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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

モバイルクリエイト株式会社

タクシー、トラック、バスなど向けの無線通信システム開発・販売

事業内容:GPSと業務用無線またはインターネット、3Gネットワークを利用した車両等の移動体管理システムの開発・販売
本社所在地:大分市賀来北2-20-8
URL:http://www.mcinc.jp/ 設立年:2002年
株式公開年:2012年 市場名:東証マザーズ、福証Qボード
(2013年12月26日市場変更)
東京証券取引所 市場第一部
福岡証券取引所 本則市場
資本金(2002年12月期):3百万円 資本金(2013年5月期):373百万円
資本金(2013年12月末):8億73百万円
売上高(2008年5月期):848百万円 売上高(2013年5月期):2,828百万円
従業員数(2002年12月末):13人 従業員数(2013年5月末):81人
従業員数(2013年11月末):94人
ファンド事業:ベンチャーファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合員名):大分ブイシーサクセスファンド2号投資事業有限責任組合(大分ベンチャーキャピタル株式会社)

事業概要

安価な車両管理システムを開発

同社の村井雄司代表取締役社長は、車両などの移動体無線システムの開発・販売を目的として2002年に大分市で創業した。GPS(衛星利用測位システム)とネットワーク回線を使い、タクシーやトラック、バスなどの車両を管理する安価なシステムを開発・販売するのが目的だ。起業後、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)方式によるトラックなどの車両位置を監視する「モバロケ」、タクシー配車システム「新視令」などを開発。さらに、2009年には携帯電話網を利用したIP(インターネットプロトコル)無線機「ボイスパケットトランシーバー(VPT)」を開発し、これが同社の成長を大きく後押しした。

上場までの経緯とビジネスモデルの変革

株式公開を2回断念

2012年12月に東証マザーズと福証Qボードに同時上場するまでには、曲折があった。村井社長自ら、「上場は3度目の正直で実現した」と話す。
 創業後は、GPSと業務用無線やインターネット回線などのインフラを利用。タクシーやトラック、バス車両の位置情報などをリアルタイムで知らせる独自の移動体管理システムを次々と開発し、成長してきた。会社設立3年後には早くもQボードへの上場を目指したが、ライブドア事件に伴う監査方法の変更により断念。次の機会は2009年で、全国規模の会社となるため上場先を東証マザーズに変更し、「上場寸前までいった」。しかし、前年にリーマン・ショックが起きており、「ユーザーの設備投資は確実に減る」との判断から見送った。ただ、これが結果的に「ビジネスモデルを変える大きな転換点となった」。

MVNOとしての事業が経営安定に貢献

そのビジネスモデルの変革とは、2009年に開発・販売を始めたIP無線機「ボイスパケットトランシーバー(VPT)」の開発だ。この無線機は、大手通信会社から通信回線を借りてサービスを提供する「MVNO(仮想移動体通信事業者)」として、携帯電話の第3世代回線のパケット通信技術を音声通話に利用する世界初のビジネスモデル。タクシー用、トラック用、バス用とこれまで別々だったシステムが、VPTによって同じシステムで共通して使えるようになった。しかも、従来の業務用デジタル無線はアナログ式に比べ通信エリアが狭くなる難点があったが、VPTを使えば伝送速度が向上するうえ、携帯電話と同じ通信エリアをカバーするため、ビルの谷間などこれまで無線が通じにくかった地帯でも通信可能となる。
 それだけではない。ユーザーにとって基地局設備や免許が不要となるなどメリットは多い。当時、同様のシステム開発を進める企業もあったが、モバイルネットワークの技術は「ネットワークに依存せず、端末とサーバーのアプリケーションによって、動きながら音声を途切れずに送れる」という独自の技術で開発に成功したわけだ。

安定した収益モデルを確立

同社はVPT開発に先立ち、2008年には電子マネーによる決済システムも開発していた。決済システムやVPT開発前まではタクシーやトラックなどの運行管理システムというハード製品販売中心の会社だったが、VPTや決済システムの投入によって、ハード販売だけでなく、システムの運用から保守でも収益を得る収益モデルを確立できたわけだ。
 同社では、自社開発したシステムの販売を「アプライアンス」、販売したシステムが使用する通信インフラやサービスの利用料金収入などを「モバイルネットワーク」、販売したシステムの保守やソフトウエア変更などの収入を「カスタマサービス」と3つに分類しているが、現在ではこの3部門の売り上げのバランスがとれており、村井社長は「世の中がどう変化しても上場に耐えられる企業となった」と強調する。

創業からVCと出会うまでの経緯

大分県のインキュベーション施設第1期生

「(コンピューターの)プログラミングが好きで、独学で(ITや通信関連などを)勉強した」という村井社長は、地元の「大分レジャー産業」で業務用ゲーム機やソフトなどの開発、大手無線機メーカーの代理店「大分日本無線サービス」で無線機販売などの仕事を経てきたが、大分日本無線サービス時代に、IT(情報技術)や通信に関する知識の豊富さから、頼まれて放送用アンテナの設置場所計算ソフトの開発や、地元のタクシー会社から安価な無線配車支援システムの開発を依頼された。とくにタクシー配車システムでは、GPSを使ってリアルタイムに車両位置を確認できる「当時としては画期的な」システムを開発したところ、非常に喜ばれ、「これはビジネスになる」と確信した。
 こうした実績を積む中で、銀行に紹介されて大分ベンチャーキャピタルの担当者と会い、「会社を作りたい、上場したい」との思いを強めていった。たまたま大分県がITベンチャー創業支援施設「大分県iプラザ」を開設することを知り、そこに第1期生として入居して創業することを決断した。

創業1年後にはファンドが出資

もともと他にない無線システムを開発していることなどから将来性を買われ、創業1年後には大分ベンチャーキャピタルの2本のファンドから計2000万円の投資を受けた。このうちの1本には中小機構も半額出資していた。村井社長は、これで「会社としてスタートが切れた」と振り返る。
 これらの資金をもとに、トラックやバスの運行管理、タクシー配車、小型船舶緊急通報、防災、さらには電子決済システムなどを次々と開発、商品化した。ファンド出資とともに、販路拡大や経営効率化などの支援を受けるだけでなく、大分銀行などから役員を派遣してもらうなど、上場に向けて社内体制を着々と整備していった。

IPO効果と今後の展望

「世間の見る目が違ってきた」

上場から半年余り、村井社長は「世間の見る目が全然違ってきた」という。顧客に対する信頼度が大きく向上し、「仕事がやりやすくなった」ことに加え、採用面でもプラスが出てきた。同社はまだ定期的な新卒採用は行っておらず、中途採用で業容拡大に対応してきたが、上場後は中途採用の応募者も増え、「人材の確保と顧客に安心を与えるという上場目的は達成できた」という。ここまで成長してきたことで、新卒の定期採用も「そろそろ考えたい」としている。

大手参入でも「十分戦える」

今後の事業の成長性についてはどうか。村井社長はこう語る。
 「タクシーのアナログ無線は、総務省が2016年5月末までにデジタルへの切り替えを義務付けている。さらに国内にはトラックが約600万台あり、うち無線を使っているのは約50万台。eコマース(電子商取引)の増加で、今後は物流のIT化ももっと進む。タクシーやトラックだけでなく、工場の緊急用や救急車向けなどこれまで携帯電話を使っていた需要も取り込める」
 実際、今年に入って、タクシーやバス向けの大口システム納入が相次ぐほか、大手のクレジット会社が同社の電子決済システムを含めたVPTシステムのレンタルに乗り出したり、携帯電話最大手のNTTドコモがモバイルクリエイト製の車載型通信機の販売開始を決めるなど、事業拡大は続いている。
 ただ、車載用デジタル無線システム市場には、ここにきて大手通信会社やカーエレクトロニクスメーカーなども参入してきた。モバイルクリエイトからみれば“巨人”企業がライバルとなる。それでも村井氏は、「当社には大手企業と戦えるコストとサービス構築力がある。これに上場が加わり、どことでも戦える」と、自社の技術やシステムに対する自信は揺らいでいない。
 同社の企業理念は「システム構築を通じて社会のユビキタス化に貢献する」。「顧客の笑顔を見ることが好き」という村井社長は、笑顔を見るために顧客が抱える問題を解決するソフト、ハード、システム開発を続ける。その視線の先には、海外市場も入ってきているようだ。

代表者プロフィール

代表取締役社長 村井 雄司
代表取締役社長
村井 雄司

1964年7月15日生まれ。1983年、大分レジャー産業に入社し、業務用ゲーム機やソフトウエアの開発などに従事。1988年、大手無線機メーカーの代理店、大分日本無線サービスに入社。2002年12月にモバイルクリエイトを創業し、代表取締役社長に就任(現任)。

将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス

ベンチャー企業については、「VIPが世の中を変える」と思っています。Vはベンチャー、Iはイノベーション(技術革新)、Pはパッション(情熱)の頭文字です。起業すれば新たな地元で雇用を生み、地域経済を活性化できます。当社の2012年5月期の売上高は約18億円でしたが、18億円の収入があるということは、それに匹敵する支出もあるわけで、会社ができれば地域社会に2倍の効果が生まれます。しかも上場すれば、さらに周囲に大きなエネルギーを撒くことにもなります。

ベンチャーキャピタルの声

大分ベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役社長 阿知波 孝典
大分ベンチャーキャピタル株式会社
代表取締役社長

阿知波 孝典
VCの視点からみた同社の成功要因

モバイルクリエイトの村井雄司社長は、時代を先取りした優れたビジネスモデルを実践するとともに、常に高い志と熱いハートを持ち続けることで、創業支援施設からスタートしてわずか10年で上場という九州初の偉業を達成できたのだと思います。中小機構とともに、大分銀行グループが総力をあげて販路拡大や経営効率化、役員派遣などの支援をしてきました。
 アーリーステージから中小機構と共同で設立したファンドが出資した効果も大きかった。官民ファンドが出資すると外部からの信頼度が大きく上がり、取引先の安心感も出てきます。それだけに当社としても責任感が高まり、緊張感を持って応援できたと思います。 ベンチャーキャピタルとしては、投資先の技術や商品、時代背景や事業の将来性はもちろん重視しますが、一番はやはり、経営者の人格です。その点、村井社長は起業当初より社会・地域へ貢献したいという強い思いや会社や従業員に対する愛情、会社の将来に対する確固たるビジョン、時代に沿った柔軟な発想等、現在も変わることなくベンチャーキャピタルが、投資をしたくなるような経営者です。
 先の技術や商品、時代背景や事業の将来性はもちろん重視しますが、一番はやはり、経営者の人格です。その点、村井社長は起業当初より社会・地域へ貢献したいという強い思いや会社や従業員に対する愛情、会社の将来に対する確固たるビジョン、時代に沿った柔軟な発想等、現在も変わることなくベンチャーキャピタルが、投資をしたくなるような経営者です。

2013年度取材事例
掲載日:2014年2月14日

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