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小売・サービス業のための売上アップ研究所


経営お悩み相談室

文:若林敏郎(中小企業診断士)

ニーズのつかみ方-「困っていることは何ですか?」でアプローチしよう。
Toshiro WAKABAYASHI

 今回の相談者は、地方都市の駅前商店街にある靴専門店で働く、入社2年目の女性販売員さんです。どのように接客し、商品を購入していただくか悩んでいるとのことです。

 状況をお聞きすると、靴に関する商品知識は常に勉強し、新製品が入荷するとバイヤーからの詳しい説明もあり、お客さまにきちんと説明をする自信もあります。
 しかしお客さまにアプローチして接客し始めると、お客さまは無言で立ち去ってしまうことが多いそうです。

 店長から「お客さまのニーズをつかみ販売するように心がけなさい」と教えられましたが、どのようにニーズをつかんだら良いのか思い悩んでいます。

 確かに、お客さまの好みも性格も千差万別ですので、経験の浅い販売員さんは悩みますよね。 しかし、来店するお客さまに共通していることは、とてもシンプルなのです。

 まず考えてください。なぜ、お客さまは来店するのでしょうか? お客さまは何か目的があるから来店します。何気ないウインドウショッピングでも興味の無いものには関心を示しません。

 お客さまは、自分の欲求(ニーズ)を満たすために、来店し商品やサービスを購入するのです。 食材の購入、旅行に行くためのスーツケースの購入、風を引いたので薬を購入、ベストセラー小説の購入、髪のカット等々です。

 このように欲求は様々有りますが大きく二つに分かれます。
 一つは、「快楽の追求」。他の一つは「苦痛の解消」です。映画を見たり、ディズニーランドに行ったり、居酒屋にいったりするのは楽しさを求める快楽の追求です。 薬を買う、美容院に行くのは苦痛の解消です。

 苦痛の解消とは、不便、不満、不快、不安など、お客さまが何か困った事や悩んでいることを解消することです。そしてこの欲求は、快楽の追求より強い欲求となるのです。

 ドアツードアで不便を解消した宅配便、長時間営業により消費者の不便を解消したコンビニ。今日、大きく発展した業態は、ほとんど消費者の「困っていること」、「悩んでいること」を解消して成功してきました。このことを考えても苦痛の解消は強い欲求であることがわかります。

 洋服や靴を購入する欲求は、楽しさを求める快楽の追求に見えますが、自分が今もっている服は流行おくれで「着て歩くのが恥ずかしい」という不満を解消するためにも購入します。
 今履いている靴は、履き心地が悪いから、洋服と合わなくなったから、底が減ってしまい見栄えが悪いから、という不満や不快を解消するために購入します。

 しかし、店頭では次のような光景をよく見聞きします。 お客さまが何か困っている事があり来店しているのに、「この商品は今年の新商品で売れています」とか、「サイズを言っていただければお出ししますよ」、「どうぞ、お手にとってご覧ください」などとニーズに合っていないお声掛けで、いきなりアプローチします。

 このアプローチでは、お客さまとしては「そうですか」「わかりました」と、うなづくだけしかできません。むしろ「ちょっとゆっくり見させてよ」とか、「うるさいな」といった気分にさせてしまいがちです。

 販売の7割「アプローチの仕方」で決まるといわれています。そのタイミングについて心理学を応用した諸説もありますが、主なシグナルは以下の通りです。

・お客さまが一つの商品をじっと見ているとき
・商品にお客さまの手が触れ、その商品に興味を持ちはじめたとき
・明らかに何かを探しているとき
・価格を調べはじめたとき

 これらはお客さまが商品に興味を示し、欲求に変わるシグナルです。何とか買ってもらおう、知っている商品知識を、すべて聞いてもらおうと考えるのではなく、このシグナルを見逃さずに、「お客さまの困っていること、悩んでいることを解消させてください」という気持ちで接客することにより、お客さまの心が開け、販売員との良い信頼関係が築けます。

 このアプローチからクロージングまでのポイントをまとめると以下のようになります。

アプローチからクロージングまでのポイン

 アプローチの際の「お声掛け」の言葉は大変重要です。 お客さまがわざわざ来店しているのは何らかの不満、不便、不快を解消しようとしていることを思い出してください。

 「お客さま、お持ちの靴でなにかご不便があるのですか?」 もしくは「お靴で何かお困りですか?」 と困っている人を助けるように優しく「お声掛け」してください。

 お客さまは「今度海外旅行に行くのだけど、服に合う靴がないので・・・」とか「実は親戚の就職祝いでちょっと下見に・・・」などと応えてくれます。
 「困っていること」を解消してくれるかも知れないという助け舟にお客さまの心が開くからです。

 そして、この「お声掛け」によって、お客さまのおおよその欲求がつかめるのです。しかし、まだこの段階では、「具体的」にどのような靴を欲しいのかお客さまにもわからないのです。

 そこで、お客さまの欲求を「具体的」にしていきます。海外旅行へ行くお客さまには、いつ、どこへ行き、どのような時に履くのか、どのような服に合わせたいのか、そして予算はどのくらいか、といったお客さまの欲求をより「具体的にする」質問をします。

 すると、「夏に娘と一緒に韓国に行くのですが、買い物が好きなので疲れない靴が欲しい」「Tシャツなどカジュアルな服で歩きたい」などとお客さまの具体的なお応えが返ってきます。質問により大分欲求が具体的になってきました。

 ですが、ここですぐに「それではこの商品がとても適していますよ」などと売り込むのは少し待ちましょう。お客さまの「欲求確認」「アドバイス」が必要だからです。

 「それでは一日中はいても疲れない軽くてスポーティーな靴はいかがですか」。そして「海外旅行ですとお荷物が多いですよね」「出来れば色々な服に合わせやすいほうが良いですよね」とお客さまが「気の付かない点」をアドバイスしながら商品をお見せします。

 「そうね、これなら履き心地も良さそうだし、スニーカーと違って外出着にも合いそう」と、この靴によって「苦痛の解消」が出来ることを「お客さまご自身に語ってもらう」ことが大切です。

 そして、ここで初めて商品の特徴を説明します。

 「実はこの靴鹿皮を使っているのでとっても軽いのですよ。」
 「靴底は特殊な素材で出来ているので歩きやすくて疲れません。」
 「おまけに蒸れない加工が内側に施されているので夏にはぴったりです。」
 「デザインもカジュアルだけでなくおしゃれなパンツにもぴったり合いますよ。」とお客さまにとって必要な「靴の特徴やメリット」を説明します。

 お客さまは一般的な靴の特徴ではなく、自分が求めている欲求(不の解消)を満たしてくれるメリット(商品)であるため購入するのです。

 さて、もうすぐ4月。気持ちを新たに、先に提示したアプローチからクロージングのポイントをあらためて確認しながら、是非、接客にお役立てください。

掲載日:2012年3月29日


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