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こうして活用しよう 中小企業向けファンド


企業事例−IPO編−

株式会社セルシード

細胞シート工学を応用した安全で質の高い再生医療の提供を目指す

事業内容:細胞シート再生医療事業、再生医療支援事業
本社所在地:東京都新宿区若松町33-8 アール・ビル新宿1階
URL:http://www.cellseed.com/ 設立年:2001年
株式公開年:2010年 市場名:JASDAQグロース
資本金(設立年):10百万円 資本金(2009年12月期、連結):2,113百万円
売上高(設立年): 売上高(2009年12月期、連結):87百万円
従業員数(設立年):4人 従業員数(2009年12月期、連結):52人
ファンド事業:ベンチャーファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合名):ジャフコ産学共創投資事業有限責任組合(株式会社ジャフコ)

事業概要

東京女子医大岡野教授の「細胞シート工学」を基盤技術として創業

2001年5月、当社は、東京女子医科大学岡野光夫教授(現当社取締役)が開発した「細胞シート工学」に基づいて作製した「細胞シート」を用いて、従来の医療では治療できなかった疾患や障害を治す再生医療を世界に普及させることを目的として設立された。

細胞シート工学の特徴

再生医療技術としての細胞シート工学には、(1)生体内で有機的に機能する人体組織(細胞シート)を人工的に構築できる、(2)培養する細胞の種類を選ばずかつ構築できる組織(細胞シート)の応用可能性が幅広いことから様々な再生医療製品を生み出す基盤となり得る、(3)ヒト細胞のみから組織(細胞シート)を構築することができる、など他の再生医療技術に見られない優れた特長がある。さらに、この技術を用いて作製される細胞シートには、(1)ヒト細胞のみから組成されていることから材料に起因する安全性リスクが低い、(2)縫合しなくても短時間に患部に生着する、(3)生体の一部となって長期間にわたって組織再生に有効な成分を分泌し続ける、(4)積み重ねることが可能であることから3次元組織や臓器の構築の「基礎部品」となる可能性を持っている、といった多くの特長がある。

細胞シート作製のための卓越した技術

岡野教授の細胞シート工学が生まれる以前は、培養した細胞を回収する際に蛋白分解酵素を用いなければならず、この酵素処理によって培養した細胞がばらばらとなってしまうため、有機的に機能する組織として回収することができなかった。しかし、岡野教授は温度によって性質が変化するポリマーを表面に固定した特殊な培養皿を考案し、温度処理を施すだけで細胞をシート状の組織の状態で回収できる培養方法を生み出した。これにより、有機的に結合している細胞シートを回収することが可能となったのである。

この研究成果を用いて、当社は細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材UpCellRなど一連の温度応答性細胞培養器材製品を開発、製品化した。これらの温度応答性細胞培養器材は、世界でも当社だけが製造できる器材であり、排他的な競争力を生み出す原動力となっている。

細胞シート再生医療事業の構築

当社は、細胞シート工学を基盤とする「細胞シート再生医療事業」と「再生医療支援事業」の2事業を柱に事業展開を図っている。

細胞シート再生医療事業では、現在5つのパイプラインで開発を進めている。まだ製品化に至ったものはないが、最も開発が進んでいる角膜再生上皮シートは、フランスでの治験の経過観察期間が終了し、現在欧州30カ国を対象とした薬事許認可の取得へ向けた準備を行っている。この角膜再生上皮シートの薬事許認可取得までは数年を要する見込みであるが、それに先駆けて欧州主要国における人道的使用制度(他に治療法がない重篤な疾患に対して人道的見地から未承認製品の投与を認める制度)を活用した有償提供を推進していく計画である。

<細胞シート再生医療医薬品パイプライン>

<細胞シート再生医療医薬品パイプライン>

再生医療支援事業は、細胞シート再生医療の研究開発を世界各国で支援・発展させること及び当社の細胞シート再生医療事業提携先開拓のための戦略的な種まきという2つの意図を持って、温度応答性細胞培養器材などを販売する事業であり、現在の当社の収益源である。

創業からVCに出会うまでの経緯

創業1年でVC投資受入

2001年5月に創業した際には、東京女子医科大学岡野教授など創業メンバーを中心にして資本金を集めた。そして、創業から入念な準備を経て、約1年後の2002年6月に、初めてVC投資を受け入れ、本格的な研究に取り組みはじめた。これだけ早い段階でVCからの投資を受けられた背景には、当社の基盤技術である細胞シート工学が評価されたこと、及び創業メンバーが自らのネットワークを活用してVCなどに声をかけて投資を打診していたことがある。

当社の理念に理解あるVCからの投資

最初のVC投資では、中小企業基盤整備機構が出資する「ジャフコ産学共創投資事業有限責任組合」を運営する(株)ジャフコを中心に、4社から投資して頂いた。この初回のVC投資を含め、当社は上場までに4回に亘り合計20社以上のVCからの投資を頂戴した。なお、VCから投資を受ける際には、"日本初の技術を世界に広め、新しい再生医療産業を作りたい"という当社の考えに理解・共感を示して頂いているかどうかを密かに1つの参考にしていた。

投資を受けた全VCのなかでも、(株)ジャフコは、バイオテクノロジーに関する理解が深くまたバイオベンチャーへの投資実績が特に多いVCであり、当社にとっては初回以降全てのVC投資で支援を受けた"リードインベスター"であったと認識している。

VC等を活用した事業の拡大と成長

VCからの資金を元手に積極的な研究開発が可能に

当社は、上場までに2002年、2003年、2005年、2009年の全4回のVC投資を受けられたお陰で、多額の先行投資を伴う細胞シート再生医療医薬品の研究開発を進めることができた。

リーマン・ショック後にも目標金額の倍を調達

当社は、もともと2005年の増資を最後にIPOすることを目指していたが、計画が変更になったことから再度の資金調達が必要になった。

しかし、最後の増資については、2008年春から下交渉を開始し同年秋から本格的に資金調達に向けて動き始めたものの、100年に1度と言われた金融危機である"リーマン・ショック"(2008年9月)にぶつかってしまったため、いずれのVCも一時的に殆ど投資を凍結するという状況に直面してしまった。

過去3回の増資時は、バイオ産業が比較的注目されていたこともあり、苦労しつつも投資してくれるVCを見つけることができたが、この最後の資金調達は全く環境が異なり資金を出してくれるVCを見つけるのに非常に苦労した。

そのような苦しい環境の中、あるVCが他社の動向に関係なく、早々に1億円以上の投資を内定してくれたことが呼び水となり、他のVCが投資を決断する流れが生まれた。それだけでなく、このVCは新規VCの紹介も大変精力的に行って下さり、最終的にはそのうち3社から実際に投資を頂くことができた。またこの他にも早々に多額の投資を決定してくれた既存株主VCがあり、こうした既存株主各社の支援が命綱となって、市況が悪い中でも、結果として目標額7億5,000万円の倍である15億円の資金調達に成功した。

社外監査役や大手製薬企業等の紹介

リードインベスターである(株)ジャフコからは、投資以外にも様々な支援を頂いた。例えば、(株)ジャフコからご紹介頂いた方には現在も当社の社外監査役としてご活躍頂いている。

また、この他にもVC株主各社より、医薬品・医療機器メーカーの紹介や温度応答性細胞培養器材販売代理店の紹介など、当社の事業活動のために様々な協力を頂くことができた。

IPOによる経営効果と今後の展望

資金調達と信用力向上のためIPO

当社は、2010年3月16日、JASDAQ NEO(現JASDAQ グロース)に上場した。

上場の目的は第一義的には資金調達であるが、当社のような医薬品を扱う企業にとって、信用力の向上が重要であることも上場を目指した理由である。

上場から間もないことから、具体的に信用力の向上を実感することはまだそれほど多くないが、マスコミに取り上げられることが増えたためか、再生医療に直接関わっていない一般病院の医師や一般市民などでも当社の名前を認識されている方も増えてきており、知名度の向上には繋がっているようである。今後は、この知名度を信用力につなげていきたい。

VCとの良好な関係構築がIPO実現をもたらす

当社は、VCを集めて3ヵ月に1回の説明会を開き、事業の進捗状況や課題などの情報公開を積極的に行っていた。また、説明会以外でも、個別に面談の要望を受けた際には、いつでも応じて、VCが必要な情報を提供し、信頼関係の構築に努めてきた。

日々の積み重ねでVCからの信頼を得られた結果、2008年秋のリーマン・ショック後の苦しい資金調達の時にも、多くのVCから投資を受けることができたのではないかと考えている。このように、VCとの間で、苦しいときに支援をしてもらえるような良好な関係を構築できていたことが、IPOを実現できた要因の1つであったと言えると思う。

まずは角膜再生上皮シートの上市から

当社が開発を進めているなかでも最も上市が近い角膜再生上皮シートの開発を進め、まずは欧州市場において販売を開始することが、現在の第一目標となる。

その後は、なるべく多くの患者を早く助けられるよう、角膜再生上皮シートの北米や日本、アジアなど他地域での展開はもちろんのこと、それ以外のパイプラインの研究開発も含めた様々な取り組みを同時並行で積極的に行っていく方針である。

日本初の技術で世界をリードする新しい再生医療を

最近話題となっているiPS細胞と言えども、現在の技術レベルではまだそれだけで生体組織を作るまでには至っていない。しかし、「細胞シート」の技術と組み合わせればたとえば「iPS細胞シート」という形で生体組織を構築できる可能性がある。このように、「細胞シート」技術はiPS細胞やES細胞など他の再生医療技術と補完関係にある技術であり、換言すればiPS細胞との組み合わせで「日本発の技術」が世界の再生医療をリードできる可能性が存在する。当社は、日本発の技術をベースにして、世界で通用する革新的な再生医療を創出することを目指して努力を重ねていく所存である。

代表者プロフィール

代表取締役社長 長谷川 幸雄
代表取締役社長
長谷川 幸雄

1986年1月東邦大学薬学部助手、91年11月ファルマシア バイオテク(株)(現GEヘルスケア バイオサイエンス(株))研究開発室主任研究員、92年5月同研究開発室長に就任。98年4月、アマシャム ファルマシア バイオテク(株)(合併により現GEヘルスケア バイオサイエンス(株))シニアマネージャー、グローバルR&D東京サイト ヴァイス・プレジデントを経て、2001年5月、当社設立、代表取締役に就任。2008年10月に在フランス子会社CellSeed France SARL President & CEO、2010年6月に在イギリス子会社CellSeed Europe Ltd. President & CEOにも就任。

将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス

「細胞シート再生医療」には非常に大きな潜在可能性があります。まだ研究開発の途上ではありますが、心臓をはじめ様々な臓器をこの技術で作ることも可能になる日と確信しています。今後も研究開発を推進して、1日でも早く1人でも多くの人々に細胞シート再生医療の福音をお届けできるように努力していく所存です。

また、当社が最も苦しいときに支援してくれたのは、株主であるVC各社様でした。これから起業を目指す方には、是非長期的な視野に立ってVCを始め株主との良好な関係を築いていかれることをお奨めいたします。

ベンチャーキャピタルの声

同社に投資をするに至った判断のポイント

長谷川社長の再生医療ビジネスにかける情熱に共感し、また同社の「細胞シート」技術は再生医療分野でのプラットフォーム技術であり、その応用範囲の広さに将来性を感じ投資を実行しました。東京女子医科大学・大阪大学等をはじめとした大学から全面的な協力体制の下、基本特許を押さえ、既に大学レベルでの治験を実施し良好な結果が出ていた事も高く評価しました。

VCの視点からみた同社の成功要因

VCとの信頼関係を築きながら継続的に資金調達を行い、研究開発を進めて来た事と、当時、再生医療の分野においては国内での治験が困難であったため方向転換し、海外での治験を実施出来た事が成功要因と分析しています。
(株式会社ジャフコ)

2010年度取材事例
掲載日:2011年1月 7日

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