中小企業とSDGs

持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年9月の国連サミットで採択された17のゴールと169のターゲットからなる16年から30年までの国際目標だ。日本政府もSDGs達成を通じた中小企業などの企業価値向上や競争力強化に取り組んでいる。
国の機関や専門コンサルタントの活動およびSDGs達成に貢献している中小企業などの先進事例を紹介する。

第4回:未使用から未来使用へ アップサイクルプロジェクトを推進【Team & AMA RE】

大山直美代表

大山直美さんは1973年2月生まれの46歳。大分市の鉄スクラップリサイクルを中心とする大山金属の社長令嬢として生まれ育つ。兄、姉、弟。4人兄弟の3番目。立教大学文学部を卒業後、東京で会社勤めをした後に帰郷した。

目次

奨励賞受賞を機に

PVCの端材(左)がブックマークに生まれ変わるまで

1999年11月、大山金属の子会社「大分エコセンター株式会社」の代表取締役に就任。廃材や端材など産業廃棄物の処理をする同社で、再資源化や適正処理などのマネジメントをしていたが、次第に「使用済みの素材や未利用なのに廃棄される素材を延命させ、使えるようにすることはできないか」と考え始めた。環境先進国で進められている「アップサイクル」という概念だ。本業の傍ら研究を進め2014年、第11回大分県ビジネスプラングランプリで廃棄対象になってしまう素材の「余り」を有用な資源と捉え、二次製品化やワークショップをプロデュースする「Team(The eco-alliance museum)」構想を発表したところ、奨励賞を受賞した。

それが契機になった。構想を実現するため大分県工業振興課の認定事業として17年10月に「未使用から未来使用へ」をコンセプトにアップサイクルブランド「AMA RE」を立ち上げ、企画・製作・販売のディレクション(総指揮)に着手。クリエイターや加工業者と連携し、メーカーの製造過程で余ったカラー段ボールやウエットスーツ生地の端切れからアクセサリーや雑貨を生み出した。

製品販売のほか、端材で作った楽器でミニセッションをしたり、夏休みの子供のためにワークショップをしたり。地域の多様な人々が「エコ」を共通理念に集まり、学び、発信しあうイベントを実施。近隣の立命館アジア太平洋大学(APU)の教授やインターンとの共同講義やコラボレーションも進めている。スタッフは5人。ほとんど地元の女性だが「リサイクルを学びたい」とAPUの留学生らも参画している。

端材に付加価値を

節のある杉の端材もお洒落な表札に

アップサイクルのプロダクトアウトは試行錯誤の連続だ。「製造業は産廃物を出したいわけではないが、日々の業務のなかでお金も人手もかけられない。産廃物は再資源化が難しいものも多いし、再利用するには既存の方法以外のマネジメントが必要だ」という。

たとえばポリ塩化ビニル(PVC)。塩化ビニルの重合反応で得られる合成樹脂で、難燃性、耐久性、耐油性に優れ、雨どいから文房具まで広く用いられている素材だが、大量に使われているということは大量に廃棄されるということでもある。大分県の有力企業からもピンク色のPVCの端切れが継続的に出ていた。このピンクのPVCを使って同社が新本社完成記念に配るノベルティ(記念品)を作れないかと持ちかけられた。

ここで大山さんは考えた。「AMAREのはじめのデザインでは端材から主にアクセサリーを作ったが、それにはゴムや金具など新たな部素材を付加しなくてはならない。できるだけオリジナルの端材だけで作れないか」

挑戦が始まった。企業のロゴマークを印刷すれば、新たにインクを使ってしまう。デザイナーが「ロゴを型押しすればいい」とアイデアを出した。企業側から「子供から大人まで多くの見学者に使ってもらえるものがいい」と意見が出た。大山さんは「ブックマーク(栞)なら性別・年齢問わず使える。質感の高いデザインにしては」と提案した。

こうしてPVCの端材から生まれ変わった豪華なブックマークは今年5月中旬、無事に記念品として納品された。「完成まで半年ほどかかりましたが、みんなが納得するプロダクトを生み出すためにアップデートしていく過程が楽しかった」と振り返る。

端材に付加価値を付ける取組みを通して製造業自らが「あ、これ使えるのか」と気が付くおまけもある。今まで産廃処理に出していたウレタン樹脂の切れ端を二次製品に利用できないかと考えるようになった経営者が出てきたという。

将来展望

工房兼オフィスでは製品の展示販売も。ウェットスーツの端材で作ったバッグやアクセサリーとともに

アップサイクルしたい端材は無限にある。大分は日田杉を用いた家具製造業が多く、杉板の端材が出る。多くはかまぼこ板に利用されるが、節のある部分は切り落とされてしまう。木工所に頼んで表札や展示販売用の什器に生まれ変わらせた。工務店が使うカーテンや絨毯など布地の見本帳も同じだ。高級で良質な小布なのに2~3年でリニューアルされ廃棄される。縫製専門家につなぎ合わせてもらったら、ホテルの客室などのアクセントにぴったりの壁飾りになった。端材が発生する事業者から「うちもどうにかならないか」とたくさん依頼が来るが「人も時間もお金も足りない」のが悩みだ。

ただ、大山さんはプロダクトアウトだけで食べていこうとは思っていない。2018年1月、「大分県3Rアイディアコンテスト」で、プロダクトアウト構想を一歩進め、端材を産業廃棄物にせずに「素材」として取引することで価値の転換を図り経済に寄与するビジネスモデル構想を提案してグランプリを受賞。同年10月に大分エコセンター社長を辞任し、今年4月から同構想を実施する「Team & AMA RE」を立ち上げた。

大分県循環社会推進課の認定を受け、端材を「素材」として事業者同士が取引出来るマッチングプラットフォームサイト「アップサイクリンク(Upcyclink)」を開発。WEB上でアップサイクル・サービスを提供し、国内外に発信している。「産業界の廃棄物は製造業や処理業者だけでなく、需要側も含め社会全体で担う必要がある。将来は事業者間だけでなく、将来は消費者も参加できるようにしたい」。夢の翼は広がるばかりだ。

企業データ

Team & AMA RE(チーム・アンド・アマリ)
所在地:大分県大分市三芳1237
電話:097-576-7772
代表:大山直美氏
設立:2019年4月
従業員:5人
事業概要:アップサイクルの企画および製品開発と販売・普及啓発事業
URL:https://www.instagram.com/team_ring/