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SaaS & ASP 活用術

知っておきたいSaaS&ASPサービスの基本と特徴

01.さまざまなシステム導入方法 ― SaaS/ASP

「SaaS&ASPサービス導入マニュアル」はおもにカスタム開発、パッケージ購入によるITシステム調達について考えてみました。カスタム開発は「業」「務」のどちらかといえば「業」(本業)に、パッケージ購入は「務」(支援業務)に向いているようです。本編はWebサービスという形態でのITシステム調達について解説します。

1.1.SaaS/ASPとは何か

Webサービスとは文字通り、ユーザはWebブラウザを用い、ITシステム本体とデータはネットワークの向こう側(サーバ)に置く形態を言います。

もちろんカスタム開発でも技術的にこのような形態のITシステムを開発することはできます。パッケージと名乗っているものでも、技術的にはWebサービスとして提供されているものもあります。

今回取り上げるSaaS(Software as a Service)やASP(Application Service Provider)がそれらと異なっているのは、あくまでも「サービス」として、多数の異なるユーザを対象として提供されていることです。単にシステムをWebブラウザとサーバに分けただけではないのです。(注釈↓

SaaS/ASPでは、ユーザ企業が購入するのはITシステムではありません。サービスです。したがってどんなハードウェアもソフトウェアもユーザの所有にはなりません。

もちろん今までも情報処理産業はサービス業の一員であると主張していたはずですが、結局提供していたのは「人員」でしかありませんでした。ここでのサービスはより現代的な意味でのサービスそのものです。サービス・エンジニアリングという領域やWeb2.0、エンタプライズ2.0という流行語を思い浮かべてもらうといいかもしれません。

もっとも理想的なSaaS/ASPは、以下のような性質を持つはずです(注釈↓)。

  • ある時にそのサービスを提供するWebサイトを訪れて、いくつかのフォームに記入してボタンをクリックするだけで、ユーザ企業はサービスを購入できる
  • サービスの対価は基本的に人数×期間というような単純なものである
  • ユーザは一定期間、Webブラウザを通じてそのサービスを利用し、不要になればいつでも利用を止めることができる
  • ベンダはその期間中、多数の異なる企業のユーザに向けてサービスを提供する
  • 多くの場合、ベンダは継続的にサービスを向上させる(機能追加、性能向上、情勢対応など)
  • ユーザは特別なサービスを購入して追加することができる場合もある
  • 個性化可能ではあるが、均質なサービスが大量のユーザ向けに提供されているために利用コストが低い
  • 特にユーザ側の保守運用管理コストはゼロに近い

これを見てお分かりのように、例えばWeb上にある音楽提供サイトや情報提供サイトがこれにとても近いものです。いや、むしろ逆でそれらのWebサービスをITシステムの提供方法として採り入れたらどうなるか、というのがSaaS/ASPといった方が相応しいでしょう。

そして今後、コンシューマ向けWebサービスとエンタプライズ向けWebサービスの境界は曖昧になっていくだろうと考えられます。

1.2.SaaS/ASPの利点と欠点

SaaS/ASPの利点はなんと言っても、その手軽さとコストの低さにあります。使いたいと思ったときに、Webサイトでクリックしてサービスを購入すればよい。利用期間中は明確な利用コストを払い続けるだけ。それも毎月一人当たり数千円程度です(注釈↓)。

しかもカスタム開発やパッケージのカスタマイズに見られるような大きなコスト(たいていは数百万円から数億円)もありませんし、ユーザ側のなすべきこと(要求管理、進行のチェック、導入運用保守管理)もほとんどありません。

またスケーラビリティもあります。SaaS/ASPを実現しているシステムは、本来非常に多くのユーザが利用できるように作られています(それがベンダ側としてSaaS/ASPを提供するうまみなのですから)。したがって、例えば最初は数人のグループから利用を始め、成果が出るようだったら部単位へ、会社単位へと利用を広げていくやり方が簡単に(それこそクリックひとつで)可能です。

逆に欠点は、サービスとしての均質性にあります。「誰にでも」「同じようなサービスを」「どこででも」提供するのが「サービスとしてソフトウェア」の本質ですから、「特別にこういう機能を追加したい」「この機能はノウハウに関わるので他社には開示できない」「うちだけデータを別に保管して、必要なときにはうちのシステムにつなぎ込みたい」というようなことは基本的にできません。

当然、こうした機能変更や付加機能の追加は、余計なコストや保守が必要になってきます。そうなってくると、パッケージによる調達との差は小さくなってしまいます。またそもそも使いたい機能をどこかのSaaS/ASPベンダがサービスとして提供していなければ、使いようもありません。

SaaS/ASPとして提供されているサービスは、カスタム開発やパッケージに較べると、領域が限られています。「多くの企業で必要とされるような機能」「多くのユーザが個人として利用する機能」「特定の使い方に特化していない機能」、要はサービス化が容易な機能がSaaS/ASPで提供されているサービスの中心です。

例えば、グループウェアというのはその典型的な例です。最近ではほとんどの企業でスケジュールやアドレス、リソースなどをネットワーク上で共有する必要に迫られています。そしてそのような機能はほとんどの社員が個人ベースで利用します(せざるを得ません)。

また、グループウェア自身は非常に汎用性があり、どこかの企業の業務のやり方に特化していない分、使い方を工夫すればどの企業でもある程度自社向けの使い方ができます。このようなSaaS/ASPの具体的な例については、次回以降の連載で紹介します。

もう一つの欠点はすべてが「あなた任せ」である点です。サービス・レベル、セキュリティ、システムの進化などカスタム開発ではすべてコントロール可能だったもの、パッケージでもある程度はコントロール可能であったものが、SaaS/ASPではコントロールがより難しくなっています。

SaaS/ASPはある意味でITシステム調達のマス・マーケット向けのアウトソーシングですから、少なくとも現時点ではこれらについては速さ、安さとのトレード・オフと考えざるを得ません。このように見てくると、現時点ではSaaS/ASPの利点/欠点はつぎのようにまとめられそうです。

  • 利点は・・・(利用コストが)安い、(導入が)早い、(品質/機能が)うまい
  • ただし・・・「初期コストは」安い、「標準機能をそのまま使う場合には」早い、「独自性を求めなければ」うまい、という条件が付く
  • 提供されるサービス領域は限られている
SaaS、ASPの利点/欠点 図1-1 SaaS、ASPの利点/欠点

要は使い方次第、という当然至極の結論に落ち着きそうです。ただし、現在の潮流から考えれば今までパッケージとして調達していたような種類のITシステムのほとんどは、ますますSaaS/ASPの形態に移行していくことが容易に想像されます。そして残りのパッケージはよりカスタム開発に近い形態、つまり大幅なカスタマイズを前提とした形に近づいていくことでしょう。

一方、カスタム開発自身も、SaaS/ASPの技術的な影響を受けて変化していくことが考えられます。つまり

  • 共通コンポーネントの部品化
  • それに伴うコスト/リスク/開発スピードの低下
  • 今まで専門家が開発していた部分のユーザへの解放/委譲
  • 共通部分のプラットホーム化
  • 保守運用までを含めたサービス化

などです。これらを考えると、一般的なサービスの利用と自社が保有するノウハウの結晶という二つの役割分担を維持しながらSaaS/ASPとカスタム開発は互いに歩み寄る方向にあるといえます。

SaaS/ASPとカスタム開発 図1-2 SaaS/ASPとカスタム開発

知っておきたいSaaS&ASPサービスの基本と特徴目次

  1. 01.さまざまなシステム導入方法 - SaaS/ASP (1)[2008年2月22日]
  2. 02.SaaS/ASPサービスの実例 (1)-オフィス系(google、zoho)、グループウェア系(Cybozu)[2008年5月27日]
  3. 03.SaaS/ASPサービスの実例(2)-業務系(SalesForce)[2008年5月27日]
  4. 04.SaaS/ASPサービスの実例(3)-会計/財務系[2008年7月4日]
  5. 05.オープン・ソース・ソフトウェアとユーザ指向 〜SaaS/ASPの先へ[2008年8月12日]
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