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小売・サービス業のための売上アップ研究所


経営お悩み相談室

文:同友館編集部
監修:亀田憲(中小企業診断士)

顧客情報の活用-顧客情報をお店のファン化につなげよう。

 皆さま、こんにちは。第6回のお悩み相談室、今回の相談者は、美容院を経営している30代の女性です。独立開業して1年。ご主人との二人三脚のお店の経営も順調で、最近スタッフを1名増やしたところです。

 今回の相談内容は、「顧客情報の活用」について。これまで、店舗を持たずフリーでやっていたときから、自身が担当したお客さまについてはカルテをつくって、施術内容などを記入してきました。しかし、今まで、開業のお知らせをDMでご案内する以外に、このカルテを使ったことはなく、単なるメモにとどまっているとのこと。このカルテをどのように活用すれば、売上UPに役立てることができるのか、アドバイスが欲しいとのことでした。

 たしかに、顧客情報というのは、現在、さまざまなところで活用されています。たとえば、コンビニやスーパーなど取り扱い品目の多い小売店では、どんなときに、どんな商品が売れたのかを仕入れの管理に活用しています。また、どんなお客さまが、どんな商品を購入したのかといった情報は、商品開発や、売場づくりにも生かされていますし、最近では、これらの情報を、ターゲットにあわせたクーポンの発行という形で活用している例まであり、これら手法は確実に売上UPにつながっています。

 でも、美容院業は、こうした数多くの商品を扱う業種・業態ではありませんし、今回の相談者は、個人で店舗経営をされています。なので、当たり前ですが、仕入れ管理が必要なほどの商品も取り扱っていませんし、商品開発も行いません。

 では、美容院業では顧客情報を集めても、うまく活用ができないのでしょうか。いいえ、違います。大事なことですが、顧客情報の活用方法というのは、業種・業態、置かれている経営環境によって大きく異なるのです。

 さて、今回ですが、相談者は美容院で、ご自身の技術の高さをサービスとして提供しています。また、お店を開業されたということで、お店の雰囲気やお人柄も「売り」の一つになっており、取り扱っている商品・サービスがきわめて個別的・限定的で、顧客ターゲットも、こうした趣味・嗜好などが合致する特定の層に限られます。
 こうしたことから、限られた商品(サービス)と、限られた顧客層を、いかに少ないコストで効率的にマッチングさせ、それを維持しつづけるかがポイントになると考え、お客さま一人一人のニーズの違いに対して対応をかえるワントゥーワンマーケティングの方法が最適だと考えました。

 そして、美容院業の特性や、このお店の特性から、顧客カルテを売上UPにつなげる方法として、
STEP1 既存顧客の長期来店化
STEP2 新規顧客の獲得
STEP3 客単価のUP
という順で取り組むことにしました

 時間もお金も限られたなかで、もっとも大きな効果をあげるには、取り組むべき順番はとても重要です。今回、もっとも大切にしたのは、既存の顧客情報を使って「お店のファン化をすすめる」ということ。そのために、まずは、既存顧客との関係性を強める取組みを最優先させました。それがSTEP1「既存顧客の長期来店化」です。
 そして、STEP2となる「新規顧客の獲得」も、この顧客との関係性が強化されるとより効果が出やすくなります。客単価のUPを最後としたのは、美容院業は、取り扱う商品も少なく、施術サービスの単価も一定であることが多いことから、そもそも客単価UPが難しいためです。ですが、この「ファン化」が出来ていると取り組むべき方法にひろがりが出ます。

 まず「STEP1 既存顧客の長期来店化」についてですが、美容院業の場合、その特性から、髪を切る「頻度」を上げること、つまり、来店回数を上げることは難しい。ですので、考え方としては、(ちょっと大げさですが)その人が一生涯に髪を切る回数のうち、どれだけ、うちのお店に来店してくれる回数が増やせるのか、つまり、どれだけ長期的に、しかも、うちのお店にくる「確率」を高めることができるのかという点を重視しました。

 長期にわたって来店していただくためには、大事にしてもらっているという感覚はもとより、自分の趣味、嗜好、環境などにあっているという「フィット感」、またそれらをよく理解してもらっていて、「おまかせ」できる安心感や信頼感を構築する、つまり、お客さまをお店のファンにしていく必要があります。

 たとえば、以前した話をよく覚えていてくれたら「大事にされている」と感じていただけるかもしれません。また、新しい髪型やカラーリングに挑戦したいというときに、お客さまの趣味・嗜好を理解していたら、よりフィットする提案ができ、それがさらに信頼や安心感につながります。
 ですので、次回来店の際に、さらなる関係性の強化が図れるよう、会話の中で得られる、「趣味・嗜好・興味」などについても、メモをとることをすすめました。

 ちなみに、こうしたことをカルテにして残しておくことは、サービスの均質化をもたらします。たとえば、予約ナシで来店されて、スタッフにお願いしたとしても、カルテを見れば、好みの雑誌をお渡しすることもできるでしょう。
 また、「お客さまは、ネコを飼っていらっしゃるんですよね。○○からうかがっていますよ。」といって、会話のネタになるだけでなく、お客さまに、いちからご自分の話をしていただくという煩わしさも与えないですみ、こうした提供サービスの均質化や、きちんとした引継ぎは、お店の信頼感にもつながります。

 さて、いよいよ具体的な方法です。既存カルテにどのような情報が記入されているのかをお聞きしました。記入されているのは、

  • 氏名、住所、連絡先、性別、生年月日
  • 職業
  • 家族構成
  • 来店日
  • 施術内容や施術以外の購入商品(これと一緒に、髪に関するお悩みや求める効果(要望)が記載)
  • 来店動機(なぜこのお店を知ったのか)

 情報は十分集まっています。

 たとえば「来店日」。次回来店までの期間でカルテをふりわけて、次回髪を切るのに最適なタイミングでメールを出す方法を提案しました。これは、忙しいお客さまには、「そうか、そろそろだな・・・」という「思い出し」効果がありますし、そこに、ちょっとした言葉などがついていれば、自分のことをよくわかってもらっているなという認識をもたらす効果もあります。

 「来店動機」は「STEP2 新規顧客を獲得」するために、どういう販促の方法(チラシ、広告、ブログ、ツイッターなど)が有効なのかを考えるのに役立ちます。カルテをチェックしてもらったところ、お友達や家族の紹介(=口コミ)が多いとのことでした。なので、その口コミが、より来店につながるよう、お友達も、紹介した方も安くなるという「お友達紹介割引」を実施しました。

 ところで、顧客の変化によって、お店を変化・成長させていくというのも、顧客の長期来店、新規顧客獲得には重要な視点です。これは「家族構成」に関わるところですが、例えば、20代からおつきあいのあるお客さまが、30代に入られて、お子さまがいらっしゃるようになったら、キッズ向けの対応も考えていくといったようなことです。その結果、その「家族」を顧客に取り込んで、ひいては、「次世代」にわたるおつきあいをしていくといったことも考えられます。

 そして最後が「STEP3 客単価のUP」です。これについては、まず「購入履歴」があるお客さまをチェックしてもらいました。関連商品を購入されたことのあるお客さまは、もともと購入意欲の高いお客さまですから、優先的に購買につながる「きっかけ」を提供していきます。
 具体的には、施術中の会話のなかで、その商品の使い心地などをきいて、さらに、商品紹介のきっかけにすることをすすめました。また、サンプルを提供する際にも、「優先的」に提供するようにしました。
 そして、髪について、お悩みのあるお客さまに対しては、「○○さんが、すすめてくれるものだから、いいかもしれない・・・」と思っていただけるよう、自身が商品を利用して、それを「自分のことば」ですすめていただくようにしました。

 もちろん、これらの方法は、お客さまとの「信頼」があってこそ成り立ちます。信頼関係がないと、単なる押し売りになってしまいます。また、そもそも会話を好まないお客さまもいらっしゃいますので、その旨をカルテに記載するなどして、お客さまに「快適」にすごしていただけるようにつとめることが大切です。

 また、カルテの情報がきわめてプライベートな情報であるということにも十分留意する必要があります。過剰な情報収集や個別対応は、プライバシーが侵害されていると感じられることもありますので、お客さまに合わせて、適度な対応を心がける必要があります。
 そして、これら集めた情報は、ほかに漏洩しないよう適切に管理する必要があります。特にここで取り扱っている情報は、個人を特定できる個人情報であり、内容はプライバシーに関わります。これら情報の漏洩はお店の「信頼」にかかわりますので、個人の情報を取り扱う以上、是非、一度は「個人情報保護法」をご覧になってくださいね。

掲載日:2011年12月 1日

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