オイスターバーがなかった日本の飲食業界において先駆者的な立場となり、注目を集める。銀行からの借入だけでなく、2005年、取引先が運営するベンチャーキャピタル(新興企業等に投資を行う会社や組織、以下VC)等からの投資を受けることで、順調に店舗を展開して、上場も視野に入っていた。

しかし、2006年、ノロウィルスが社会的な問題となり、牡蠣への風評被害も増したことで状況が一変する。同社の売り上げは対前年比で7割減、業者への支払や従業員への給与も滞る。2007年には、資金繰りが完全に行きづまったため、銀行に対して債務返済の繰り延べも行った。そのような中、吉田社長は、「なぜ独立してこの会社をやろうとしたのか、という原点に立ち戻ったら、アメリカやヨーロッパでお客様が喜んでいたあの文化を日本にも根付かせたいとの思いが最後に残った。そのためには、“安心”“安全”な牡蠣を何としても届けるために、“あたる”リスクをコントロールできる川上へ上り、浄化センターを開設する必要性を強く感じるに至った。」と振り返っている。まさに、倒産の危機との背中合わせにある中で、今の成功に繋がる大きな決断を下したと言える。

VC等を活用した事業の拡大と成長

資金調達によって債務超過を解消

2007年、安心・安全に対する思いから、周りの反対を押しきって開設した浄化センターであったが、牡蠣の浄化だけでなく、在庫・物流を一元管理できることから、各店舗へのジャストインタイムの出荷が可能となり、廃棄ロスが小さくなった。また、店舗運営についても効率性を見直す契機となり、ノロウィルスの逆境を将来への飛躍に繋げることができた。

しかし、上場を目指す中で、大きな壁となっていたのが、債務超過と資金調達の問題であった。そこで、再度VCからの資金調達を模索。2010年12月、西武しんきんキャピタル(株)が運営し、(独)中小企業基盤整備機構も出資する西武しんきんキャピタル商店街ファンド1号地域商業育成投資事業有限責任組合の他、VC2社から合計1.3億円もの資金調達に成功する。吉田社長は、「債務超過にも関わらず、投資をして頂いたことは本当にありがたかった。この資金調達によって債務超過が解消され、新たな出店費用も賄うことで、もう一段上の成長ステージに移行することができた。」と振り返る。なお、VCからの資金調達については、「銀行との審査基準とは見方が大きく異なる。VCには、足元の積み上げてきた実績とこれからの成長ビジョンを誠心誠意示すことが大事。」とその経験を語る。

VC連絡会を通じて課題解決

同社は、VCからの投資受け入れ後、“VC連絡会”を3か月に1回のペースで開催。そこでは、ざっくばらんに事業の進捗や課題について話し合われ、飲食関係のネットワークも広い西武しんきんキャピタルからは、新たな店舗展開に向けた物件情報の他、牡蠣の卸販売の立ち上げに際して、卸先候補をいくつも紹介して貰ったという。吉田社長は、西武しんきんキャピタルについて、「ベンチャー企業は、社長のリーダーシップで引っ張っていかねばならない。そのため、自由にのびのびと経営を行う環境を作って頂いたことも、会社が縮こまらず突き抜けて成長できた要因だと感じている。我々にとって、いつも暖かく見守ってくれて、困った時は手を差し伸べてくれる“お母さん”のような存在だった。」とその印象を語っている。

また、同社では、海洋深層水や陸上養殖における研究開発において、県・農林水産省等からの補助金も活用。「研究開発は収入に結び付くまで時間とコストがかかる。自前で全て賄おうとすると成り立たない。」として、公的支援が新たな挑戦への後押しとなっている。

IPOによる経営効果と今後の展望

研究開発のための資金の多様化

2015年、同社は、東証マザーズに上場を果たした。その目的は、“あたらない”牡蠣の研究開発のための資金調達の多様化が大きい。一方で、メディアに取り上げられる機会が増えたことで、安心・安全に対する徹底した取り組みを周知することができ、想定以上に、直営店舗での新規のお客様や卸先が拡大しているとのこと。人材採用の部分でも間口が広がったことで、さらに成長を加速させていく。

牡蠣の新たなる未来に向かって

同社は、安心・安全な牡蠣を高品質かつリーズナブルな価格で提供することで、既にオイスターバーでは世界的にみても最大規模の出店数となっているが、今後も、引き続き出店並びに卸売先を広げていく。

一方で、岩手県の牡蠣は、震災後から風評被害が続いており、同社では、牡蠣産業の復興・再建のため、震災以降、寄付を継続して行ってきた。今後は、岩手県大槌町に牡蠣の生産から加工・飲食まで担う一気通貫の複合施設を建設予定である。売り先に苦慮する牡蠣を買い上げサプリメントに加工する等、震災復興の一助を成すと共に、栄養豊富な牡蠣の魅力をこれまでとは違う切り口で伝えていく方針だ。

さらに、海洋深層水を用いた“陸上プラント養殖”による“ウィルスフリー”の“あたらない”牡蠣の生産についても早期の商業化を狙うことで、「10年、20年先の子供たちが、『牡蠣って昔は“あたる”食材だったの?』とびっくりするような世界」の実現を目指す。

代表者プロフィール

代表取締役社長 吉田 琇則
代表取締役社長
吉田 琇則

1967年4月2日生まれ。1990年、ノヴァインターナショナル(株)に入社。その後、(株)ヴェルファーレ、エイベックス(株)を経て、2000年1月に(株)ヴェルファーレ・エンターテイメントの代表取締役社長に就任。そして、同年4月に、(株)ヒューマンウェブを設立して、代表取締役社長に就任(現任)。

将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス

会社は、1日200社以上できていて、年間8万社にのぼります。その内、1年でなくなるのは50%、10年生き残っているのは5%。つまり、95%は会社を作っても生き残れない。従って、人と同じことをやっていても生き残れないと考えております。そして、この5%に入るには、経営者の情熱や思い、理念を持ってやれているかどうかが大事なのだと感じます。私の場合、創業時こそ野望・野心が行動力の源泉でしたが、会社が潰れそうになった時、創業時の思いまで振り返ることで、今後に向けた自分の旗を立てることができました。どうか情熱や思い、理念を大切にして欲しいと思います。また、経営で迷った時には、リスクを考えるよりも、社会に役立つかどうかを判断材料にしてきました。役立つならば絶対生き残れると思うし、役立たないなら社会に淘汰されるとそのように思っております。

ベンチャーキャピタルの声

同社に投資をするに至った判断のポイント

吉田社長の安全な牡蠣を提供するという強い信念と、牡蠣は、嗜好性の強い食材であるためリピーターが多く、牡蠣の安全性の担保ができれば、流行り廃りの多い飲食業界の中で安定した成長ができると考え、オイスターバーの先駆者であった同社に投資しました。

VCの視点からみた同社の成功要因

オイスターバーという飲食業態だけでなく、大学と連携した牡蠣の養殖技術の開発や、他の飲食店への外販など、安全な牡蠣を提供するために、生産から流通まで一貫して手掛けたことが、成功した要因と思います。

西武しんきんキャピタル株式会社

2015年度取材事例
掲載日:2015年10月27日

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