中小企業とSDGs

持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年9月の国連サミットで採択された17のゴールと169のターゲットからなる16年から30年までの国際目標だ。日本政府もSDGs達成を通じた中小企業などの企業価値向上や競争力強化に取り組んでいる。
国の機関や専門コンサルタントの活動およびSDGs達成に貢献している中小企業などの先進事例を紹介する。

第6回:飲み水の安全を世界へ広げたい【株式会社ツチヨシ アクティ】

将来ビジョンを語る九十九社長

ある日、上司に命じられた。「川口へ行ってこい」どこにあるかと聞けば埼玉県だという。高温で溶かした金属を、砂などで作った型の空洞部分に流し込み、冷やし固める「鋳物(いもの)」の街である。車に布団とテレビを積み込み、四国から営業に向かった。セールスに飛び込んだ先には全身真っ黒、腕1本で鋳物を作る職人たちが待っていた

「もう40年前。西日本とは言葉も商売のスタイルも違うからずいぶん鍛えられた。それでも、売ったら終わりという商売はしなかったから、かわいがってくれるお客様が増えて繋がっていった。お客様を大事にして信頼を得て、商売をするのが創業以来のうちのスタンス」と九十九(つくも)利明さん。鋳物の型になる砂や土などの資材を扱うツチヨシ(香川県東かがわ市)の7代目社長である。

目次

リサイクルを積極化

砂の荷卸し作業

同社の創業者、九十九芳信(よしのぶ)氏は高松で徳島産の材木の商いをしていたが、小豆島で「真土」(まね)に出会う。粘土と土、砂がうまくブレンドされた鋳型(いがた)に適した土だった。鋳造関連製品の研究・開発に携わる"ヨシノブのツチ"こと「ツチヨシ」の商売は1933年、この土の採掘と販売から始まった。

スタートは良かった。高度経済成長にともない、あちこちで鋳物をはじめ建築など砂の需要が高まり社業も好調だった。だが、やがて円高などを背景に車などの工場が海外へ移転し、部品を生産する鋳物工場も海外に出て行ってしまう。車や飛行機の軽量化が求められるようになり、部品自体も鉄の鋳物から樹脂や炭素繊維に置き換わることが多くなった。ピーク時に年間約500万トンあった鋳物の生産量はいま、約350万トンである。

ただ、多くの産業から生まれる金属スクラップやダライ粉などを材料として利用する鋳造業界では自ずとリサイクルが実施されていた。さらに1980年代からの環境意識の高まりで、鋳型に使用した砂を再生利用しようという動きも広がった。九十九社長は「今や99%がリサイクル。熱や圧力で細かくなったものは集塵機で処理しているが、それ以外の粗い砂は再利用するのが業界の常識。うちも積極的に取り組んでいます」と話す。

好例が浄水場のろ過砂だろう。山に降った雨は川となり流れ出るが、この水には重金属、砒素、鉄、マンガンなど多様な物質が微量含まれている。上流に工場などがあればなおさらだ。こうした不純物を取り除くため、浄水場では無煙炭や活性炭を重ね、一番上に粒子の細かいろ過砂を敷いて、上から水を通して二重、三重にろ過している。

同社は近隣の浄水場に水質改善用のろ過砂を年に約3000トン供給しているが、ろ過するうちに汚れる砂を定期的に新しい砂に取り替えている。使用済みの砂は再度ろ過砂に加工、あるいは園芸用、テニスコート、サッカーグラウンドや野球場の乾燥砂などにリサイクルする。九十九社長は「昔は使ったら全部捨てていたが、リサイクルすればコストが抑えられ、産業廃棄物も出ない」と胸を張る。

将来は「水道から飲み水が出るという日本では当たり前のことを海外にも広げ、園芸やスポーツに関わる環境を整えることで多くの人に有意義な時間を提供し、健康意識を高めて行きたい」という。日本のような水環境をすぐに整えることは困難かもしれないが、少しずつ綺麗な水を循環させることで、より安全な世界に近づくと考えているからだ。「安全な水とトイレを世界中に」はSDGsの17のゴールのひとつでもある。いずれは飲み水の安全確保に向けたコンサルタント、コンシェルジュとなって、CSR(企業の社会的責任)を果たすグローカル企業になるのが目標だ。

人財育成で地域に貢献も

様々な砂を多様な用途に提供している

SDGs推進へ向けた同社の取り組みはほかにもある。20台ある社用車をまずは燃費効率の良いHV(ハイブリッド)車に変えている。オフィスのペーパーレス化や工場のLED化も進んだ。BCP(事業継続計画)を盛り込んだ拠点づくりはもとより、ユニバーサルデザインを取り入れ多様性を受け入れる働きやすい職場づくりを目指している。

国境なき医師団、日本赤十字社、ユニセフに寄付もしている。フィットネスクラブの利用料を補助し、本社と8つの拠点で働く80人の従業員は余暇に運動を楽しめる環境にある。従業員向けに鋳造カレッジやSIY(Search Inside Yourself)をはじめとする各種教育の提供や資格取得支援も積極的に行っている。多くの関わりのなかで人間力を磨き、会社や地域を豊かにする人財になってほしいからだ。

「うちが扱う砂は、壁、セメント、ガラスとあらゆるところに使われている。砂は超微粉から砂利までサイズや成分も違い、色々な使い方ができる。砂がなかったらどうするんだと、最近になってようやく気がついた。できる限りリサイクルして、砂をはじめとする商品を提供し、アイデアを形にしていきたい」と語る九十九社長はいま65歳。株式会社ツチヨシ アクティは来年、設立20周年を迎える。

企業データ

株式会社ツチヨシ アクティ
所在地:香川県東かがわ市大内200番地16
電話:0879-23-1771
代表取締役社長:九十九 利明氏
創業:1933年3月
設立:2000年12月
資本金:4000万円
従業員:80人
事業内容:鋳造用原料・副資材の製造販売、鋳造用・建設用機材販売
URL:http://www.tyco-acty.co.jp/