本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

HOME > 経営をよくする > 小売・サービス業のための売上アップ研究所

小売・サービス業のための売上アップ研究所


売れない時代に売れる理由

高齢化社会に対応、地域のかかりつけ薬局目指す【サンキュードラッグ】

地域を特定した高密度出店戦略をとるサンキュードラッグ

地域を特定した高密度出店戦略をとるサンキュードラッグ

北九州市の半径25キロメートル以内に、約65店も集中出店しているドラッグストアチェーンがある。「サンキュードラッグ」(北九州市門司区、平野健二社長)だ。なぜ、北九州市だけの出店なのか、なぜそれほど高密度出店をしなければならないのか―。広域に数多くの店舗を持つのが一般的な現在のドラッグストアチェーンの展開を考えると、そんな疑問が沸いてくる。しかし、サンキュードラッグにとって、この地域を特定した高密度出店戦略こそが経営の真髄。同社ではまさに日本の医療の先行きを考えると、「そうした戦略をとらざるを得ない」(西村一常務)という。一見すると、同社の戦略は現在のドラッグストア業界へのアンチテーゼだが、まず地域をきっちりと固めることがその後の展開への基礎固めとなるのだ。

コンビニ並みの商圏設定

サンキュードラッグは現在65店。全国に店舗網を持つ大手の調剤薬局やドラッグストアチェーンに比べると、規模的には地域に密着した中堅チェーンだ。しかし、その展開方法は他チェーンと大きく異なる。1店舗あたりの商圏人口は3000人から5000人という極めて小さな商圏で店舗運営を成立させているのだ。まるでコンビニ並みの商圏人口の設定だ。それでも同社では「100万人いる北九州市の人々の健康を守るという意味では店舗数は不十分で、単純に北九州市にあと140店は作れる」と計算、さらに店舗網をきめこまかくする方向という。

通常のドラッグストアの1店あたりの商圏は2、3万人が一般的。最近では小商圏フォーマットを作り始めるチェーンも出てきているが、それでも商圏人口は9000人とか、7000人規模で、同社の倍程度の商圏人口をとっている。

同社が特定地域の小商圏を対象にした店舗を高密度出店する理由は、高齢化社会が本格化するなかで「かかりつけ薬局」を目指しているからだ。もちろん、他チェーンでも顧客の調剤情報などをデータベース化しているところも少なくないし、全国に店舗を展開し、どこの店でも顧客の情報が引き出せる体制を整備しているところもある。しかし、同社では「例えば東京に住むAさんが北海道で事故に遭い、北海道の病院で医薬品の副作用などのリスク情報を必要とする頻度がどのくらいあるのだろうか」と指摘する。少子高齢化が強まり、シニアの行動半径が一段と狭まるなかで、Aさんが頻繁に来店できる体制を整える方が先決だという。

地域の医療機関と連携

地域の医療機関と連携、医師とも情報の共有化に取り組む

地域の医療機関と連携、医師とも情報の共有化に取り組む

シニア層の行動半径はせいぜい500メートルから1キロメートル。その範囲に店舗を1店ずつ作る。そして「かかりつけ薬局」にしてもらうことで、Aさんがどんなクスリをこれまで服用し、どんなクスリを飲んだ際に、アレルギーなど副作用を起こしたのかが蓄積され、薬歴や副作用情報の精度が高まるというわけだ。

同社は地域の医療機関と連携、医師とも情報を共有化している。例えば顧客のAさんが過去にこんな薬を服薬して副作用が出たなどをデータとして保有し、地域の医師と共有化、医療機関だけではとらえきれない情報を共有化することで、地域でAさんに精度の高い医療行為を提供できる体制を構築しているのだ。

東日本大震災の教訓

こんなエピソードがある。東日本大震災の被災地では医師がいて医薬品もあるのに、服薬が滞ったという。それは医療機関のデータが津波で流出、患者の過去の服薬、薬のアレルギーなどの情報が分からず、処方のしようがなかったからだ。

薬が合うのか合わないのか。重要な情報を共有化し「顧客の健康を守る」というスタンスに立てば頻繁に来店できる小商圏と、徹底した相談販売が必要になるというわけだ。

同社では住んでいる職場や学校の近場、住宅街、駅前、ショッピングセンターの中、病院の前などと立地別に店舗がある。生活圏に店舗があれば病気にかかった時、事故にあった時に、薬歴がすぐに引き出せるから安心と説明する。また複数の医療機関から薬を処方してもらっている場合、かかりつけの薬局があれば重複して飲むことを抑止できるし、飲み合わせの良し悪しなども分かる。

西村常務は「よくドラッグはオーバーストアだとマスコミなどでいわれるが、何を基準にオーバーストアというのだろうか。私たちの観点に立てば北九州市内だけでも、まだまだ店舗が足りない」と話す。

ドラッグストアにとって今のところ、調剤は収益部門である。日本の調剤薬局は平均して30%以上の利益率を確保しているといわれる。米国などでは20%以下だが、日本の調剤薬局の利益率が高いのはひとえに薬価が高いからだ。後発薬への切り替えが進まず高齢者が増加、薬代の支出が増えるばかりからだ。

しかし今後、調剤部門は急速にもうからない部門になるというのが業界の一致した見方だ。もはや、医療保険も健保組合も限界に達している。継続的な薬価の引き下げは不可避的だ。10年内に日本の保険行政は抜本的な見直しを迫られると予想する向きもある。

調剤薬局やドラッグストアの調剤部門がなくなることは今後もないだろう。むしろ今後、調剤部門が儲からなくなっても、だれかがその機能を担い続けなければならない。

しかもドラッグストアの使命として、服薬指導や、サンキュードラッグが取り組んでいるような顧客の薬歴管理、リスク情報の管理という機能はますます必要になるだろうし、それ以前にドラッグストアの役割として、薬による治療から病気予防、健康維持に果たす機能が増大していくことは間違いない。

潜在需要を発掘する研究

平野健二社長

平野健二社長

「店舗を展開している地域の顧客の健康を守る」ため、今後もうからない調剤部門を必要な部門としていかに支え続けるか。それがドラッグストアの共通の課題となってくるとみられている。西村常務は「本当の利益は(店舗で販売している大衆薬、日用品や食品、化粧品など)フロントでとるしかなくなる」とみる。そのため、同社では買う人にとって商品の本当の価値を提供するために「潜在需要を発掘する研究会」を5年前から実施している。例えば夏場に販売する飲料水。本当にのどが渇いていて今すぐにでも飲みたい人にとっては冷えた水を120円出しても買いたいだろう。しかし、今早急に水が必要のない人は冷えていなくても良く、同じ水が88円なら値ごろ感があるため買うだろう。こうした商品の価値を研究する場だ。

また化粧品でも、自分の肌質など顧客が気づいていないところの相談を受けながら、最適な商品を購入してもらう。こうした価値の伝え方を徹底的に研究し、フロント商品に価値を乗せて売る売り方を実践している。もちろんセルフ販売もあるが、部門によっては徹底した相談販売体制を敷く。同社は近い将来の日本の医療を見据えてドラッグストアの機能とは何かを研究を続ける。それを地域に落とし込んで経営する、新しいスタイルのドラッグストアを展開している。

企業データ
企業名 株式会社サンキュードラッグ
代表者 平野健二社長
所在地 福岡県北九州市門司区黒川西3-1-13
URL http://www.drug39.co.jp/index.html

掲載日:2013年4月18日


このページの先頭へ