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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

シンバイオ製薬株式会社

医薬品の「空白領域」を埋めるスペシャリティ・ファーマ

事業内容:新薬の研究開発、製造、ライセンス
本社所在地:東京都港区新橋五丁目23番7号 三栄ビル8階
URL:http://www.symbiopharma.com/ 設立年:2005年
株式公開年:2011年 市場名:大証JASDAQ
資本金(設立年):30百万円 資本金(2011年12月期):6,024百万円
売上高(設立年):0百万円 売上高(2011年12月期):1,882百万円
従業員数(設立年):6名 従業員数(2011年12月期):71名
ファンド事業:ベンチャーファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合員名):早稲田1号投資事業有限責任組合、ウエル技術ベンチャー投資事業有限責任組合(ウエルインベストメント株式会社)

事業概要

「空白の治療領域」を埋める新薬を開発

当社は、「がん、血液、自己免疫疾患」の3つの領域に特化し新薬の開発を行っている。これらの疾患は治療が難しく医療ニーズが高いにも関わらず、市場規模が大きくないため大手製薬企業は採算面から開発を見送っており、治療薬が空白化している。このような疾患に対する治療薬は一般的に希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定され、ここが当社の事業領域である。

世界のバイオベンチャーや研究所の研究成果を市場化する

一般的な製薬企業であれば基礎研究から自社で行い、10年以上の長期的な研究開発期間を経て新薬の承認を得ている。このような長い研究開発期間は高いリスクと繋がっている。そこで、当社は基礎研究を一切行わず海外から有望な開発候補品や国内の未承認薬を探索し、国内での承認を目指すビジネスモデルで事業を行っている。いわば、世界中のバイオベンチャーが当社の研究所の機能を果たしており、当社は開発、マーケティング等の医薬品の承認取得、市場化に特化することで研究開発期間の短縮化やリスクの低減を果たしている。このビジネスモデルの採用によって当社では5年程度で新薬承認を目指すことが可能となっている。

新薬候補物質に対する確かな評価能力

当社のようなビジネスモデルを採用した場合、最も重要なのは世界中の新薬候補物質を探索する能力とそれらを評価する能力である。

当社の代表取締役である吉田氏は米国大手製薬企業の本社副社長および日本法人を歴任しグローバルなネットワークを保持している。吉田氏以外にも経営メンバーの多くが製薬業界の経験者であり新薬の開発及び商業化に関する長い経験と豊富なネットワークを保持している。

また、経営メンバーの経験やネットワーク以外にも当社の高い研究成果評価能力を担保する仕組みであるSAB(Scientific Advisory Board)制度を導入しており、これが当社の優位性になっている。SABは世界の医療専門家からなる組織で年に3回の会議が開催されており、当社が探索した新薬候補物質に対する議論や提言がなされている。

このような探索、評価システムを当社では新薬の「サーチエンジン」と称している。これらのサーチエンジンが(1)高い医療ニーズ、(2)短い開発期間、(3)高い収益性、の各基準に基づき開発品目を選定している。

<同社の新薬探索・評価システム>

<同社の新薬探索・評価システム>

創業からVCに出会うまでの経緯

医療ニーズの高い薬品を社会に届けたいとの想いで起業

代表取締役の吉田氏は米国の大手製薬企業であるAmgen社の本社副社長、日本支社長を歴任し当社を設立した。Amgen社は当初ベンチャー企業であったが、新薬開発の成功に伴い大手製薬企業へと成長した。吉田氏はAmgen社で大きな市場が期待できる新薬の開発を行う一方、空白の治療領域に気付き、オーファンドラッグ開発の必要性を強く感じていたものの、採算面から開発を行うことが難しい大手企業に限界を感じていた。また、大企業の研究所において必ずしも優れた技術シーズが生まれていないことにも同様の限界を感じていた。

その想いから、大手製薬企業が開発に乗り出せない医療ニーズの高い薬を社会に届けたいと考え、当社を2005年に設立した。

事業会社とベンチャーキャピタルから資金を調達

創業当初より、豊富なネットワークと経験を持った経営陣、高い専門性を持ったSABメンバー、そして独自のビジネスモデルを確立していたが、具体的な新薬の候補物質を自社で保有しない当社がベンチャーキャピタル(VC)から資金を調達することは容易ではなかった。そこで当社のパートナーとなりえる事業会社を中心に出資を募ることとなったが、この時中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)も出資するウエルインベストメント株式会社(以下、ウエルインベストメント)が組成するファンドも出資に応じてくれた。

当社とウエルインベストメントの出会いは、吉田社長がAmgen社の副社長を勤めていた際に早稲田大学ビジネススクール教授の松田修一氏からインタビューを受けており、吉田氏が当社設立に当たって松田氏に相談をしたことから始まる。松田氏はウエルインベストメントの取締役会長でもあり、当社の企業理念、ビジネスモデルに共感を得、出資に繋がった。

VC等を活用した事業の拡大と成長

評判の高いVCからの資金が呼び水となって資金調達に成功

当社のビジネスモデルは前述したように基礎研究を行わないため、製薬企業としては比較的少ない研究開発資金での開発が可能となっているが、それでも相応の研究開発資金が必要となる。2006年にウエルインベストメント及び事業会社から10億円程度の出資を受け、翌年に25億円以上を複数のVCから調達することに成功した。2007年の資金調達では海外からの資金を調達することも検討していたが、国内で必要な資金量を賄えたため、全て国内から調達した。この資金調達成功の背景にはウエルインベストメントという有力なVCや国内大手製薬企業から出資を得られたことがあると考えている。

当社のような開発集約的な製薬企業においては、専門的な人材や提携先が必要である。従って、他の業種のようにVCからのハンズオン支援を受けることは非常に難しい。また、開発に多額の資金を要することから、VC1社のみから必要資金量を調達することも難しい。そのような業種特性を持つ当社にとって、有力なVCが資本政策のアドバイスを行うと共に出資に応じ、また他のVCからの資金の呼び水効果を果たしてくれることは開発を進める上で重要なことだと考えている。

欧米企業からライセンスを得て、国内での承認を達成

当社の事業成長のきっかけは、VCや事業会社から資金調達を行い、当社のネットワークを活用し、ドイツ企業や米国企業のもつ新薬候補物質のアジアにおける独占的開発権および販売権を獲得することに成功したことである。

その結果、2008年にエーザイ株式会社(以下、エーザイ)に対して当社が開発した抗がん剤「トレアキシン®」のライセンス供与が実現し、2010年に厚生労働省より認可がおりた事によって、当社製品を上市することが出来た。独自のビジネスモデルを構築し、当社の豊富なネットワーク、パートナー企業やVCの支援を得ることで、10年以上かかるとされる新薬の開発を当社設立から5年で達成することが出来た。

IPOによる経営効果と今後の展望

IPOで資金調達と信用力向上を狙う

当社は、研究開発資金の調達と信用力向上を目指し、2011年10月、大阪証券取引所JASDAQ(グロース市場)に上場を果たした。

結果として25億円を超える資金を市場から調達することが出来た。また、上場によって知名度が向上し、人材採用が容易になり、さらに国内だけでなく海外での知名度や信用力の向上にも繋がったことから、海外企業や研究者とのネットワーク構築が容易になったと感じている。

また、中小機構のような公的機関がLP出資しているファンドから出資を受けられたことにより、信用力が向上し、上場審査がスムーズになる効果もあったと感じている。

アジアのゲートキーパーとなり空白の治療領域を埋める

今後は3つの事業領域でアジアへの積極的な事業展開を行いたいと考えている。欧米では承認されているものの、アジアでは未承認の薬剤があるが、欧米でのネットワークや情報を生かし、これら欧米の新薬をアジアに展開するゲートキーパーの機能を担い、欧米とアジアの架け橋となりたいと考えている。特に市場規模が大きく成長機会の豊富な中国での事業展開に向けて積極的に動いていきたいと考えている。

製品の自社販売で収益構造を改善する

当社の抗がん剤は現在、エーザイから販売されているが、次の製品は自社販売を行いたいと考えている。自社販売を実施することで高い利益率を達成できると考えているためだ。そのため、次期の製品の開発品目の候補物質は自社販売の可能性を考慮して選定している。

一般には、自社販売をするために大規模な営業人員を割く必要があるが、当社の事業領域では一部の医療機関で専門的に扱われるものである。そのため、顧客は特定分野の専門的な医療機関となり、大規模な営業部隊を抱える必要は無い。

このような専門的な医療機関を顧客と想定した場合には、専門的な知識をもつ少数の医療情報担当者(MR)を配置することで自社販売を実施することが可能になると見込んでいる。

今後は、自社販売を実現する体制を構築し、特定の疾病領域でグローバルな競争力を持つ、日本初の本格的なスペシャリティ・ファーマとしての地位を確立したいと考えている。

代表者プロフィール

代表取締役社長 兼 CEO 吉田 文紀
代表取締役社長 兼 CEO
吉田 文紀

1971年学習院大学理学部卒業。MIT大学院修士課程修了。ハーバード大学大学院で経営学、医療政策論研究。同大学大学院修士課程修了。三菱商事、エイ・エッチ・エス・ジャパンに勤務。1980年日本バイオラッドラボラトリーズ創業。その後、日本シンテックス代表取締役社長を経て、1993年アムジェン株式会社代表取締役社長。アムジェン米国本社副社長。2005年3月シンバイオ製薬株式会社を創業。

将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス

シンバイオの創業の7年間を振り返って、あらためて「志」の大切さを思う。起業の過程においては、多くの試練に出会い試され、時にはどん底に突き落とされ、時には歓喜に満つることもある。「何のために事業を興したのか」常にその原点に立ち戻り自問自答し続けてきた。失意の中で志に励まされ、歓喜の中で志に感謝する、まさに志に導かれた7年間であった。時に、「吉田社長は、絶対ぶれませんね」と言われることがあるが、これは「志」が事業の源となっているからである。志に根ざした事業展開は決してぶれることはない。シンバイオ製薬の事業は「空白の治療領域」を埋めるための新薬の開発であり、誰かがやらなければならない仕事である。その強い使命感こそが、これからのシンバイオの成長の強い推進力となるであろう。

ベンチャーキャピタルの声

同社に投資をするに至った判断のポイント

○患者数が少ないために開発が見送られている「空白の治療領域」を埋める新薬の開発・提供を行う独自のポジションと、世界で上市または開発が後期の創薬を日本に導入し、短期間で開発・上市を行うビジネスモデル。そのビジネスモデルを支える創薬を探索する世界的なネットワークとサイエンティフィックアドバイザリーボードの存在。
○バランスのとれた優秀なマネジメントチーム。

VCの視点からみた同社の成功要因

同社の主な成長要因は下記の通りであると考えます。
○バランスのとれた優秀なマネジメントチームを構築できたこと。
○サイエンティフィックアドバイザリーボード及び同社の有する世界的なネットワークにより有望な創薬を導入できたこと。
○事業展開にあたって創業当初の事業計画に近い形で創薬の開発・上市を行われたこと。

(ウエルインベストメント(株)ファンド部部長 公認会計士 浅海治人)

2011年度取材事例
掲載日:2012年4月11日

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