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事業継続マネジメント 地震や取引先の倒産など不測の事態を乗り切るため、事業の継続を図る経営(BCM)、その計画(BCP)、実際の事例を紹介

中小企業のための「リスクマネジメント入門」ーよくわかる、リスク管理とBCPへの対処法ー

Ⅳ BCPに対してなにを準備するのか

まずは自社の現状を把握する

まず、災害発生に対する自社の現状を把握しましょう。

BCPの導入にあたっては、災害発生時に経営者と従業員の生命を守ることが大前提になります。中小企業の場合、経営者が死傷すると会社の存続自体が危うくなると考えられますので、緊急時でも会社経営の指揮を執り続けられる状態にあることが重要です。そのため、会社だけでなく経営者の自宅の耐震補強や火災対策などは必須となります。

また、会社の財産も守る必要がありますので、災害時の限られた経営資源で自社の中核事業をどのように継続させるかという対策も必要になります。 中小企業庁は「中小企業BCPガイド?緊急事態を生き抜くために?」の中で現状の事業継続能力をみるための簡単な自己診断ができるチェックリストを用意しています。

出所:中小企業庁「中小企業BCPガイド(平成20年3月)」を参考に作成

上のチェックリストの質問に対し、「はい」の数が16?20個の場合は「BCPの考えに則った取組みが進んでいる」、6?15個の場合は「緊急時に備える意識は高いが、改善点は多い」、5個以下の場合は「今,緊急事態に遭遇すると、事業の長期間停止・廃業に追い込まれる可能性が大きいため、できることから早急に始めるべき」という判定になります。

BCPの策定は経営者が率先する

BCP策定においては、経営者がリーダーシップを発揮して率先して取り組むことが重要です。また、従業員全員の生命を守ることが大前提であると先述しましたが、他人事ではなく、災害時でも重要業務を継続し、経営への影響を最小限にとどめるという当事者意識を従業員全員で持つことが重要です。そのため、BCPの策定・運用の実効性向上のためには従業員への周知が欠かせませんし、全社的に取り組むことが必要です。

災害時に重要業務の早期復旧が可能であれば、取引先や顧客からの信用が向上することに加え、売上が確保できることから従業員の雇用を守ることができます。また、被災者への救済活動など地域経済へ貢献することも可能となります。

企業の事業復旧に対するBCP 導入効果のイメージ

出所:中小企業BCP策定運用指針を参考に作成

上の図は、緊急事態が発生しても、BCPの策定・導入など事前対策をとっていた企業(1)は、重要業務の操業率が一時的に落ち込んでも短期間で復旧し、企業価値を毀損させることなく維持・成長できることを表しています。

一方、対策をとらなかった(2)や(3)の企業は、事業縮小を余儀なくされたり、廃業に追い込まれる可能性が高いことを表しています。

BCPの策定・運用には継続したブラッシュアップを

BCPの策定・運用にあたっても、リスクマネジメントと同じく継続的なブラッシュアップが必要です。BCP策定では、BCP策定の基本方針の立案、社内の運用体制の確立、全社員での共有、日常的な訓練の継続・実施、改善、というサイクルを回します。

BCP策定・運用サイクル

出所:中小企業BCP策定運用指針を参考に作成

BCP策定・運用サイクルのポイントは、以下のようになります。

(1)事業を理解する
会社の存続に関わる最も重要性の高い事業(中核事業)を特定する
中核事業を復旧させるまでの目標復旧時間を決める(①取引先から許容される中核事業の停止時間の限度を把握する、②資金の耐え得る復旧までの期間を見積もる)
災害を想定し、被災シナリオに沿って中核事業が受ける損害を評価する
被災した場合の建物・設備の復旧費用や事業中断による損害額を見積もる
(2)BCPの準備、事前対策を検討する
事業継続のための代替策を検討する(作業場所、機械・設備、臨時従業員、資金、通信インフラ、クラウドサービス利用など代替すべきボトルネック資源を把握する)
事前対策を検討・実施する(耐震補強、設備の固定、防災用具の準備、避難計画の準備、従業員連絡リストの準備などの事前対策をする)
(3)BCPを策定する
緊急事態が発生した場合のBCP 発動基準を明確にする
BCP 発動時・発動後の指揮命令系統や組織体制を明確にする
フローチャートなど事業継続に必要となる情報を事前に整理し、文書化しておく
(4)BCP文化を定着させる
社内ディスカッションや勉強会開催などにより従業員へのBCP 教育を実施する
定期的にBCP訓練を実施する
各自治体が主催する防災訓練へ参加する
平常時からBCPや防災に関する情報を社内へ発信し、BCP文化を社内に醸成する
(5)BCPのテスト、維持・更新を行う
自己診断チェックリストなどを利用して、策定した現状のBCP を評価する
必要に応じて見直すべき改善点を反映させるなど、BCPを更新する

BCP策定においては、災害や被害(震度6強の地震発生により、交通インフラがストップし、通信機器が使えない。水道・電気も使えない。また、工場内の機械が倒れた、あるいはオフィスの什器・備品が散乱し、使用できないなど)を具体的に想定し、復旧までどの程度の時間が必要なのか、事業別の影響度はどうなのか、その影響が中核事業にどのように影響するのか、など多々推定する必要があります。さらに、属人的になっている業務があれば、その見直しが必要になるかもしれません。

被害の状況に関しては、自治体が公開している震災情報やハザードマップを入手したり、過去の事例などを用いて想定してみましょう。体系的に捉えて、優先度をつけて個別の対策に落とし込むというステップで進めてください。

ただし、策定にあたっては「とりあえずBCP策定に取り組んでみる」という姿勢も大事で、その後ブラッシュアップしていくという「割り切り」も重要です。初めから、完璧なBCPを策定しようとすると進まない可能性があります。

BCP策定の取組みを形にするためのガイドラインが中小企業庁などからWEB上に公開されていますので、是非参考にしてください。

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<石井 浩一 (有)マイティータンク 代表取締役 経営コンサルタント/中小企業診断士/国際公認投資アナリスト>

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