HOME > 経営をよくする > SaaS & ASP 活用術

SaaS & ASP 活用術

実践事例!中小企業のIT調達はコレだ―「サービスソーシング」

活用事例04.基幹系システムをサービスソーシングする −財務、在庫、購買、人事/給与管理システムの構築

前回まではいわゆる情報系システム、その中でも汎用性の高い部分についてのサービスソーシングの事例を見てきました。今回は、同じように汎用性が高く、どの企業でも必須でありながら、個々の企業の経営に直結する基幹系システムのサービスソーシングについて検討してみます。

基幹系システムは、今まで見てきた情報系システムに較べて

  • 汎用性が高い一面、業種や企業ごとに大きく異なる部分もある
  • 人間系も重要だが、法律や業種による制約や変更の重要性が大きい
  • 機密性や正確性が必須条件である

などの特徴を持っています。このような特徴が、サービスソーシングでも実現可能かどうかが大きなポイントになるでしょう。

また情報系システムではネットワーク・サービスであることがシステムの機能を便利に、豊富にしていましたが、基幹系システムでネットワーク・サービスであることがプラスに働くのか、マイナスになってしまうのかも、サービスソーシングの大きな課題です。

一方、情報系システムではサービスソーシングすることによって(特に小規模な組織では)工夫次第でコストを非常に低く抑えることが可能でした。しかし基幹系システムでは自社やデータセンタに設置する場合とコストは大差ないとも言われています。その場合のサービスソーシングの優位点は、自社にハードウェアやソフトウェアなどの資源、またそれらのための保守要員を抱え込まない、と言う点になります。

レベル 上級
対象 新規立ち上げ、あるいはシステム更改などを機会に、徹底したサービスソーシング化を検討している組織(規模に関わらない)
目的 情報系システムのサービスソーシングにより、安価、柔軟に組織内の情報/知識の流通と共有を高める

4.1. サービスソーシング化の決断

ここで「基幹系システム」とは経営の根幹に関わるITシステム、その中でも金銭に直接間接に関係するシステムを考えることにします。したがって、CRM(顧客管理)やSFA(営業支援)、BI(ビジネス・インテリジェンス = 経営可視化/判断ツール)などは含めません(それらは業務システムとして別の回に扱う予定です)。財務管理を中心として、在庫管理や購買管理、人事/給与管理を念頭に置きます。

まず第一に、基幹系システムの移行には大きなコストと手間、リスクが掛かることを認識する必要があります。いくらサービスソーシングがスロー・スタート/スモール・ステップだといっても、基幹系システムの場合には通常は徐々に移行するのは困難です。また基幹系システムに他の重要なシステムが依存していたり、複数のシステム(例えば在庫管理と財務管理)が緊密に結合していて容易に切り離せない場合もよく見受けられます。

第二に、サービスソーシングによって何を求めるかを明確にすることです。例えば、コスト削減を目的にするのならば、初期費用だけでなく、保守運用費用も考慮に入れる必要があります。またコスト削減に伴って失われるものも勘定に入れなければなりません。あるいは長年の場当たりな変更によってつぎはぎだらけになったシステムをクリーンアップしようとしているのならば、サービスソーシングによってそれが本当に達成できるのかどうかの判断(多分予測も含まれます)も必要です。

4.2. サービスソーシングの選択肢

拡大する
図4-1 NETSUITE図4-1 NETSUITE

基幹系システムのサービスソーシング先の選定にはいくつかの選択肢があります。もちろん現状、あるいは近い将来まで見込んだ自社規模や財務規則などの特異性、法令遵守や法律などの制約を考慮することも重要です。

また今まで利用してきた基幹系システム自体がSaaS/ASP化されているのであれば、それを利用することによるメリットもあります。さらにどんな製品を選択するにしろ、多かれ少なかれ、設置・設定や移行、カスタマイズ、他システムとの接続などの業務は発生するため、それを運用期間にわたってサポートしてくれるよいパートナの存在も重要です。

このほか基幹系システムではソフトウェア本体の他にハードウェア、OS、ストレージなどが重要な検討項目でした。サービスソーシングではそれらはサービスに任せてしまうことができますが、その一方でネットワーク(速度、可用性、機密性、安全性など)が重要な検討項目となってきます。

以下にSaaS/ASPで基幹系システムを提供している代表的なベンダのいくつかを挙げておきます。

NetSuite 日本版 http://www.netsuite.co.jp/portal/jp/index.html
・基幹系システム(ERP)以外にもCRM、e-commerceが統合されている
・申し込みによって試用も可能
・ユーザー当たり 月額11,000円〜
PCA for SaaS http://www.pca.co.jp/area_product/prosaas.asp
・よく使われている会計システムのSaaS化
・申し込みによって試用も可能
・2ユーザー当たり 月額23,625円〜
GRANDIT-ASP・SaaS http://www.nec-nexs.com/erp/grandit/index.html
・国産
・オンラインで試用も可能
・ユーザー当たり 月額7,500円〜
 (他に初期費用、月額基本料なども必要)
TSUBAISO ERP http://tsubaiso.jp/
・特に小規模事業所向け(〜50人)
・10アカウントまで初年度 月額90,000円〜

4.3. 運用と保守のサービスソーシング

このようにして、基幹系システムをサービスソーシングしたとしましょう。設置、移行、教育などを経て、運用が始まります(この辺りはオンプレミス = 自社設置型などと同じです)。それなりの規模の企業ならば、運用に際して保守が必要になります。

サービスソーシングの場合には、もちろんハードウェアやソフトウェア自体の保守や定期的なアップグレードの手間は掛からないはずですが、ユーザーの都合による変更や改修の必要性はなくなりません。この場合、どこまで自分たちでできるのか、どこからは誰にどうやって頼めばいいのか、その場合のコストはどれだけかを明確にする必要があります。

現状ではこの部分に関しては、通常のアウトソーシングと大きくは変わらないと考えた方がいいでしょう。つまり、(当然のことですが)ユーザー側にもある程度システムを理解し、ベンダと交渉できる人員の配備が必要になります。

基幹システムのサービスソーシング化はまだ始まったばかりです。10 年後に基幹システムはサービスソーシングすることが当たり前になっているかどうか、予断を許さないといえるでしょう。

実践事例!中小企業のIT調達はコレだ―「サービスソーシング」

  1. 中小企業が実践するSaaS―サービスソーシング(調達)[2009年4月3日]
  2. 活用事例01.メール環境のサービスソーシング −電子メールシステムの構築[2009年4月3日]
  3. 活用事例02.情報系システムのサービスソーシング −ドキュメント作成・管理システムの構築[2009年4月3日]
  4. 活用事例03.外部向け情報発信をサービスソーシングする −webサーバーの構築[2009年4月3日]
  5. 活用事例04.基幹系システムをサービスソーシングする −財務、在庫、購買、人事/給与管理システムの構築[2009年4月3日]
  6. 活用事例05.業務系システムをサービスソーシングする −営業支援系システムの構築[2009年4月3日]
  7. 活用事例06.サービスソーシングした業務系システムをカスタマイズする(1) −SaaSの技術的優位性[2009年4月3日]
  8. 活用事例07.サービスソーシングした業務系システムをカスタマイズする(2) −SalesForceを使ったアプリケーションの追加[2009年4月3日]
  9. 活用事例08. データをサービスソーシングする −データの安全とコスト低減の両立[2009年4月3日]
  10. 活用事例09.インフラをサービスソーシングする −既存のシステムや独自アプリまでソーシングできる環境の構築[2009年4月3日]
Copyright(c) Metabolics,ltd. このコンテンツの著作権は、(有)メタボリックスに帰属します。著作権者の承諾なしに無断で転用することはできません。