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経営!一歩前へ!


対外関係における問題解決のカギ

アジア歴史資料センターと日本外交の歩み

海洋資源問題が表面化し、竹島や尖閣諸島の領有権問題が近隣諸国との関係で波紋をよんでいます。また、夏になると過去の戦争の惨禍とともに「歴史認識」の問題も対外関係で浮き上がることもあります。こうした問題をめぐる論争の解決のカギはあるのでしょうか。

近隣諸国が叫ぶ「領有権」問題――原因は日本外交の"弱腰"?

島根県の日本海側にある竹島の領有をめぐり、韓国政府と国民が「日本の教科書がおかしな記述をしている」と大きな抗議の声をあげました。また、米政府は、韓国政府の要求で、自国でつくった地図に竹島のことを「領有権について争いがある」としていた記載を「韓国領」と変更することにしました。当時のブッシュ大統領が明らかにした理由は、「韓国は友好国として重要である」ということでした。

竹島は、韓国の軍隊が占領してしまっていますが、一方、台湾と我が国の境界近くにあり我が国が実行支配している尖閣諸島についても、中国と台湾が「自国の領土」だと主張しています。竹島、尖閣諸島の両方について、中国や韓国などにもいい分があるでしょうが、筆者としては歴史的な経緯を検討して我が国が主張する領有権の根拠は正しいものと確信しています。

ロシアとの間の北方領土問題もそうですが、近隣諸国との間の領有をめぐる論争はその根拠を周辺の住民の活動をふまえた長い歴史的経緯に求めなくてはなりません。その点では、かつて中国と日本、あるいは韓国や北朝鮮と日本との間で官民の両分野において論争になった戦争をめぐる「歴史問題」も似たような性格を持っています。

しかし、こんなに日本がとやかくいわれ続けるのは、日本外交が"弱腰"だからでしょうか。筆者は、決してそんなものではないと考えます。


営々と積み上げた努力の成果=アジア歴史資料センター

外交問題の論争は、声を大きくして自分の主張を叫び続けたり、ともかく強硬な姿勢ばかり示してみたりしても本質的に解決しません。むしろ、そうした態度をとるのは、自分の主張に確固とした根拠がないためだということになります。実際、外交の歴史を見ると、巨大な軍事力を背景に何でもできた時代ならとにかく、「戦争を起こすことは犯罪」とみなされるようになった第二次世界大戦後には、声高く主張しても領土問題や相互にぶつかる国益の調整ができた試しはありませんでした。

大事なのは、歴史的事実の積み上げに基づく冷静な検討です。日本外交は、過去、多くの国民から"弱腰"と批判されつつも、「問題の解決は、歴史的経緯を検討することで得られる」との姿勢でのぞみ、中国、韓国に対して「両国による共同研究の推進」をよびかけました。そして、口でいうばかりでなく、自ら保持する資料をどの国の研究者でも容易に利用できるよう時間をかけて整備をすすめてきました。その成果が、国立公文書館が運営するアジア歴史資料センターなのです。

アジア歴史資料センターは、日本の代表的な公的歴史文書保存機関である国立公文書館、外交史料館、国立国会図書館、防衛図書館などに所蔵されている公文書をほぼ完全にデジタル情報化し、インターネットを通じて誰でも検索して必要な文書を閲覧したり複写できるようなサービスを提供しています。もちろん、英語でもアクセスできます。

これができた経過は、1994年の村山内閣までさかのぼります。同年8月31日、村山富市総理は翌年の戦後50周年を記念して「平和友好交流計画」に関する談話を発表し、この計画の中で「かねてからその必要性が指摘されているアジア歴史資料センターの設立についても検討していきたい」と言及しました。

その後、学識経験者15名からなる有識者会議で具体化が検討され、1995年6月30日に「日本とアジア近隣諸国等との間の近現代史に関する資料及び資料情報を、幅広く、片寄りなく収集し、これを内外の研究者をはじめ広く一般に提供すること」を基本的な目的とするセンターの設立が提言されました。

1999年11月30日に「アジア歴史資料整備事業」の一環として国の諸機関が保存公開している「アジア歴史資料」についてインターネットを通じて提供することが閣議決定され、センターは、国立公文書館の組織として2001年11月30日に開設されたのです。

みなさんも同センターにアクセスして何かのキーワード、例えば「尖閣諸島」などを使って検索してみてください。様々な歴史的公文書を画像やデータで直接閲覧することができますよ。膨大な歴史資料が、なみなみならぬ努力でデジタル情報化され、手軽に利用できるようになったのです。

根拠のある主張のつよさ
  =事実の地道な積み上げにまさる道はない

筆者は、中国政府機関の視察団をアジア歴史資料センターに案内し、利用方法の説明をいっしょに受けたことがあります。同行した中国の歴史学者の方は、大変おどろかれて、こんな感想を述べていました。

「これだけの資料が本当にインターネットで利用できるようになったことは、かつてない。中国も実際は戦後も続いた内戦などのため、歴史資料の多くが失われてしまっている。今後、両国で共通の課題に向かうとき、大きな財産になるに違いない」

これは2005年のことですが、あれから中国の歴史博物館における戦争展示の内容は変更されてきています。感情的に「日本の残虐な侵略被害」を主張するだけのものは、かなり減りました。

また、2007年は竹島をめぐる日韓両国の外交事務レベル協議で、日本側が「国際的な司法機関の仲裁も得て、歴史的に検討しよう」とよびかけたことに対し、韓国側はこれを拒絶することができませんでした。

もし、韓国が確固たる根拠をもとに、「独島(竹島)は、韓国領だ」と自信を持っているなら、こんな提案にのってくる必要はありません。弱みがあるから、フラフラするのです。日本側がこれまで努力して積み上げた客観的な資料に基づく主張や提案が静かな力強さを発揮しているのです。

残念ながら、かつて中国や韓国が日本との首脳会談で合意した「歴史の共同研究」については、相手国側から具体的な動きがまだありません。準備した日本側は、相手待ち状態です。韓国は、2007年の外交事務レベル同意を急に棚上げしてしまっています。

筆者は、日本外交もまだまだ努力が十分だとは思っていません。しかし、日本人らしい几帳面さで歴史資料を積み上げたことは、今後さまざまな交渉や論争を前進させていくうえで、強固な土台を築いたことになると考え、見通しは明るいと感じています。ぜひ、広く日本国民がこの到達を理解し、国民全体の後押しとなる世論づくりもしていかなくてはなりません。

私たちも、仕事を進める上で短期的な成果とともに長期的に大きな根本的利益、戦略的な勝利をかちとるためには、地道にデータを積み上げ活用できるようにすることの大事さを学びたいものです。


掲載日:2010年8月 2日

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