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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

株式会社リボミック

“RNAアプタマー”を利用した新規医薬品の実現を目指して

事業内容:独自の創薬技術により“RNAアプタマー”を利用した医薬品の研究・開発
本社所在地:東京都港区白金台3-16-13 白金台ウスイビル6階
URL:http://www.ribomic.com/ 設立年:2003年
株式公開年:2014年 市場名:東証マザーズ
資本金(2004年6月期):10百万円 資本金(2014年3月期):1,422百万円
売上高(2004年6月期):4百万円 売上高(2014年3月期):151百万円
従業員数(2004年6月期):0名 従業員数(2014年3月期):16名
ファンド事業:ベンチャーファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合員名):トランスサイエンス弐ビー号投資事業有限責任組合(SBIトランスサイエンス株式会社)、バイオ・サイト・インキュベーション二号投資事業有限責任組合(バイオ・サイト・キャピタル株式会社)、JAIC-バイオ2号投資事業有限責任組合(日本アジア投資株式会社)、イノベーション・エンジン三号投資事業有限責任組合(イノベーション・エンジン株式会社)

事業概要

“RNAアプタマー”を利用した新規医薬品の実現

2003年8月、同社は、“RNAアプタマー”を利用した新規医薬品の実現を目指して、東京大学医科学研究所の教授であった中村義一氏(現代表取締役社長、以下中村社長)によって設立された。現在、「Unmet Medical Needs(未だに満足すべき治療法のない疾患領域の医療ニーズ)に応える」「日本の創薬力を復活させる」「産学連携を推進しアカデミアの研究成果を社会へ還元する」という3つの理念のもと、独自に開発した創薬技術を用いて、“アプタマー医薬”の開発を行っている。

“アプタマー医薬”の優れた特徴

創薬開発の現場では、従来の“低分子医薬”から、ヒトの免疫機能を利用した副作用の少ない“抗体医薬”に注目が集まっている。しかし、“抗体医薬”は、開発・製造コストが高いことに加え、患者に対して多量に投与する必要があることから、経済的負担が重いことも指摘されている。

そのような中で、抗体医薬に続く新たな医薬として期待されているのが、“RNAアプタマー”を利用した“アプタマー医薬”である。

RNAとは、DNAという生物の設計図に基づいて、アミノ酸を結合させ、タンパク質を創り出す役割を担っている。しかし、近年になって、RNAには多様な立体構造を形成できることが分かってきた。この造形力を活かしRNAを素材にした分子のことを“RNAアプタマー”と言い、この“RNAアプタマー”を病気の要因となる“標的タンパク質”に結合させ、その働きを阻害あるいは調節することで病気を治すのが“アプタマー医薬”である。

“アプタマー医薬”は、細胞を使って製造する“抗体医薬”とは異なり、RNAを化学的に合成して創り出す。そのため、“抗体医薬”よりも幅広い病気に対応できる可能性があり、開発・製造コストも抑えられる。また、“抗体医薬”に比べて、“標的タンパク質”に対し1,000倍もの結合力の強さを有していることから、標的を的確に捕捉し、一旦結合したら離れにくい。つまり、少量の投与量でも薬効が高く、他の正常な細胞を攻撃しないことから副作用もより少ないことを意味する。同社では、“アプタマー医薬”が広まれば、“抗体医薬”の10分の1まで薬価を抑えられるとみる。従って、今まで治療法の無かった病気に対してだけでなく、経済的にも身体的にも負担の少ない医薬品として、大きな期待が寄せられている。

<“アプタマー医薬”と“抗体医薬”の比較>(同社作成)

<“アプタマー医薬”と“抗体医薬”の比較>(同社作成)

同社が展開する二つの事業

現在、同社は、独自に開発した創薬技術を活用して、“自社創薬”と“共同研究”の二つの事業を展開している。

<同社のビジネスモデル>

<同社のビジネスモデル>

“自社創薬”事業では、同社独自で医薬候補となる“RNAアプタマー”を探索。そして、ある一定のステージまで開発を進めた後に、その成果を製薬企業にライセンス・アウト(売却・使用許諾)する。これにより同社は、契約締結時の一時金の他、製薬会社での開発進行に伴うマイルストーン収入、さらに製品となって上市した場合には売り上げに応じたロイヤルティー収入を段階的に得る。

一方、“共同研究”事業では、製薬企業と共同で“アプタマー医薬”に向けた研究を行い、同社が分担する業務に応じて製薬企業から研究費として収入を得る。また、一定の開発段階に達した時点で提携先の製薬企業に同社分の権利をライセンス・アウトし、相応の契約一時金を得る他、開発段階に応じたマイルストーン収入、製品が上市されればロイヤリティー収入を順次得ることとなる。

創業からVCに出会うまでの経緯

“RNAアプタマー”による創薬の可能性を実現するために創業を決意

中村社長は、東京大学医科学研究所において、30年以上もの間、RNAの研究を行ってきた。そのような中で、同社を創業したきっかけは、RNAの新たな機能の発見にある。それまで、RNAは、DNAの情報をコピーして、タンパク質を創り出すものと考えられてきた。しかし、2000年頃から、従来の概念を覆し、RNAが生物の中で様々な役割を果たしていることが明らかになってくる。その中の一つとして、中村社長自身も、材質は異なるのにRNAとタンパク質の形が“分子レベルでそっくり”となることを発見。この“分子レベルでの擬態”の論文は、2000年、世界的な権威を有する科学雑誌「nature」にも掲載された。

(左)RNA (右)タンパク質

そして、RNAが複雑な立体構造を取ることができるのであれば、「RNAを利用することにより、従来では治すことが難しかった病気に対しても、今までにない新たな薬を創れるのではないだろうか。」との確信に至り、同社を設立した。

投資コンサルティングを通じてバイオベンチャー経営の大枠を掴む

しかし、設立当時、中村社長は東京大学内で産学連携のための制度作りを行っていたことから、本格的に同社が創薬事業を開始したのは2005年のこと。従って、その年に事業を推進していくための資金をベンチャーキャピタル(新興企業等に投資を行う会社や組織、以下VC)から調達している。なお、投資を受けたVCとの出会いについて中村社長は、「2003年、あるVCから投資コンサルティングの依頼を受けたことに始まる。その後5年間、VCが抱える50件近くのバイオベンチャーの投資案件に対して、技術面での評価を行ってきた。同時に、様々な企業に触れることで、バイオベンチャーの経営がどのように行われているのかを掴むこともできた。」と振り返っている。

VC等を活用した事業の拡大と成長

事業推進のための膨大な資金需要

一般的にバイオベンチャーは、研究開発を行っていくために膨大な資金を要する。しかし、いわゆる“日銭商売”とは異なり、幾年も経ってから研究開発の成果が明らかとなるため、銀行からの融資は不可能に近い。

同社も、年間5~6億円もの支出があり、上場までに使った金額は実に50~60億円にも及ぶ。その大まかな内訳は、複数のVCや製薬企業からの投資による資金調達が30億円。残りは、製薬企業との共同研究、公的機関である(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や(独)医薬基盤研究所からの委託研究・助成金等の収入であった。

創業初期には不可欠なVCの存在

上記のように、複数のVCや製薬企業からの投資、公的機関の各種制度の利用等を通じて膨大な資金需要を賄った同社。しかし、「大学で生まれた技術を事業化していくバイオベンチャーにとって、一番大事な創業初期のところで、まとまった資金を得るような手段が投資の他に無いのも現状。」と話す中村社長。そのため、創業初期の段階では、投資による資金調達を何としても成功させる必要があるが、大学から出たばかりの技術では産業化できるのか不透明であり、その段階で事業会社から投資を仰ぐことは難しい。従って、リスクマネーを供給するVCの存在が不可欠となる。同社も、「1回目と2回目のファイナンスについては、いくつものVCから投資を仰いだ。当時は事業計画に合わせた資本政策等ファイナンスの知識をあまり持ち合わせていなかった。そのような中で、多額の資金調達を行うことができたのは、資本政策や他のVCの紹介を含めて、全面的なVCの支援によるところが大きい。」と振り返る。

投資後のVCの側面支援

投資後においても様々なVCから側面支援を受けた同社。創業初期においては、まだ陣容が整っていないことから、“何が知的財産権と言えるのか”“他の知的財産権とは抵触していないか”といった、“知的財産権の棚卸”を簡易的にしてもらったという。

また、ライセンス・アウトの交渉候補として製薬企業の紹介を受けたことも。中村社長は、「ライセンス交渉では、担当者に対するボトムアップの交渉だけでなく、同時にトップダウンによるアプローチも必要であり、非常に難しい。そのため、VCからご紹介頂いても、なかなか成約までには至らなかった。しかし、何も繋がりの無い製薬企業のご紹介は大変ありがたく、今後も含めて何回も何回も交渉を繰り返して道は開いていくもの。従って、その最初のきっかけを頂けたと思っている。」と語っている。

そして、IPOについても、上場に至るまでの主幹事証券や監査法人、東証、弁護士事務所等の段取り・手続きの助言。さらに、上場に向けて社内を整備するためのコンサルタントの紹介や事業進捗を見ながらIPOを行うタイミング等の助言も受けることができた。

IPOによる経営効果と今後の展望

成果をパブリックにお返しする

2014年に東証マザーズに上場を果たし、25億円の資金を市場から調達した同社。そのIPOの目的は大きく三つあった。一つ目が、研究開発資金の調達。二つ目が、高度な技術やノウハウを有した優秀な人材の確保であり、上場によって資金と人材を充実させ、既存の事業をさらに推進すると共に、将来、自前で医薬品を開発していくための布石を打つ。そして、3つ目の目的は、成果をパブリックにお返しするということ。「我々のベースは、東京大学という国の機関の中での研究開発にある。従って、我々の成果はパブリックにお返しして、オープンにしていく必要がある。」との思いを中村社長は設立時から胸に抱いていた。また、当初の目的にはなかったメリットも。それは、知名度向上の恩恵により、海外の製薬企業からのアプローチが増えたこと。今後、海外製薬企業との共同研究やライセンス・アウトも視野に入れる同社にとって、グローバル展開に弾みをつける形となりそうだ。

夢は世界規模の製薬企業へ

上場によって益々成長を加速させる同社。今後の展望については、既に行っている製薬会社との共同研究を着実に前に進めるとともに、自社で開発中のパイプラインも年1本のペースでライセンス・アウトを計画。一方で、独自の創薬技術を用いて、医薬候補となる“創薬シーズ(種)”も引き続き探索し、既存のパイプラインを拡充していく方針だ。

中村社長は、「これらの取り組みが実を結べば、5年程で累積損失が全て一掃できるだろう。そうなれば、本格的な製薬企業へ脱皮する第二期のステージに歩みを進めることができる。我々が探索しているいくつもの“創薬シーズ”の中には、数年後、芽吹くものがきっと出てくる。それらをヒトへの臨床試験まで手掛けて、自らの手で医薬品へと繋げていきたい。」と語り、かつてのバイオベンチャーであり、今や世界最大の売上規模を誇るアムジェン社やジェネンティック社を同社は目指す。

代表者プロフィール

代表取締役社長 中村 義一
代表取締役社長
中村 義一

1947年11月25日生まれ。東京大学医科学研究所助手・助教授・教授を経て、2003年8月に同社を設立。その後、2005年10月に同社取締役最高技術責任者、2012年4月に同社代表取締役社長に就任(現任)。また、同年6月に東京大学名誉教授(現任)となる。

起業家を志す方へのアドバイス

夢を大事にして欲しいと思います。例えば、外部からお金を頂戴するにしても、夢に投資して頂いているのであり、最終的な夢の到達点をしっかり考えて、確実に肉付けしていって下さい。私の場合は、夢を実現するための方向の模索で10年、さらにその方向が定まってから実現するまで10年を要しました。行おうとしていることがイノベーティブな程、女神の微笑みが何回も必要になるかもしれません。しかし、どのような形でチャンスが巡ってくるか分からないので、色々な人とのご縁を大事にすること。さらに、失敗しても引き下がらず、何回も何回も繰り返しチャレンジすること。そうすれば、道は開けてくると思います。自分のイノベーティブの質が本当に確かなものならば、悲観的にならずに、常に積極的に、楽観的に、夢に向かって進んでいって下さい。

ベンチャーキャピタルの声(当VCは、同社がIPOする2年前(2012年)に投資)

同社に投資をするに至った判断のポイント

同社が取り扱うアプタマーは抗体に続く医薬品として期待されており、同社はその中で先行するポジションにいました。また、同社が開発中のアプタマーは臨床治験に入っていないアーリーステージの化合物であるにもかかわらず、大塚製薬等と提携し技術だけではなくビジネス面も伴ったベンチャーと判断し投資に至りました。

VCの視点からみた同社の成功要因

アプタマーの開発を着実に進めると共に、着実に提携先を増やしてきました。これを背景にバイオベンチャーでは数少ない黒字決算となる可能性が示され公開を実現しました。

イノベーション・エンジン株式会社
インベストメント・パートナー 松本 尚

2014年度取材事例
掲載日:2015年4月 2日

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