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SaaS & ASP 活用術

実践事例!中小企業のIT調達はコレだ―「サービスソーシング」

活用事例05.業務系システムをサービスソーシングする −営業支援系システムの構築

さて、今回は業務系システムのサービスソーシングについて考えてみます。ここで業務系システムとは、ホワイトカラー労働にとって一般性の高い情報系システムと、企業活動の核となる基幹系システムの間にある、個々の企業の具体的な業務を支援するためのシステムをいいます。

レベル 初級〜中級
対象 ビジネス遂行において重要な業務の支援をできるだけIT化、あるいはコスト削減したい、そして実効性を高めたい組織
目的 特定の業務領域をサービスソーシングすることによって、低コストで業務の効率化を図る

5.1 営業支援をサービスソーシングする理由

サービスソーシング/SaaSの考え方は、おもに一部の業務系システム、例えばSFA(Sales Force Automation=営業支援ツール)から始まりました。そして取りあえずは大きな成功を収めています。これにはいくつかの理由があるのではないかと考えています。

その一つはマーケティング上の理由です。「営業支援」という、どの企業でも必要とされながら、一方ではマニュアル的なものか、逆に暗黙知的なものかに二分されてしまっていましたその隙間に(いい意味で)、ほどほどにIT化されうる「業務」を「発見」したことです。

技術上の理由もあります。「営業支援」というものは、どこの企業でもやりたいことはおおよそ同じにも関わらず、企業ごとに細かい点でさまざまなバリエーションがあります。しかしこれは、まさにSaaSの「多くの別個のユーザーのシステムを一つのプラットフォーム上で動かし、なおかつユーザーごとにある程度のカスタマイズが可能」という性質をうまく生かすことのできる領域だったわけです。技術上のシーズと問題のニーズがうまく合致したのです。

そしてもう一つは、サービスソーシングの本質である「ネットワーク」に関わる理由です。営業上のノウハウは、非常に個人性が高いと同時にそれを共有することによって(個人にとっても、企業にとっても)新しい価値を創り出すことができるものです。こういうことを考えると、たいていはごく一般的な「ナレッジ・マネジメント」とか「コラボレーション環境」に話題が移ってしまいがちなものですが、そこまでは進まずに、まずは営業支援という特定の領域に留めたということです。

逆にいうと、このような性質をもつ業務を「発見」できれば、 それはサービスソーシングのよい対象になる可能性があるということです。いかがでしょうか、皆さんの周囲にもこんな「隠れた」業務がどこかに落っこちていませんか?

5.2. 営業支援サービスソーシングの進化

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図5-1 Salesforce.com(開発者版の画面)図5-1 Salesforce.com(開発者版の画面)

セールスフォース社の提供する営業支援ツールについては、本サイトの「中小企業ビジネスのための SaaS & ASP活用術」でも述べましたが、それから約一年が経ち、サービスもかなり進化しています。サービスの進化の速さ、これがサービスソーシングのもたらす大きな利点の一つです。利用を続けていれば、特にバージョンアップ費用を支払わなくてもサービスは進化していくのです。では、どのような部分が進化したのでしょうか?

まず、 ユーザー・インターフェイスがかなり進化しています。例えば、テキストとHTMLリンクだった部分がアイコンの付いたボタンになったり、機能がひとつのボタンにまとめられて直接アクセスできるようになっています。見た目の情報量としても、以前はどちらかというと散漫だった部分が、コンパクトに見やすくなっています。

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図5-2 提供されている基本的な機能画面図5-2 提供されている基本的な機能画面

また、機能も非常に充実してきています。まず全体の機能が営業支援だけでなく、

  • マーケティング
  • Google Apps との連携
  • 分析
  • コールセンタ
  • イノベーション管理
  • 代理店管理
  • コンテンツ管理
  • ワークフロー

など多くの業務範囲をカバーするようになっています(提供される機能はエディションによって異なり、別途料金が必要な機能もあります)。

5.3. 導入方法

SalesForceの導入はきわめて簡単です。30日間の無料試用もオンラインで簡単に手続きすることができますし、サービスの購入自体もオンラインからすることができます。従来のソーシング方法では、実際に調達するまでが大変でした。しかしよく練り上げられたサービスソーシングでは、調達自体は非常に簡単に済んでしまいます。初期費用も低い場合が多いですから、社内での根回しや稟議、決裁なしで調達可能な場合もあります。

サービスソーシングでは、問題は調達そのものにはありません。むしろ、
(1)調達したサービスをいかにして現場に根付かせるか
(2)サービスを利用することによっていかにしてビジネス目標を達成するか

ということが重要になってきます。

しかしこれは悪いことではなく、これまでのソーシング方法では調達に取られていた労力を、実際のサービス利用に振り向けることができるわけです。ただ見方を変えれば、その分、組織やその方法、システム担当者など、調達側の本当の実力が問われているといえるでしょう。

5.4. 他の選択肢

前回紹介したNetSuite日本版でも、営業支援を含むCRM(顧客管理)を中心的な機能のひとつとしています。また、SalesForceと異なり、それ自身が提供する基幹システム(ERP)とCRMが緊密に統合されています。

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