J-Net21レポート

03.企業と一緒に「考える」 専門家継続派遣事業

第2回では「専門家継続派遣事業」の支援の流れから、支援の特徴をご紹介しました。
  今回は、具体的な支援の手段・方法についてもお話をうかがいます。

自立を支える支援の手法

J-Net21編集部(以下J-Net):半年から1年というのは、支援の期間としてとても短いと感じます。なので、その期間のなかで成果が出る支援というのは、いったいどういう支援なのだろうかと思ったのです。具体的にどういう手法で支援されているのでしょうか?しかも、注意として、「企業の実務や取引先等の斡旋を行うものではありません。」(※1)ということが書いてありますよね。支援と斡旋の違いも含め、どういったことが行われるのでしょうか?

中小機構関東 経営支援部 斎藤統括プロジェクトマネージャー

中小機構関東 経営支援部
斎藤統括プロジェクトマネージャー

斎藤統括プロジェクトマネージャー(以下 斎藤):例えば、新製品の開発を例にしても、実際に販売を手がけるまでにはしなければならないことはたくさんあります。
  どういう人たちに購入してもらいたいのか、ターゲットを明確にする。例えば、そのターゲットもどういうシーンで使うのか、そのターゲットにおけるニーズや、マーケットの動向を調べることも必要ですよね。そうすると、現製品では適応しない場合もある。そうすると製品も改善しなければいけませんね。また、製品を納得してもらい、理解してもらって購入製品を試験して根拠のあるデータを出すことも必要になってきます。(※2)

J-Net:そうしたことの最終過程として、企業にアプローチするという段階まできますよね。そこでの支援はどういった形になるのでしょうか?

斎藤:こういう企業にアプローチをかけてはどうだろうなど、ターゲットになる企業の探し方をレクチャーするといったことですね。われわれが行なうのは、あくまでも新製品の開発から製造、販売のプロセスの中の課題解決や方向付けのアドバイスであって、実際に開発・製造・販売を行うのは企業なんですよ。

J-Net:なるほど。
  でも、「自分で考えて、解決策を導き出して、実行する」という姿勢というのは、なかなかできないし、身につけるのは本当に難しい気がします。どうやったらそういうことができるようになるのでしょうか?

自立への一歩は「気づき」から

斎藤:例えば、具体的なこととして、新製品の販売ならば、社内に蓄積されているデータをある視点でまとめなおしたり、組みなおしたりして別のデータを作成してくださいといった宿題を出します。そうすると、どういう製品がいつ売れているのか、どういうところで売れているのかということが、数字として明らかになってくる。感覚的にわかっていることが、目に見えて理解できるようになるわけです。

J-Net:「気づき」を導いて支えるということですね。これは楽しいでしょうね。自分が今まで当たり前だと思っていた業務の中から、新たな「発見」があるわけですから。

斎藤:一般に「見える化」とよばれることですが、具体的であることによって次の方策が出てくるのです。わたしはこれを「気づいて」「学んで」「行動せよ」と言っています。
  もちろん、これは、初歩的な宿題であって、その先にある課題解決が最終の目標ですけれどもね。

J-Net:アドバイスと宿題を通じて「気づいて」「自分で考えて」「次の方策を立てる」ということを繰り返すことで、気がついたらそういう自立的な姿勢が身につくというわけですね。しかも、それを続けていった先には大きな課題も解決できる、と。
  それにしても、継続は力なりではありませんが、そうした地道な取り組みを続けていくということは受ける企業もそうですが、支援する側も随分粘り強いですよね。
  どういった方が、PMや専門家として活躍されているのでしょうか?

斎藤:わたしは、コンサルタント出身なのですが、そうですね、わたしの特徴は「社長の気持ちがわかる」ということでしょうか。わたしは、いくつも会社を立ち上げては潰していますから。(笑)会社を立ち上げたはいいけれど、一人やめ、二人やめ、気がついたら社員が半分になっていたこともあります。なので「どうしてこういうことになるんだ!」という社長の気持ちはわかるんですよね。

J-Net:よく、社長というものは孤独なのだと言われますけれど、だからこそ、なおのことPMや専門家という立場で、企業に寄り添い、一緒に考え、ときに厳しくもあるアドバイスをもらえるのは本当に必要なのではないかと思います。
  もっと形式ばった支援を想像していたのですが、いい意味で、人間くさい支援ですね。
  それに、こんなに短期間で成果が出るのであれば、もっと企業にこの制度を活用してもらいたいですね。やっぱりもっと早い段階で、悩みも含めて中小機構に相談いただければ、専門家継続派遣事業に限らず、その成長ステージにあった、また、課題に適した支援をご紹介できますものね。

斎藤:本当にそうなんですよ。もっと活用していただきたいですね。

J-Net:今日は、長時間ありがとうございました。

取材を終えて

  今回、専門家継続派遣事業のお話から思ったこと。この支援のキーワードは、「粘り強く寄り添う」ということと「客観性」なのではないか、と。
  ただし、この2つを両立させることは、とても難しい。
  「粘り強く寄り添わ」なければ、企業にとっての真の課題は抽出できないだろう。しかし、これが「寄り添う」のではなく、入り込みすぎてしまった場合は「客観性」に乏しくなってしまう。
  いかに、「客観性」を保持しつつ、「粘り強く寄り添う」か。
短期間で成果が出る理由は、会社の取り組み姿勢もさることながら、支援する側の、この2つのバランスがとれた支援の結果なのではないかと思う。
  斎藤PMは、この専門家継続派遣事業を、「愛」と「魂」と「志」の支援と称しておられた。たしかに、公的機関がここまでできるというのは驚きである。いや、まさに中小企業の事業環境や経営基盤を整備しようとしている公的機関だからこそ、ここまでできるのかもしれない。「中小企業施策の実施機関ではなく、中小企業と一緒に「考える」機関として」という理事長の言葉が、この事業で実現されているのだとあらためて感じた次第である。

関連情報

※1 専門家継続派遣事業 目的と特徴(中小機構/経営相談・支援)

※2 具体的な、ハンズオンの事例については、こちらをご覧ください。
ハンズオン支援事例集

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