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中小企業診断士トップランナー訪問

有限会社ワークショップ代表 川口 佐和子さん

取材・文:田中 聡子(中小企業診断士)

現場支援と人材育成を柱に走り続ける
【第2回】独立直後の中小企業診断士たちへ

取材日:2010年4月12日

私も独立したばかりですが、最近では、30代で独立する方も大勢みられるようになりました。独立直後の誰もが気になるであろう疑問点について、お伺いしてみました。

軸を持つ

― 川口先生は35歳で独立されていますが、どのようにして仕事に必要な知識を覚えたり、クライアントさんを増やしたりされたのでしょうか。

知識は、仕事を通じて覚えるものです。販売スキルを売場で覚えるのと同じことです。クライアントさんには申し訳ないのですが、私たちはすべての知識を持っているわけではなく、仕事をしながら学ばせていただくこともたくさんあります。もちろん、コンサルティングフィーをいただいている以上、課題を解消する最大限の努力はすべきですが、特に独立して3~4年目くらいまでは、働きながら得ることのほうが多いはずです。そこを理解せず、机上の学習をどれだけ積み重ねても、現場では役立たないことが多々あるという事実を、覚えておいてほしいですね。

中小企業診断士の資格だけでも、仕事は十分やっていけます。スタートが遅れてしまうほうが、よっぽどもったいない。ほかにも資格を取ってから、というのではなく、実践をいかに踏んでいくかを考えることが大切です。

「仕事が来ない」という悩みを持っている方は、「自分が何の専門家でありたいのか」という軸が不明確なのでしょう。「自分には何がふさわしいのだろう」と考えていても、答えは出ません。それよりも、「何がしたいか」を明確にすることのほうが大切です。経験がなくても、たとえば「IPO(新規株式公開)支援がしたい」とか、「再生支援をどうしてもやりたい」とか。そう思い続け、言い続けていると、それにつながるチャンスに巡り会う機会も増えてきます。そこで出会った仕事は、小さくても、とにかく一生懸命やってみる。そこを突破口にして、切り拓いていくことのくり返しです。

独立したての中小企業診断士で、「これができます」、「これがやりたいです」と言い切れる方が少ないのは、残念ですね。極端かもしれませんが、やりたければウソでもいいから、まずは「できます」と言って、機会を得ることだと思います。3~4年言い続けていれば、それらしい仕事もついてくるものです。

先ほど、「専門家」と言いましたが、たとえば「人事労務ができます」では弱い。その中で、「アセスメントができる」、「キャリアプログラムがつくれる」など、何ができるのかが相手に映像のようにはっきりみえるくらいでないと、細分化したことにはなりませんからね。

"削ぎ落とす"ことも、コンサルタントの必須能力

川口佐和子さん

― 私もつい、あれもこれもと欲張って、さまざまなことに手を出してしまうので、耳が痛いです。

軸とは、自分の信念のようなものです。「誰の、何を幸せにしたいのか」という意味では、理念と言ってもよいでしょう。コンサルティングに入るとき、「経営理念を決めなさい」と言いますよね。開業向けセミナーでも、「事業コンセプトを書きなさい」とか、そういう話をする。では、自分たちは理念を決めていますか、ということです。したいことが多くて迷う気持ちも理解できますが、さまざまなものを削ぎ落とし、必要なものを明確にする力というのは、コンサルタントに欠かせない能力だと思います。

軸が不明確だと、私たちも仕事を依頼しにくいですよね。仕事の依頼方法には、2種類あります。1つ目は、自分のドメインの仕事を一緒にやる、または、自分の持っている仕事を譲る・引き継ぐ場合です。この場合は、私はいくらでもサポートすることが可能です。2つ目は、自分の専門外の案件が来たときに、代わりにやってくださる方を探す場合。この場合は、専門性がはっきりしていて、ある程度、仕事ができる方に依頼することになります。そうすると、「賃金規程ならAさん」、「物流ならBさん」と、初めに名前が浮かんだ方にお願いすることが多くなります。結局は、そこに入れるかどうかです。自分が仕事を誰かに引き継ぐときも、常日頃、一緒に仕事をしたい、と言っている方を思い出すでしょう。

私も、独立当時は、何の実績もありませんでしたし、5年目に初めてクライアントを持つまでは、下請け仕事が多かった。でも、それまでずっと、「小売業のチェーン店の現場支援をしたい」と言い続けました。そうしているうちに、自分の軸にあてはまる仕事が増えてきたのです。

自分で決めた業種の仕事が来るかどうかは、わかりません。でも、軸を持って発信し続けていれば、来た仕事がその軸に合うのかを見極めることが可能です。私はもともと、ジャスコでベビー・子ども用品のバイヤーをしていたこともあり、当初はアパレルやベビー用品を希望していました。実際に依頼されたのは、食品スーパーでしたが、チェーン店という点では同じだったため、バイヤー経験が活かせる、と考えて引き受けることにしました。実際に今まで、いくつかの会社にバイヤー機能やバイヤー機関を導入するお手伝いをしてきています。そこは業種に関係なくできるので、自分の軸とのズレがなかったんですね。現在は、スーパーマーケットだけでなく、アパレル、服飾などの小売チェーンとお仕事をさせていただいています。

コンサルティングですから、1つの会社と永遠にお付き合いすることはなく、当然、終わりは来ます。通常は2~3社、時期によっては4~5社並行して、コンサルティングに入っていますが、一つひとつを乗り切ると、自然と次の仕事が発生してくる、というのが実態でしょう。アウトプットがきちんとしていれば、それが自らの実績やブランドにつながってくるものです。

(つづく)

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川口 佐和子(かわぐち さわこ)
(有)ワークショップ代表取締役。中央大学文学部哲学科心理学専攻卒業。GMS(量販店)でベビー用品・子供服のバイヤーに従事。現在は、食品スーパーチェーン、アパレル・服飾関係の小売チェーンを主なクライントとして、顧問コンサルティングを行っている。また、中小企業の事業再生支援、創業支援にも実績がある。

会社名 有限会社ワークショップ
設立 1997年12月
代表取締役 川口 佐和子
所在地 東京都千代田区神田小川町3-24-1-406
TEL 03-5283-3371
FAX 03-5283-3372