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ナノキャリア株式会社
| 事業内容:ミセル化ナノ粒子技術を応用した医薬品の研究開発 | |
| 本社所在地:千葉県柏市柏の葉5-4-19東大柏ベンチャープラザ | |
| URL:http://www.nanocarrier.co.jp/ | 設立年:1996年 |
| 株式公開年:2008年 | 市場名:東証マザーズ |
| 資本金(設立年):10百万円 | 資本金(2008年9月期):2,667百万円 |
| 売上高(設立年):− | 売上高(2008年3月期):262百万円 |
| 従業員数(設立年):5人 | 従業員数(2008年):29人 |
| ファンド事業:ベンチャーファンド出資事業 | |
| 同社に投資を行った出資先ファンド名(無限責任組合名):ユーテック一号投資事業有限責任組合(株式会社東京大学エッジキャピタル) | |
事業概要
ミセル化ナノ粒子の実用化を目指して
生体適合性のポリエチレングリコール(親水性)とポリアミノ酸(疎水性)を分子レベルで結合させたブロックポリマーは、水中で自己会合することによって、外側が親水性ポリマーで内側が疎水性ポリマーという明確な二層構造を有する直径数十ナノメートルの高分子ミセル(以下、ミセル化ナノ粒子)を形成する。このミセル化ナノ粒子を医薬品に応用し、静脈内投与した場合、血中に薬物が長時間滞留し、徐々にがん組織等の病変部へ集積する(EPR効果)ことで、治療効果が持続する薬物キャリアーとなることを、東京大学片岡一則教授、現在当社の社外取締役を務める東京女子医科大学の岡野光夫教授、神奈川科学技術アカデミーの横山昌幸プロジェクトリーダー等の研究グループが証明した。
このミセル化ナノ粒子を実用化し、日本発の新しい創薬技術を世界に発信したいとの想いから、1996年6月、中冨一郎が、前述の大学研究機関の発明者らとともにナノキャリア(株)を設立し、代表取締役社長に就任した。
ミセル化ナノ粒子を用いたがん治療薬の開発に特化

ミセル化ナノ粒子技術を用いた医薬品のイメージ
当社は、ミセル化ナノ粒子技術を特許等の知的財産として所有しており、ナノテクノロジーを応用した製造技術を基盤に創薬の研究開発を進め、事業化を行っている。
ミセル化ナノ粒子技術を応用した薬には、(1)薬物を血中に長時間滞留させ、効果を持続させることによる治療効果の増大、(2)より多くの薬剤をがん細胞に直接届けるため、正常組織へのダメージが少なく副作用を軽減できる、(3)利便性の改善や患者さんのQOL(生活の質)の向上、(4)医療費の削減等が期待されている。
一方で、世界中の医療現場で使用されている抗がん剤のなかには、薬物自体及び製剤化のために添加されている溶解剤による副作用が問題となっているものが多数ある。また、中には、体内ですばやく分解されてしまう抗がん剤もある。
そうした現状を踏まえ、当社では、ミセル化ナノ粒子技術を応用することで、特に治療効果を高めることができると期待される抗がん剤の開発に特化している。
自社開発、共同研究、ライセンスアウトによるビジネス展開
当社の現在のビジネスモデルは、ミセル化ナノ粒子製造技術を基盤とした(1)自社開発、(2)共同研究、(3)ライセンスアウトの3パターンである。(1)自社開発に関しては、現状では、臨床試験の段階までを手がけ、その後はライセンスアウトに以降し、契約一時金やマイルストン収入を得ている。
現在、7品目の開発を進めており、そのうち3品目は臨床試験段階にある。

開発品目
創業からVCに出会うまでの経緯
提携先からの資金支援や増資・補助金の活用による資金調達
当社は、研究開発型ベンチャー企業であり、製品開発のために多額の資金が必要であった。しかしながら、設立後すぐに売上が立つ事業ではなく、赤字決算が続き、銀行からの融資を受けることは期待できない。
このため、創業時からエクイティによる資金調達を主体にし、共同研究機関からの資金支援や公的な補助金の活用を行ってきた。
20社以上のVCからの資金調達
製品開発ための資金を調達するため、VCからの投資も積極的に受け入れた。
最初のVC投資は99年10月であり、厚生労働省が推進するバイオコンファレンスで知り合ったVCを中心に投資を受けた。
上場までの間に、VCからは4回にわたり投資を受けており、全部で20社以上のVCから投資を受けた。これらのVCには、既投資を受けたVCからの紹介もあれば、当社から直接コンタクトを取ったVCもある。
東大発の技術を活用していることから出資
中小機構が出資するファンドを運営する(株)東京大学エッジキャピタルからは、当社のコア技術が東京大学からライセンスを受けているという経緯もあり、2006年10月頃に先方よりコンタクトいただいた。当時、増資を計画していたこともあり、デューデリジェンスを経て、4回目のVC投資にあたる2007年3月に投資を受けた。
(株)東京大学エッジキャピタルからの投資を受け入れたのは、当社の技術が東京大学からのライセンスを受けているということ、創業時としては、比較的大きなロットでの投資だったためである。また、投資判断のスピードが速かったこと、東京大学関連のVCであり、「お墨付き」が得られるというメリットも投資受入にあたってはポイントとなった。なお、当社は中小企業基盤整備機構が運営する事業化支援施設(インキュベータ)である「東大柏ベンチャープラザ」に入居しており、各種支援メニューも活用している。
VC等を活用した事業の拡大と成長
事業計画策定やIPO準備支援
当社のような研究開発型ベンチャー企業の場合、事業の専門性の高さから、極めて限られた提携先や人材が必要であることから、一般的な販売先や人材などと異なり、VCを通じた支援は期待しにくい。
したがって、VCからの付随的な支援としては、事業計画策定のアドバイスやIPOに向けた準備を中心にお手伝いいただいた。
リードVCからの多大なる支援
初回から投資をしていただいたVC1社には、全4回のVC投資のうち3回応じていただき、合計投資金額も7億円程度にのぼった。
当社は20社以上のVCとの関係があり、各社の調整をするのは非常に困難であったが、そのなかで投資契約の締結やIPOに向けたロックアップ要請などで、VC間の調整をしていただいたことに大変感謝している。また、同VCからは99〜2004年の間に取締役を派遣していただき、IPOに向けた体制作りにも大いに貢献していただいた。
多額の投資自体が事業展開やIPOに向けて寄与
バイオベンチャーは、多額の費用がかかるため、資金提供そのものが事業の進展に寄与する。
たとえば、2004年に実施した3回目のVCラウンドで14億円超を調達できたことで、NC-6004(ナノプラチン(R))をはじめとするプロジェクトの進展や人員の拡充、さらにはNC-4016(ダハプラチン誘導体ミセル)のライセンス等が行い、事業を大きく発展させることができた。
バイオベンチャーが上場申請をする際には、一般的に運転資金2年分程度のキャッシュがなければ、申請が認められないと言われている。その観点からすると、IPO前の最後の増資にあたる4回目のVC投資で多額の資金を調達できたことは、豊富な手元資金の確保につながり、この増資のおかげでIPOにこぎつけることができたといえる。
IPOによる経営効果と今後の展望
資金調達・知名度向上・VCへの出口の提供を目指して
当社は、2008年3月、東証マザーズにIPOを実現した。IPOするときには、20億円程度の資金調達をすることと、会社の知名度向上を図ること、さらには投資を受けたVCに対して出口の提供をすることの3つを目指していた。
会社の知名度は、IPOにより向上し、目標を達成することができたと認識している。バイオベンチャーにとって知名度の向上が売上等に直接寄与するものではないが、IPOにより、新たな事業提携を行う際に、相手企業からみて信頼性をもって見てもらうことができるようになり、社会的信用が向上したといえる。
しかしながら、資金調達については、市況の問題もあり、目標の3分の1程度にあたる7億円弱の調達にとどまってしまった。また、市況が厳しい中でのIPOであったため、VCにはIPO当初、異例ではあるが、100%のロックアップをお願いし、出口の提供は、2008年9月以降に達成できたと認識している。
将来的には新薬の製造・販売までを手がけたい
創薬の開発段階のなかでも、なるべく後ろのフェーズまで自社で開発を進めてからライセンスアウトする方がより高い金額で販売することができるが、現在は、権利の一部をライセンスアウトすることで、資金化を図りながら、複数の開発プロジェクトを展開している。
しばらくは、地域などを限定しながらライセンスの一部を販売することで事業の展開をはかりつつ、将来的には、自社で新薬の製造・販売までを手がけられる、がんをテーマとした「スペシャリティーファーマ」を目指していきたい。
代表者プロフィール

中冨 一郎
1974年東京理科大学薬学部卒業、78年米国ノースイースタン大学大学院薬化学・薬理学修士取得後、同年4月久光製薬(株)入社。同社にて薬理研究、開発企画、ビジネス開発を担当。91年1月、米国セラテック・インク入社、ビジネス開発担当副社長に就任。93年10月、日本セラテック(株)代表取締役兼任。96年6月、当社を設立し、代表取締役社長CEOに就任(現職)。
2008年8月、iPSアカデミアジャパン(株)取締役就任。2008年10月、大学発ベンチャー協会、副会長就任。2009年2月、日本ライセンス協会副会長就任。
将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス
当社は、株式公開を第2創業と考えており、これから事業の拡大を計っていく発展途上の企業である。 起業やIPOを目指している方には、人・物(技術・知財)・金のバランスを考え、世界に発信する企業を目指していただきたい。
ベンチャーキャピタルの声
同社に投資をするに至った判断のポイント
東京大学工学系研究科片岡一則教授の世界的に秀でたナノミセル化技術を応用利用することで、より副作用が少なく効果の高い抗癌剤を開発するという、利益追求だけではない社会的意義や大学技術の貢献も重視して投資実行した。また、大学発の高い技術力を創薬に活かし実現するための、バランスの取れた経営体制や堅実な経営姿勢を高く評価した。
VCの視点からみた同社の成功要因
大学との関係を友好的に維持しながら、新しい技術の導入を行ってきたこと、また、ナノミセル化技術で医薬品を開発するという長期的な軸がぶれることなく、厳しい経営局面も経営努力や多くの協力・支援で乗り越えてきたことが、同社の成功に結びついている。
((株)東京大学エッジキャピタル パートナー 長妻祐美子)
