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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

ペプチドリーム株式会社

日本発の新技術で世界初の新薬を創出し社会に貢献

事業内容:独自の創薬開発基盤技術を用いた「特殊ペプチド」による創薬研究開発
本社所在地:東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学駒場リサーチキャンパス KOL4階
URL:http://www.peptidream.com/ 設立年:2006年
株式公開年:2013年 市場名:東証マザーズ
資本金(2007年6月期):30百万円 資本金(2013年6月期):2,725百万円
売上高(2007年6月期):0円 売上高(2013年6月期):678百万円
従業員数(2007年6月期):2人 従業員数(2013年6月期):25人
ファンド事業:ベンチャーファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合員名):ユーテック一号投資事業有限責任組合(株式会社東京大学エッジキャピタル)

事業概要

日本発・世界初の新薬の創出を

2006年7月、同社は、菅裕明教授(同社コア技術の開発者、現社外取締役)と窪田規一氏(現代表取締役、以下窪田社長)の「日本発・世界初の新薬を創出し社会に貢献したい」というお互いの夢を実現するために、設立された。

現在、“「特殊ペプチド」そのものを創り出す根本技術(フレキシザイム技術)”、“兆単位の様々な種類の「特殊ペプチド」を創り出す技術(FITシステム技術)”、“兆単位の「特殊ペプチド」から医薬品候補物質を高速で探し出す技術(RAPIDディスプレイシステム技術)”の3つの技術を備えた独自の創薬開発基盤技術を確立し、「特殊ペプチド」による創薬研究開発に特化した事業を展開している。

<同社の創薬基盤技術を形作る3つの技術>

<同社の創薬基盤技術を形作る3つの技術>

「特殊ペプチド」とは

元々ペプチドとは、天然に存在するアミノ酸(地球上のあらゆる生命の構成要素)が2個以上結合して作られた化合物の総称であり、最もサイズの小さいタンパク質である。生体内においては、ホルモンや各種伝達物質として働き、生体にとって不可欠なものとなっている。そのため、古くから創薬の候補物質として注目されてきたが「生体内に入るとすぐに分解されてしまう」「細胞膜の中に入り込めない」等の諸問題があり、創薬になかなか結びつかなかった。

しかし、同社の技術を用いた「特殊ペプチド」は、人工のアミノ酸を組み込むことで、通常のペプチドが抱える上記のような問題点を解決して、医薬品候補物質としてよりふさわしい特徴を持つことが期待されている。

「特殊ペプチド」の優位性

創薬開発の歴史において、かつては解熱鎮痛に用いられるアスピリン等の低分子医薬品が中心的なポジションを占めていたが、2000年代に入ると免疫機能を利用した抗体医薬品が注目される。しかし、低分子医薬、抗体医薬とも医薬品として素晴らしい特性はあるものの、同時にそれぞれ問題点も抱えている。

例えば、低分子医薬は、様々な治療のターゲットである分子に対応できる「ターゲットの多様性」がある。しかし、結合すべきでない分子にも結合してしまうことから、副作用を引き起こしてしまう「生体内毒性」のリスクが相対的に高い。

また、抗体医薬は、低分子医薬に比べて「ターゲットの多様性」は低いものの、ターゲットに対する結合力や特異性に優れているため、薬が特定のターゲットにのみ作用し、副作用も少ない。しかし、その分子量の大きさゆえに細胞内のターゲットには対応できず経口投与ができないことや、生体内で免疫反応を起こしてしまう(生体が異物と判断して薬の効果が低減)リスクが相対的に高い。

一方「特殊ペプチド」は、低分子医薬や抗体医薬に比べて、細胞内外を問わず様々な種類のターゲットに対応でき副作用も少ない等、下表のように従来の低分子医薬や抗体医薬の問題点を低減しながら、双方の優位点を実現できることが期待されている。

<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※同社見解に基づく/同社作成

<低分子医薬・抗体医薬・特殊ペプチド医薬の特性(能力)比較> ※同社見解に基づく/同社作成

契約初期から段階的に収益をあげるビジネスモデルの確立

同社の事業は、製薬企業との共同研究開発契約をもとにした「アライアンス事業」のみであるが、「特殊ペプチド」における独占的な創薬開発基盤技術を有している強みを活かし、契約段階から「契約一時金」等を受領することで、創薬開発の初期から売上を生み出している。また、順調に研究が進むと「創薬開発権利金」や「目標達成報奨金」が入り、最終的に薬が上市されればその売上金額の一定料率を「売上ロイヤルティ」として受け取る。従って、創薬開発の各段階に応じて収益を順次計上できるビジネスモデルを構築しており、一定の段階まで赤字続きとなりがちな創薬ベンチャー企業とは一線を画している。

創業からVCに出会うまでの経緯

創業のきっかけはTLOやVCから

2005年、産学連携のもと大学発ベンチャーが賑わいをみせていた中で、東京大学大学院菅教授が開発した“「特殊ペプチド」を創り出す技術”も事業化に向けて動き出し、(株)東京大学TLOとベンチャーキャピタル(新興企業等に投資を行う会社や組織、以下VC)である(株)東京大学エッジキャピタルが経営者を探していた。そこで、医薬・医療機器分野での事業開発について広く豊かな知見があり、かつベンチャー創業の経験も有する窪田社長に声がかかる。

そして同年9月、窪田社長は菅教授と出会うが、「菅教授とは目と目で語り合う、といったように最初から気が合った。また、技術についても、当初は壮大すぎて真偽が分からなかったが、話を進めていくと“これは本物だ”との確信に至った。当時、研究開発の主流であった抗体医薬も機能としては限界があり、今後ポスト抗体医薬が求められていく確信があったため、特殊ペプチドで日本発・世界初の創薬を実現して、有効な治療薬のない患者様を一人でも多く救っていきたい、との思いを共有することができた。」と創業決意に至る経緯を語っている。

その後、窪田社長は菅教授と数か月に渡りビジネスモデルについて話し合い、既存の“「特殊ペプチド」を創り出す技術”だけではなく、新たに“兆単位の様々な種類の「特殊ペプチド」を創り出す技術”、“その中から新薬候補物質を高速で探し出す技術”の必要性を確認。まず創薬開発において必要な技術を揃えてから収益化を行っていくという事業計画を固めた後、2006年7月に同社を設立した。

徹底的に支出を抑えた経営

元々、同社の創業は(株)東京エッジキャピタルの紹介を契機としているため、投資担当者の片田江氏とは創業前から出会っていた。

一方、「ケチは美徳」と語る窪田社長。稼げる体制ができるまで自身は報酬を受けとらず、菅教授の研究所の一部を間借りし、東京大学の倉庫にあったテーブル・その他什器類を貰ってくる等、支出を最小限に抑え、極力手元資金は研究費や事業提携費に注いでいた。また、設立から比較的早い段階で海外企業との提携もあり、収入を得ることができた。

そのため、設立当初から役員メンバーや身内から集めた資金でやり繰りを行い、外部からまとまった資金調達を行ったのは、設立から2年後の2008年。(株)東京エッジキャピタルが運営し、(独)中小企業基盤整備機構も出資するユーテック1号ファンドの他、企業1社から合わせて1.5億円の投資を受けた。

VC等を活用した事業の拡大と成長

資金調達により妥協することなく計画を遂行

前述のように徹底したローコスト経営や提携による収入もあり、2008年に得た1.5億円の内、1億円はいざという時の為に寝かしていた。一方、同年後半になるとリーマンショックで環境が急激に悪化。ベンチャー企業の資金調達もその後数年に渡り厳しい状況に陥る。

そのような中で同社は、創薬基盤技術を確立するための最後の要となる“新薬候補物質を高速で探し出す技術”について、暗中模索の中で開発していた。窪田社長は、当時を振り返り、「ベンチャー企業全般に言えることかもしれないが、特にバイオベンチャーにおいては、個人の土地家屋等の担保でも入れなければ、銀行から融資を受けることはできない。おそらく上場した今でも、すんなりと融資を受けられないだろう。そして、リーマンショック。そのような中で、開発はトライ&エラーの繰り返し。しかし、開発という暗闇を進む上で、事前に調達した1億円の預金がまだ残っていることは、大きな篝火となった。自分たちの方針とか指針、ビジョンをそのまま維持して事業を推進し続けることができる大きな安心に繋がった。」と語っており、予め行った多めの資金調達が、先の見えない研究開発において妥協することなく計画通り遂行する力となったことが伺える。

何より嬉しかった熱い“思い”

投資実行後、投資担当者である片田江氏は、同社の監査役として監査業務に携わる他、IPOに向けて主幹事証券会社の紹介を行う等、同社の成長を側面支援した。

そして、窪田社長は、何より嬉しかったものとして、熱い“思い”を挙げる。「片田江さんは、出会った当初から熱い“思い”で私達を見てくれた。そして、まだ投資が決まっていない段階でも、椅子や机の運搬・清掃といった雑事を一緒にしてもらったり、従業員同士のクッション役になってもらったり、その時々においてできることを精一杯してくれた。人が何かを成し遂げようとしている時、熱い“思い”を共有しながら一緒の目線で精一杯手助けして貰えるのであれば、それ以上の喜びはないと思う。片田江さんは私達にとってそういう人物であり、創業メンバーといっても差し支えない程の存在。」と語っている。

IPOによる経営効果と今後の展望

IPOを通じて自前の創薬の実現と優秀な人材の確保

同社は、2013年に東証マザーズに上場を果たした。IPOの目的は大きく二つあり、一つ目は、自前の創薬開発に向けた資金確保のため。「特殊ペプチド」の想像以上の成果と可能性を日々実感している窪田社長は、「自らも創薬を行い、いずれぺプチドリームの刻印「PD」が入った薬を生み出す。」という夢を実現するため上場を決意して、実際に50億円あまりの調達に成功した。二つ目に、バイオベンチャーに必須である優秀な研究員の確保のためであったが、上場から間もないものの早速新たな研究員が加わり、効果が表れている。

治療法がない患者様に新薬を

今後の展望について、窪田社長は、「アンメット・メディカルニーズ(未だ有効な治療方法がない医療ニーズ)と呼ばれる分野には有効な治療薬がほとんどない。これで苦しんでいる患者様に一刻も早く使える薬をお届けしたい。」と語る。そして、自前の創薬という夢に向かいながらも、しかし決してそこだけにこだわらず、既存のアライアンス事業や創薬基盤技術自体の貸与も積極的に推進し、同社の技術が生み出す数多の創薬の種を花開かせ、少しでも早く患者様を救うべく同社は取り組んでいく。

代表者プロフィール

代表取締役社長 窪田 規一
代表取締役社長
窪田 規一

1953年4月10日生まれ。日産自動車(株)、(株)スペシアルレファレンスラボラトリー(現(株)エスアールエル)、(株)ジェー・ジー・エス代表取締役社長を経て、2006年7月に同社設立、現任。

起業家を志す方へのアドバイス

考え方は千差万別で一概には言えないかと思いますが、ベンチャー経営を行うのであれば「ムリ・ムダ・オゴリ」には気を付けましょう。例えば、手元にお金があるからといって、環境の分析や計画が不十分なまま「ムリ」をすると、大抵失敗してしまう。そうすると、その失敗に追われてしまい「ムダ」が発生してしまう。ベンチャー企業は、体力がないから「ムリ」「ムダ」をしてしまった瞬間に、自分の身をそぎ落とすことになりかねない。そして、そういった状況に陥りやすい一番のきっかけは「オゴリ」であり、注意が必要だと思います。

また、ベンチャー経営にはリスクが付き物ですが、そのリスクが顕在化して落ち込みストレスで潰れそうな時は、自分を信じ、まわりの仲間を信じ、会社を信じる。そして問題が何なのかを冷静に考え、しっかりと皆で情報共有しながらブラッシュアップしていくことで、確かな自信を持つことも大事なことだと思います。

ベンチャーキャピタルの声

株式会社東京大学エッジキャピタル パートナー 片田江 舞子
株式会社東京大学エッジキャピタル
パートナー

片田江 舞子
同社に投資をするに至った判断のポイント

「特殊ペプチド」創出技術は、独自性・新規性・汎用性の高いプラットフォームテクノロジーであり、企業との共同研究から得られた成果に対する契約一時金、マイルストーン、ロイヤリティを設定するビジネスモデルを遂行することが可能と判断しました。投資時点において、創薬支援技術としての実績は証明されておりませんでしたが、技術力の高さから上記ビジネスモデルを実現可能と判断し投資を実行いたしました。

VCの視点からみた同社の成功要因

事業開始当初から、国内のみならず海外企業との事業提携を前提にした展開に着手したことが大きな成功要因です。提携先企業のニーズに対応可能な高い技術力に加えて、国際的な戦略、中長期的な収益拡大が可能なビジネスモデルを選定し、IPOを実現しました。

2013年度取材事例
掲載日:2014年2月24日

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