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施策活用企業事例
     
 

経営の活路を拓く ―支援センターの有効活用―


 事業の経営は、市場のニーズと自社の技術を結合させる活動である。従って、変化するニーズと進化する技術の双方に的確に対応しなければ生き残れない。そのうえ、他社との競合に打ち勝つため、他社との同質性を脱し、自社の「違い」をアピールしなければならない。それ故、絶えず新たな経営課題が発生し、常に迅速な解決が要求される。

 ところで、改善が必要な経営課題は、経営機能ごとに発生する。即ち、1. 製品・技術、2. 生産過程、3. 流通・販売、および、4. 経営方式のそれぞれについて革新(イノベーション)を追究することになる。一方、その具体的な解決は、経営資源ごとに実行される。即ち、1. ひと、2. もの、3. かね、および、4.情報のそれぞれについて弱点を強化することになる。但し、ひとつの経営課題に複数の経営資源が関係する場合や、複数の経営課題が相互に関連して同時に発生することも多い。

 支援センターは、こうした様々な経営課題に対し、利用者が「ここに来ればどんな支援でもアクセスできる」拠点(ワンストップ・サービス)として整備されている。そこでは、経営診断、資金調達、人材育成、技術指導、情報提供、取引斡旋など、分野を問わずに相談できる。他の関連機関や民間の専門家を含めて、必要な支援が調整(コーディネート)されて提供される。創業開設から、商品開発、取引開拓、経営改善、事業拡大への過程において、どの段階からでも、その事業が確立し安定するまで、一貫した支援を受けられる。

 まず、活用事例を通して、経営資源ごとに、利用されている主な支援策を見てみよう。経営課題の解決にあたっては、その課題にとって問題となっている経営資源について、支援施策とされている制度を選択し、組み合わせて活用することになる。

 『ひと』については、必要な知識・技術を持つ人材を一定期間充足できるという意味で
「専門家派遣制度」が代表的である。同様に、「窓口相談」も人的メリットが大きい。(製品・技術の「事業可能性評価制度」も人的メリットが大きい)

 『もの』については、インキュベーション施設をはじめとする公的施設・設備の「公的貸与制度」がある。(生産過程に関しては「設備貸与制度」「設備資金貸付制度」がある)

  『かね』については、中小企業創造活動促進法、中小企業経営革新支援法、新事業創出促進法などにもとづく「補助金制度」ないし「融資制度」のほか、それぞれの都道府県で独自の制度がある。また、公的機構よりの直接投資の道もある。

 『情報』につては、日常的なデータから取引マッチング情報まで、各種「情報サービス」がある。(流通・販売に資する「展示会・商談会」なども取引情報を目的とする)

それでは、活用事例にもとづき、経営機能ごとに、経営課題への取り組み態様を見ていこう。あらゆるケースにおいて、支援センター活用の意義が明らかになる。

(1) 製品・技術(プロダクト・イノベーション)
  この分野の経営課題は「製品・技術の開発・改良」であり、採り上げられた事例の中で最も多くを占めている。言うまでもなく、ハード(有形物)に限らず、ソフト(システムやサービスなど)も対象になる。また、これらの製品・技術を市場に通用するようにする「商品化」と、これらをもとに事業を創出する「事業化」に関する課題も含まれる。
利用されている制度で目立つのは次の2項であり、両者を併用する事例も多い。
  1. 専門家派遣制度
民間の専門家が直接企業の現場に出向き、アドバイスや実地指導を行なう制度。
「製品・技術の開発・改良」および「商品化」では技術士・ITコーディネーター・デザイナー・弁理士等、「事業化」については中小企業診断士、社会保険労務士・公認会計士・税理士等の派遣を受け、サポートを得ている。大学教授の派遣によって新工法を開発した例や工学博士の派遣によって科学的効用を実証した例のほか、社内の新製品提案制度制定について実業界経験者の指導を受けた例などもある。
  2.

事業可能性評価制度
事業可能性評価委員会により、シーズの有望性、技術の先進性、ノウハウの独自性、事業の発展性などを検証し、「事業化」の可能性を評価する制度。
この評価を得る過程で、ニーズ調査、ビジネスプラン作成、プレゼンテーション準備等にわたり支援を受けている。この評価を得た結果、信用保証協会の保証枠を背景に銀行融資を受けた例をはじめ、知名度・信用度アップ、事業資金導入、人材確保、販路開拓に結びつけている例が多い。

  更に、「技術開発・改良」に際し、支援センターの紹介を介して、公設試験センター・産業技術センター等公設試験研究機関の利用が盛んである。また、公的機関とのコネクションができたケースとして、産学官共同研究や国立大学との共同研究、知的所有権センターでのパテント相談などがあり、事業化に際して公設インキュベーション施設へ入居する例も散見される。
 
なお、「資金調達」に関しては、中小企業創造活動促進法、中小企業経営革新支援法、新事業創出促進法などにもとづく補助金・助成金ないし融資のほか、ベンチャー財団による株式・社債への直接・間接投資や、それぞれの都道府県が制定した独自の制度によっても支援されている。
(2) 生産過程(プロセス・イノベーション)
  この分野には、仕入管理・資材管理・工程管理・品質管理等に関する改善課題が属する。採り上げられた事例は比較的少ないが、相談を受けて支援するケースは多いと思われる。事例に見る課題では、「機械設備の導入」と「生産過程の合理化・効率化」が多くを占めている。
「機械設備の導入」については、小規模企業(原則として従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)の場合、次の2項の利用が見られる。
  1. 設備貸与制度
希望する機械設備を財団が購入し、長期・低利で割賦販売またはリースする制度。
  2. 設備資金貸付制度
機械設備の設置に必要な資金の2分の1以内を長期・無利子で融資する制度。
小規模企業の規準を超える企業の場合では、中小企業経営革新支援法等にもとづく設備資金支援(補助金・融資など)を受け、ほとんどがその際にビジネスプラン作成を含む申請手続きの支援を受けている。また、中小企業創造活動促進法での認定を前提に、創造的中小企業創出支援事業の対象企業に選定され、ベンチャーキャピタルより社債の引受けを得て設備資金を導入した例もある。
  「生産過程の合理化・効率化」については、前項でふれた専門家派遣制度を利用して、課題に応じた専門家の支援を得ている。その対象も、生産過程そのものに限られず、消費者保護や環境保全など社会的責任の分野に広がる傾向にある。
派遣される専門家は、技術士のほかに、品質ISO認定の取得に係る専門家、省エネの推進に係る専門家、原価計算システムの開発に係る専門家など多岐にわたる。
大手自動車メーカー出身者による野菜加工過程の見直し、同じくトヨタ生産方式導入による生産性向上など、異業種の専門家によって改善が図られた例も興味深い。
専門家の指導を通じ、生産管理の向上から企業再生に結びつけた例は圧巻でもある。
また、NCオペレーターの採用を、雇用安定センターと連携したサポートによって実現できた例もある。
(3) 流通・販売(マーケティング・イノベーション)
  この分野は、顧客管理、販売管理、在庫管理・流通管理、および、販路開拓に関する改善課題が該当する。
採り上げられた事例のなかでもかなり多いが、その大半は販路開拓に関するものである。具体的には、「展示会・商談会」「顧客紹介・取引斡旋」「マスコミ報道への紹介」などが目立つ。先にふれた事業可能性評価制度の評価を得たうえで、展示会に出展し、商談会に臨み、マスコミ報道も寄与して取引に結びついた例のように、評価を申し込む段階から一連の流れを通して支援を得ているケースが多い。
また、首都圏への進出を、東京で開催される展示会・商談会に参加する機会を得て成し遂げた例など、市場拡大を実現したケースも散見される。更に、支援センターの支援を得ながら、地域でまとまって海外へ情報発信をしている異業種交流会の例もある。

この分野でも、該当する改善課題に応じて、専門家派遣制度や公的機関サービスによる専門知識の活用がある。その専門家も、顧客管理システム開発のためにITコーディネーター、インターネット通販確立のために同システム経験者、CS(顧客満足)向上のためにコンビニ・マネジメント経験者、中国への拡販のためにJETRO担当者など、やはり多岐にわたる。
支援センター相談窓口の利用も盛んで、ライセンス(特許実施権)ビジネスをめぐり特許流通アドバイザーやビジネスサポーターの支援を得るまでに発展した例もある。
なお、マーケットリサーチ(市場調査)に資する情報サービスも、広汎なものから日常的なものまで、様々な場面で利用している様子がうかがえる。
(4) 経営方式(マネジメント・イノベーション)
  これまでに見てきた商品とその生産および販売の範疇を越えた、経営全般にわたる改善課題が対象になる。前掲の三者に併せて検討されることも多い。
一般的に利用されているサービスとしては、法律・会計・税務などについて専門的なアドバイスを受ける「窓口相談」、経営ノウハウや経済知識などを習得する「セミナー・講習会」、各種データや情報媒体を入手する「情報提供」がある。

採り上げられた事例では、やはり専門家派遣制度の利用が多い。なかでも、中小企業診断士等による、経営全般にわたる改善計画の策定、営業戦略・財務戦略の立案、経営組織・人事政策のアドバイスなどが目に留る。これらの経営方式に関する課題の解決を直接依頼するケースとともに、事業可能性評価制度や中小企業経営革新支援法の対象企業を目指す申請に伴い、総合的にビジネスプランの作成や事業拡大のアドバイスを受けるケースが目立つ。個別の例では、業務処理のIT化のためにITコーディネーターの例、環境ISO認定取得のために環境マネジメントシステム審査員の例、個人事業から法人化のために法律・会計専門家の例など、様々な内容に及ぶ。

経営相談を経たり資金支援を得て経営再建や企業再生を成し遂げたケースには、カーエアコン修理から車検システム開発に業態転換した例、倒産老舗を元従業員でよみがえらせた例などがあり、感慨深い。

転換期といわれ不透明な時代といわれる今日、時流のスピードは速く、方向も多様である。人的にも資金的にも制約がある中小企業が、こうした時流に独力で対応するには種々の困難が伴う。もとより、経営の主体性と自助努力は不可欠だが、必要に応じて公的機関をはじめとする外部の助言や協力を得るのは賢明な方策である。ぜひ、支援センターを通して外部の経営資源を有効に活用していただきたい。

 
【参 考】
  1. 中小企業創造活動促進法
都道府県知事より研究開発に関する事業計画の承認を受けた場合に、主として研究開発に対し、必要経費の一部補助、債務保証額の拡充、設備投資減税等を行なう。(所定の要件を満たす特定中小企業にも、投資減税や中小企業投資育成会社の投資制度の特例などが適用される)
  2.
中小企業経営革新支援法
国または都道府県知事より、新商品・新サービスの開発・生産・提供などに関する経営革新計画の承認を受けた場合に、その計画に従う事業に対し、経費の一部補助、低利融資、債務保証額の拡充、設備投資減税等を行なう。
  3.
新事業創出促進法
概ね5年以内に株式上場または店頭公開等を目標とし、通商産業局などの認定を受けて、新商品の生産や新サービスの提供などによる新事業分野の開拓を行なう場合に、事業化段階において商法特例の適用や金融支援を行なう。