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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

株式会社カイオム・バイオサイエンス

抗体医薬品の開発に向けて、抗体の創出に画期的な「スピード」と「多様性」を実現

事業内容:独自の創薬基盤技術を核とした抗体医薬品の研究開発支援・研究開発等
本社所在地:東京都新宿区市谷田町2-6-4 エアマンズビル市ヶ谷6F
URL:http://www.chiome.co.jp/ 設立年:2005年
株式公開年:2011年 市場名:東証マザーズ
資本金(2005年3月期):1,000万円 資本金(2012年3月期):1,028百万円
売上高(2005年3月期):0円 売上高(2012年3月期):633百万円
従業員数(2005年3月期):0名 従業員数(2012年3月期):29名
ファンド事業:ベンチャーファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合員名):JAIC-バイオ2号投資事業有限責任組合(日本アジア投資株式会社)KSP3号投資事業有限責任組合(株式会社ケイエスピー)

事業概要

共同研究より生まれた創薬基盤技術

同社は、独立行政法人理化学研究所の太田邦史研究員(現:同社社外取締役)が率いる遺伝ダイナミクス研究ユニットと財団法人埼玉県中小企業振興公社(現:財団法人埼玉県産業振興公社)との共同研究により開発された「ADLibR(アドリブ)システム」を実用化するために、同社代表取締役社長である藤原正明氏(以下、藤原社長)によって2005年2月に設立された。

「アドリブシステム」とは、抗体医薬品を創り出すための基盤となる技術である。ヒトには身体を守るために、細菌やウイルスなどの異質物“抗原”を認識して、その“抗原”を“抗体”という物質で排除するシステム(抗原抗体反応)が備わっている。この本来備わっているシステムを医薬品に活かしたものが抗体医薬品である。正常な細胞まで破壊してしまう従来の抗がん剤などの薬に対して、抗体医薬品は病原体を“狙い撃ちし”“副作用が少なく”“効果が長い”のが特徴である。このような抗体医薬品を開発するためには、抗原に反応する特定の抗体を解析する必要があるが、「アドリブシステム」はその抗体を探し出す。

具体的には、ニワトリの免疫細胞の特性を用いて、まず多種多様な抗体を生み出す。その様々な抗体の中に、例えばガン細胞の抗原を放り込むと、その“ガン”抗原に反応する特定の抗体を見つけることができる。そして、その特定の抗体を取り出して解析することにより、ガンにおける抗体医薬品の可能性を検討することとなる。

従来の手法とは一線を画す抗体作製の「多様性」と「スピード」を実現

従来の抗体を作り出す方法にはマウスを用いるマウスハイブリドーマ法と大腸菌を用いるファージディスプレイ法があるが、同社の「アドリブシステム」はこれらの方法に比べて優れた特徴が複数ある。その一つとして、従来の方法では抗体を産み出すことが困難であった細菌やウイルスなどの抗原(困難抗原)に対して、同社の技術を用いれば多様な抗体を作り出すことが可能である。また、今までは抗体の作製までに数ヶ月の期間を要していたところ、同社の技術を用いれば最短10日程度まで短縮、開発コストも大幅に縮減できる。

<「アドリブシステム」の優位性>

<「アドリブシステム」の優位性>

同社は、これらの優位性を活かして、国内外のあらゆる製薬企業とともに「アドリブシステム」を核とした抗体医薬品の開発を実現すべく、“創薬アライアンス事業”“基盤技術ライセンス事業”“リード抗体ライセンスアウト事業”の3つの事業に取り組んでいる。

<「アドリブシステム」を用いた3つの事業>

<「アドリブシステム」を用いた3つの事業>

製薬企業などが求める抗体を提供する“創薬アライアンス事業”

国内外の製薬企業やバイオテクノロジー企業などと提携して、医薬品開発のための抗体を「アドリブシステム」を用いて提供する事業である。共同研究開発や委託研究を通じ、同社は提携先企業の求める抗体を作製する。そして、提携先企業はその抗体の機能を解析して、医薬品としての可能性を検討することとなる。

「アドリブシステム」を移管する“基盤技術ライセンス事業”

同社は、創業時から「誰が行っても成功する技術」を目指して、「アドリブシステム」の標準化を行ってきた。“基盤技術ライセンス事業”は、製薬企業や研究機関などのクライアントと「アドリブシステム」におけるライセンス(使用権)契約を結び、その標準化されたシステムを同社の指導によりクライアントへ移管する。そして、クライアントは自ら当該システムを用いて抗体の作製を行うことができる。

作製した抗体の売却などを行う〝リード抗体ライセンスアウト事業〟

同社と大学・公的研究機関などとの提携・共同研究を通じて、医薬品の候補となりそうな抗体の作製を行う。作製した抗体について抗体医薬品となる可能性が確認されれば、国内外の製薬企業に対して、その抗体のライセンスアウト(売却・使用許諾)を行う。

創業からVCに出会うまでの経緯

創業のきっかけはVCからの技術評価の依頼

同社の創業は、以前に藤原社長が医薬系のコンサルタントとして働いていた時の後輩から、あるベンチャーキャピタル(新興企業などに投資を行う会社や組織。以下、VC)を紹介されたのがきっかけ。そのVCは、「アドリブシステム」の将来性について検証するために、藤原社長に技術の評価を依頼。そして、藤原社長が技術の評価を一通り終えた後、VCから「アドリブシステム」を事業化するために創業社長になって欲しいとの打診を受けた。それまで、藤原社長は“社長”になるというキャリアプランを深く考えたことはなかった。しかし、患者に多大な苦痛と金銭的負担を強いるにも関わらず、100%の効果がうたえず副作用を伴う現在の医薬とは異なり、「アドリブシステム」を用いれば、治療を待ち望む患者に対して必ず効果を提供できると確信したことから創業を決意した。

早期の事業化に向けた資金調達

創業後は、まだ技術として荒削りであった「アドリブシステム」の開発に取り組むために、資金調達を行っていく必要があった。一方で、バイオ系ベンチャー企業は銀行から融資を受けることが難しいため、VCからの資金調達が重要となる。同社は、(独)中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が出資するJAIC-バイオ2号投資事業有限責任組合を運営する日本アジア投資など、様々なVCを中心に約15億円の資金を集めたことで、「アドリブシステム」を早期の事業化に向けて加速することができた。

VC等を活用した事業の拡大と成長

資金調達におけるVCの支援

前述のように、「アドリブシステム」を本格的に事業化するためには資金調達を必要としたが、創業間もない頃は財務戦略に精通した人材が社内にいなかった。そこで藤原社長は、「創業のきっかけとなったVCから同社の資金需要に合わせた資本政策の策定や様々なVCの紹介、投資契約書の作成など資金調達に係る一連の支援をしてもらったことが大きな助けとなった。」と述べている。

事業を後押しするVCの支援

「アドリブシステム」の本格的な事業化までには様々な障害があったが、2008年には技術の将来性に確信を持てない営業・管理部門の人員が次々と辞めてしまう出来事が発生した。藤原社長は、日々の業務に追われていたので、新たな人材を探すことに苦慮していたが、とあるVCから現在同社の経営管理・財務担当取締役である清田圭一氏の紹介をしてもらい、組織の建て直しを図ることができた。

また、日本アジア投資からは、バイオ関係に精通した投資担当者が在籍していることから、同社の技術を特に深く理解して頂き、グループ全体で事業会社の紹介やアライアンスの仲介をして頂いた。

藤原社長は、「同社の事業は専門性の高い領域であるため、直接経営における示唆を仰ぐ機会は多くはなかったが、上記のような事業を後押しする支援をして頂いたことは心強かった。」と述べている。

インキュベーション施設の利用

同社は、中小機構が埼玉県及び和光市からの事業要請を受けて開設・運営している「和光理研インキュベーションプラザ」に入居している。入居理由は、バイオ系の研究施設が首都圏近郊に非常に少ない中、当インキュベーションの存在が大きかったため。また、創業間もない頃は、資金に乏しい中での賃料補助、人員が十分でない中で庶務などの効率化の援助、従業員向けセミナー、といった支援を受けることができた。このような施設がもっと増えれば、「私たちのような短期間に急成長を遂げなければならないバイオ系ベンチャー企業にとってさらに大きな助けになる。」と藤原社長は述べている。

IPOによる経営効果と今後の展望

IPOを通じた資金調達と知名度の向上による効果

同社は、2011年に東証マザーズに上場をした。市況が悪かったことから想定していた金額には届かなかったものの、研究開発を行うための一定の資金を調達することができた。また、上場をきっかけに知名度が向上して、二つの効果があらわれている。一つ目は、製薬企業などに同社の技術を前もって知って頂けることで、同社への具体的な要望を受け取る機会が増加し、ビジネスが進めやすくなっている。もう一つは、知識や創造力に溢れた志の高い人材が集まるようになったことである。企業が著しい成長を遂げる中で、企業に合わせて成長していける人材もまた重要であり、このようなメリットを得られたことは大きい。

100%の治療効果を提供する究極のオーダーメイド医療の実現

現在、「アドリブシステム」は、ニワトリの細胞を用いていることから、生み出された抗体も“トリ”の抗体である。従って、“ヒト”の抗体医薬品を創るためには、この“トリ”抗体から“ヒト”抗体に変える作業が必要であり、数ヶ月の期間を要している。そこで、上場で得た資金を用いて、ニワトリの細胞の遺伝子を置き換えて、直接“ヒト”の抗体を生み出すことのできる「完全ヒト抗体アドリブシステム」へと発展させる技術開発に取り組んでいる。

「完全ヒト抗体アドリブシステム」が実現すれば、“ヒト”抗体を僅か数週間で作製できる。したがって、例えば、致死率の高いインフルエンザが世界中で爆発的に広がった場合にも、抗体を迅速にかつ大量に供給することで多くの命を救うことも実現可能となる。

さらに、「治療法が全く確立されていない疾患」、「治療法があったとしても効果は限定的で副作用に悩まされる疾患」に対しても、それぞれの患者にとって最適な抗体を作製することで、100%の治療効果を提供する究極のオーダーメイド医療の実現を目指す。なお、そのためには創薬における動物実験や臨床試験などの各種“ルール”を変えていかなければならないが、「技術が一定のレベルを越えると〝ルール〟は変えられる。一人でも多くの患者さまを救うために、今後も技術革新だけではなく、あらゆる手段を講じていきたい。」と藤原社長は決意を述べている。

代表者プロフィール

代表取締役社長 藤原 正明
代表取締役社長
藤原 正明

1961年8月28日生まれ。東京大学大学院農学系研究科修士課程終了。1987年、中外製薬(株) に入社。その後、2000年にプライスウォーターハウスクーパーコンサルタント(株)(現日本アイビーエム(株))、2003年にクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン(株)と転職。そして、2005年2月に同社を設立し代表取締役社長就任(現任)。

将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス

経営には浮き沈みがありますが、自分の中でビジョンをしっかりと持ち、無理だと思った時こそ差が生まれるチャンスだと捉えて歩んでください。そして、一人の人間ができることは限られているので、同志を社内外にたくさん広げて、相談し協力を仰ぐことも大切です。時には気分が落ち込むこともあるでしょうが、オンとオフで気持ちを上手く切り替えて、良い意味で〝開き直る〟ことも大切だと思いますので、諦めずに夢を追い続けてください。

ベンチャーキャピタルの声

同社に投資をするに至った判断のポイント

「動物個体を免疫する」という原理を打ち破り、多様な特異抗体を短期間で作成するというイノベーションを可能にする同社「アドリブシステム」を評価して、出資を行いました。その後、事業・研究開発を着実に達成されていく経営陣の実行力を評価し、追加の出資も致しました。

VCの視点からみた同社の成功要因

同社の経営理念の一つにもある「交差・交流」を社内現場でも実践し、経営陣と社員が一緒になって高い目標に向かっていく「組織力」にあると思います。顧客の要望に対して的確かつスピーディーに応えることができる体制を構築できているからこそ、日米欧の有力企業との提携が実現したのだと思います。

(日本アジア投資株式会社)

2012年度取材事例
掲載日:2013年3月22日

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