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SaaS & ASP 活用術

SaaS&ASPサービス導入マニュアル

Step4.ビジネスからシステムへ エンタプライズ・アーキテクチャ

4.3.エンタプライズ・アーキテクチャ

最近「エンタプライズ・アーキテクチャ」という言葉を聞くことがあるかと思います。文字通りに取ると「企業組織の骨組み/全体構造」というような意味ですが、実際にはビジネスの構造とITシステムの構造とを対応付ける一種の方法論だと考えていいかと思います。まさに今ここで考えようとしていることですね。

日本でも、政府から「業務・システム最適化計画策定ガイドライン」 の中の「業務・システムの最適化のための取組」の項が出ていますが、この中心にあるのが日本版エンタプライズ・アーキテクチャと言われるものです。見てみると、大変長い文書で、中身も固くて、非専門家にはとても分かりやすいとは言い難いものですが、基本的には政府系組織の調達に用いられるものです。

日本でエンタプライズ・アーキテクチャが話題になり始めたのは2003〜4年ごろからですが、欧米ではすでに1990年代後半からこのような取り組みはありました。それらのエンタプライズ・アーキテクチャの中で代表的なのはTOGAF (The Open Group Architecture Framework) や DoDAF (DoD = 米国防省 Architecture Framework)、ザックマン・フレームワークなどです。

TOGAFはどちらかというと、どのような過程にしたがってエンタプライズ・アーキテクチャを開発すればよいかに重きを置いたものです。一方、DoDAFはどちらかというとエンタプライズ・アーキテクチャをどのように表現すればよいかに重きを置いています。ザックマン・フレームワークはそれらに較べると、もっと一般的/シンプルな思考の枠組みを与えるもので、次のような表を元にビジネスの要件を具体的なITシステムに落とし込んでいきます。

ザックマン・フレームワーク 図4-4 ザックマン・フレームワーク (原典: http://www.zifa.com/framework.pdf

日本版EAもTOGAFもDoDAFも、基本的には官公庁や大企業向け、特に億単位の中〜大規模案件のためのものです。真剣にやろうとすると多くの専門家の手と頭も必要になり、時間的にも費用的にも大変なことになります。では、中小企業ではエンタプライズ・アーキテクチャのようなものを考えなくていいのか?というと、そうではありません。

ITシステムがビジネスの価値を上げるためのものであるならば、ビジネスとITは必ずうまく噛み合っていなければなりません。 エンタプライズ・アーキテクチャは、その噛み合わせを、これまで使ってきた言葉で言えば「うまい手渡し」を実現するためのよい道具立てのひとつです。

ザックマン・フレームワークのような比較的シンプルなものを使い、それほど長い時間を掛けなくても構いませんから、できるだけそのような能力を持った専門家と一緒に、エンタプライズ・アーキテクチャ - ビジネス要件からITシステムへの変換マップ-を作ってみてください。皆さんが自宅を新築するときに、建築家と一生懸命アイデアを出し合い、議論しながら、図面を作っていくのとおなじことです。

4.4.ザックマン・フレームワーク

ここでは比較的簡単なエンタプライズ・アーキテクチャの例として、ザックマン・フレームワークをざっと紹介しておきましょう。

図4-4は上から下に向かって、ビジネスのアーキテクチャからITシステムのアーキテクチャへの具体化の対応を表しています。横の行はさまざまなレベル/立場からの視点を表しています。上から順に

範囲
この連載のStep1からStep2にかけて解説しました。何を前提として、最終的にどこに向かっていきたいのかを記述します
ビジネス
この連載のStep3で解説しました。自分たちの現状は何か、それをどういう風に変えたいのかを記述します
システム
上の行 (ビジネス上の要求) をITシステムでどう実現するかに対応付けます
技術
システムが実現すべきこと (仕様) を記述します
詳細表現
最終的な詳細設計を記述します

それに対して、縦の列は横の行のそれぞれの視点に対して、いわゆる5W1Hを表しています。

what
対象
how
実現方法
where
who
主体
when
時間軸
why
モチベーション、目標

このすべてのマスを埋めなければならないとは限りませんし、上から順に埋める必要もありません。また場合によっては縦横の行列を追加することもあります。例えば「how much」(予算、目標値など) の行を追加することはよくあります。

ザックマン・フレームワークの面白い点はものごとを考えるときにどういう視点から見ればよいかというヒントを与えてくれることです。このそれぞれのマスを埋める過程で、自分たちがどこに焦点を置いているか、何が不足かが自ずと明らかになります。

またマスにどの程度、どう書くか (日本語で一行でいいのか、マスごとに詳細なモデルやドキュメントを作るのかなど) を決めることによって、作業量や詳細度を制御できるのも、TOGAFやDoDAFを使うのに較べた利点です。

今回はwhat (何をしたいか) からhow (どう実現すればいいか) への変換過程について述べました(図4-5)

whatからhowへ 図4-5  whatからhowへ

最初に提案依頼書 (RFP) についてお話ししましたが、RFPを複数の開発組織に発行する時点で、エンタプライズ・アーキテクチャができていれば、その後のプロセスは順調に進むでしょう。全部できていなくても、ザックマン・フレームワークのいくつかのマスが埋まっているだけでもだいぶ話が違います。

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SaaS&ASPサービス導入マニュアル目次

  1. Step1.経営にとっての情報化 何のためのIT化なのかを考える[2007年12月26日]
  2. Step2.ビジョンとミッションを明確にする[2007年12月26日]
  3. Step3.業務を可視化する[2007年12月26日]
  4. Step4.ビジネスからシステムへ エンタプライズ・アーキテクチャ[2007年12月26日]
  5. Step5.IT化を推進する道筋 ― システムのライフサイクル[2008年01月18日]
  6. Step6.さまざまなシステム導入方法 ― カスタム開発、パッケージ[2008年02月22日]
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