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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

株式会社スリー・ディー・マトリックス

自己組織化ペプチド技術をコアとした医療製品開発により医療の発展に貢献

事業内容:医療製品事業(医療製品開発、研究試薬販売、ライセンス)
本社所在地:東京都千代田区麹町3-2-4 麹町HFビル6F
URL:http://www.3d-matrix.co.jp/ 設立年:2004年
株式公開年:2011年 市場名:大証JASDAQ(グロース)
資本金(設立年):206.7百万円 資本金(2011年10月末現在):20億44百万円
売上高(設立年): 売上高(2011年10月末、連結):400百万円
従業員数(設立年):5名 従業員数(2011年10月末、連結):21名
ファンド事業:がんばれ!中小企業ファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合名):JAIC-中小企業グローバル支援投資事業有限責任組合(日本アジア投資株式会社)

事業概要

自己組織化ペプチド技術を基盤技術とした医療機器の開発

1992年、米国マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)Shuguang Zhang博士が、自己組織化ペプチドを発見した。この技術の独占事業化権をMITの研究者グループがMITより取得、2001年5月、研究開発・事業化を目指し、米国にて3-D Matrix, Inc.(以下、3-D社)を設立した。
 この米国法人に、永野会長がエンジェル投資家として出資した経緯から、少しずつ事業の将来性を確信するようになった。そして、2004年5月、米国3-D社よりライセンスを受け、永野会長が当社を設立した。その後、日本における研究機関との共同研究の拡大や複数の用途・開発候補の特定に取り組んできた。
 さらに、2007年10月、米国3-D社を完全子会社化し、当社が全世界で独占的に事業を行うこととなり、積極的な事業展開を図っている。

<スリー・ディー・マトリックスの事業領域>

<スリー・ディー・マトリックスの事業領域>

医療機器の開発を中心に事業展開

当社の自己組織化ペプチド技術を用いた製品には、主に4つの優位性がある。
 第1は安全性であり、生体適合性、生体分解性を有し、体内で馴染みやすいこと、また生物由来の物質を用いていないことからウイルス感染リスクがないことである。第2は操作性であり、水溶液でゲル化機能により便利で、扱いやすいことである。第3は均質性であり、均一の品質で大量に合成可能である。第4は展開性であり、様々な用途での応用可能性があることである。
 現在は、日米で120以上の医療機関、大学、研究機関等と自己組織化ペプチド技術の応用研究を共同で行っており、止血材をはじめとした外科領域のほか、細胞培養の素材開発やドラッグデリバリー(標的とする患部等に薬物を効果的かつ集中的に送り込む技術)システム開発等、再生医療、細胞医療、創薬技術の分野の技術開発に取り組んでいる。

<開発パイプライン>

<開発パイプライン>

止血材製品の製品化目前

当社は、2011年5月、止血材製品(以下、TDM-621)の製造販売承認申請を行った。来夏頃には承認が得られる見込みであり、保険収載価格制定の準備も平行して行っている。
 TDM-621は、血液に触れると瞬時にゲル状化し、血管を物理的に塞いで止血するもので、外科手術全般への使用が対象となる予定である。この製品は、プレフィルドシリンジ製品(注射器に水溶液が充填されている)であることから使用が容易であり、体内に残ってもアミノ酸に分解されて速やかに体外に排出されること、透明で手術中の患部がよく見えること等、医療従事者および患者のリスク・負担軽減が期待される。
 現在の止血材の国内市場規模は約170億円程度と推計されている。製品発売後は、既存製品の置き換えに加え、内視鏡・腹腔鏡との併用など新規用途の開拓などにより潜在市場の開拓が見込まれ、外科用止血材として確固たる製品ポジションを獲得することを目指している。
 また、同製品は外国においても開発が進んでおり、韓国・台湾では承認申請準備中、米国・欧州においても前臨床試験の段階にある。例えば、米国の止血材市場規模は、年平均6%成長が見込まれ、2016年には13億4,400万ドルに達する見込みであるなど、海外市場も含めると相当なマーケットが期待できる。

創業からVCに出会うまでの経緯

創業6ヵ月でVC投資受入

創業時からなるべく資金をかけないビジネスモデルの構築を目指していたが、それでもバイオベンチャー企業は相応の研究開発費等が必要になることが見込まれるため、数十社のVCや事業会社、病院グループ等に積極的にアプローチしていたが、なかなか投資が実現しなかった。
 そのような中、創業から約半年で、当社の事業を理解し、投資をしてくれるVCが現れ、そのVCが、中小企業基盤整備機構が出資するファンドを運営する日本アジア投資㈱(以下、JAIC)の子会社で、再生医療に関するベンチャー企業を中心に投資を行うVCであった。
 それからしばらくして、別のバイオVCからも投資を受けることができた。しかし、その後は専門的かつ新しい技術であることからVC投資が得られず、その間に投資してくれたのは、医療に関する知見が深く、当社事業の可能性を高く評価してくれた医療関係の事業会社や病院グループなどであった。

2007年以降にVC投資が本格化

IPOが少しずつ現実味を帯びてきた2007年以降は、VCからも積極的に投資が得られるようになってきた。2007~2009年にかけて3回に渡りVCから資金を調達し、最終的にVC9社からの投資を受けることができた。
 2009年の増資時には、過去に資金調達で苦労した経験から、多数のVCに声をかけたところ、調達予定の5億円を超える回答をいただき、一部のVCには断りを入れたほどであった。
 この2009年の増資時に投資を受け入れたのが、JAICとその他VC数社であった。JAICからの投資時期はVCのなかで最後であったが、金額的にも大きく、また同子会社を通じた支援を含めれば、JAICグループからは創業間もない頃から合計4回の投資と継続的な支援を受けており、当社にとってリードインベスターであったと認識している。

VC等を活用した事業の拡大と成長

JAICからの投資による呼び水効果

JAICは日本のVCのなかでも歴史が長く、投資実績が豊富で、なおかつ社会的な認知度や評価が高いことから、JAICグループからの投資を受けられたことは、当社の信用力の向上に寄与している。JAICが注力して投資しているベンチャー企業(以下、VB)であることで、他のVCからの投資を受けられている側面も大きく、JAICからの投資受入による“呼び水効果”は大きい。

提携先企業の紹介

JAICをはじめ、投資を受けているVCからは、製薬企業等、事業・研究の提携先の紹介を多数受けることができた。特に大手VCのファンドには、海外の製薬企業等が出資していることがある。そうした海外製薬企業等の目的は、有力なVBの発掘や提携にあり、様々な企業を紹介してもらうことができた。
 提携の実現に向けては検討している先もあるが、多様な研究を行い、事業の幅や可能性を拡げていくためにも、自社だけのネットワークではつながりを持ち得ない、幅広いネットワーク作りに役立っている。

IPOによる経営効果と今後の展望

資金調達と社会的信用力のためIPO

2011年10月、当社は大証JASDAQグロースに上場した。上場を目指した目的は、第一が資金調達、第二が社会的信用力の強化であった。
 第一目的の資金調達については、計画通りの資金調達額を実現でき、目的は達成できた。
 第二目的の社会的信用力強化も、医薬品や医療機器を扱う会社は特に信頼性や安全性が重要であるが、上場したことで、医師や医学界、患者など様々な方々に安心してもらえる環境が整ってきたと感じられるようになった。

成功要因はビジネスモデルとパイプラインの選定

当社が事業を成長させ、IPOを実現できた要因は、主にビジネスモデルとパイプラインの選定の2つにあると考えている。
 ビジネスモデルの優位性は多数ある。
 第一が、自己組織化ペプチド技術が極めて優れていることである。生体適合性材料で、これだけ安全性が高く、安心して使える素材が実はほとんどない。このため、他社からの参入障壁が非常に高い。
 第二が、“体内に直接塗布や注入して、体内で再生させる”、“医師の手で直接体内に入れる”方法での技術開発に徹底したことである。特に再生医療VBは“体外で培養して体内に戻す”方法での技術開発に取り組むところが多かったが、採算に乗らずに事業が進まなかったところも多い。
 第三が、医薬品と比較して、相対的に開発期間が短く、開発費用が低く抑えられる、医療機器の開発に特に注力したことである。医療機器であれば、VBであっても上市まで自力で実現することができるため、高収益が得られる。また、医療機器の場合には、医薬品と異なり、特許切れ、ジェネリック医薬品となる心配がなく、永続的に収益を確保できる。
 第四は、共同研究の際、原則相手先の機関でヒト・カネを用意して研究してもらい、研究成果の共有化と事業化権の獲得に注力していることである。これにより少人数、低リスクで多数の研究開発を進められる。
 パイプラインの選定については、最初に取り組んだ止血材などの外科用製品市場はあまり成熟しておらず、他の製品への展開可能性の高さなど非常に魅力的な市場であることである。

止血材の世界展開と再生医療への展望

当面は、止血材の製造販売承認を得ることや欧米、アジアでの展開に注力していく。
 日本での承認が得られれば、韓国や台湾での承認の取得見込みは高い。また、米国でも近々IDE(日本の治験計画届に相当)の申請を目指している。欧州では、2012年前半に欧州に子会社を設立し、本格展開を目指す意向である。
 その他、米国で2011年にIDEが認められた歯槽骨再建材の治験を早急に進めるとともに、大きな展開可能性を秘めている外科領域での粘膜隆起材・血管塞栓材の開発の進展、また新たなパイプラインの開発を進め様々な用途への展開や再生医療への展開などを目指していく。

代表者プロフィール

代表取締役会長 永野 惠嗣
代表取締役会長
永野 惠嗣

1978年4月、エクソン化学(株)(現エクソンモービル(有))入社。86年6月、Bain & Company, Inc.東京事務所に入所。93年4月同パートナーに就任、翌94年4月同韓国事務所長就任。2000年4月、New Media Japan, Inc.を設立し、日本代表に就任。2004年5月、当社設立、代表取締役会長就任(現任)。2007年10月、3-D Matrix, Inc. 取締役CEO就任(現任)。東京大学工学部卒(化学工業専攻)、コロンビア大学経営学修士(MBA)。

将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス

外科用領域と再生領域における医療製品開発でパイプラインを広げて、グローバルに展開していきたいです。今は現実的ではないが、すい臓や肝臓の再生にも応用可能性があります。

これから創業を目指す方は、創業時のビジネスモデルに執着しすぎることなく、柔軟に事業展開を考えたほうがよいと思います。また、資金は多少余裕を持って調達しておくことが、事業継続に安定感と安心感をもたらします。現実には難しいことも多々ありますが、是非取り組んでいただきたいです。

ベンチャーキャピタルの声

日本アジア投資(株) 事業開発本部 副本部長 兼 事業開発部長 博士(理学) 三澤 宏之
日本アジア投資(株)
事業開発本部 副本部長 兼
事業開発部長 博士(理学)

三澤 宏之
同社に投資をするに至った判断のポイント

同社の自己組織化ペプチド「PuraMatrixTM」を、厚労省の薬事承認を得る可能性の高い数少ない新規医療材料として高く評価すると共に、製品化に対する同社経営陣の強い信念が投資判断の決め手となり、弊社グループにて創業当初の2004年から支援を続けてきました。

VCの視点からみた同社の成功要因

設立から上場までの7年半、生体親和性材料としてのあらゆる可能性を追求する中で、「止血剤」という的確な用途を発見し、製造販売承認申請を実現した事に尽きます。これは同社製品の品質の高さだけでなく、様々な関係者(大学、治験施設、PMDA、製薬企業、VC、証券会社等)に対し、真摯に粘り強く交渉し支援を取り付けた、永野会長、高村社長他同社経営陣の「対話力」の結果であると思います。

2011年度取材事例
掲載日:2012年1月23日

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