経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

中小企業診断士トップランナー訪問

有限会社アックス代表取締役 山北浩史さん

取材・文:平村 一紀(中小企業診断士)

【第3回】中小企業診断士の担うべき役割

「経営コンサルタント」イコール「中小企業診断士」ではない

ロシアのある州政府との打ち合わせ風景― 経営コンサルタントと中小企業診断士はどのように違うのでしょうか。

「経営コンサルタント」=「中小企業診断士」ではありません。経営コンサルタント業を行うに当たっては、必ずしも中小企業診断士の資格は必要としません。経営コンサルタントと相違して、中小企業診断士は国の政策に沿った中小企業の支援を行う者だと考えています。

たとえば"制度融資"という言葉ひとつをとっても、意外に中小企業の経営者は知らない。『お金は銀行から借りるもの(プロパー)ではないですか?』と聞かれることもあります。政策の啓蒙活動も含めて、中小企業のためにある施策を正しく中小企業に説明する「伝道師」としての役割が中小企業診断士には求められているのです。

「あるべき姿」を伝えることも中小企業診断士の使命と考えております。ある経営者から『この○○という製品を売りたい』と相談を受けたとします。経営コンサルタントであれば、どのような製品でも、売れれば結果的には「良し」と評価されるかもしれません。

しかし、中小企業診断士であれば、「社会性」や「環境」といった観点から、製品の販売を考える必要があります。もし、その製品が公害につながるようなモノであったら『そんな製品を売ってはダメです』と制止することも必要です。つまり、診断士は「売るべき商品」を「売る」お手伝いをするものと考えています。中小企業を正しい方向に導くことが、中小企業診断士の使命のひとつなのです。

― 開業後20年以上を経て、開業当時と現在で異なることはありますか。

1985年に開業してから、今まであっという間でした。未だにこんなスタンスで大丈夫なのだろうかと不安になることもあります。

ただ、開業当時と比べると、見方・考え方は変わってきているように思います。独立したばかりのころは目の前の仕事が重要で、売上や利益ばかりを追いかけていました。しかし、今現在は業界全体の健全なる育成や安定的・継続的発展などを考えることが多くなってきています。その意味では、支援のスタンスが、開業当時より、「より遠く」、かつ「より高い」ところの観点で行っているように感じられます。

時には成功報酬で支援させていただくこともあります。このような場合、支援するに先立ち、経営者に面会し、経営理念や経営に対する姿勢を確認して、本当にモノになるのかどうかという見極めを行った上で、お付き合いをさせていただいております。

24時間365日が「戦闘モード」。サムライには「休息」のための休みはない

― 中小企業診断士が士(サムライ)業として心がけることにはどのようなものがありますか。

サムライである限り24時間365日「戦いモード」となっていることが必要です。サムライには「休息」のための休みはないということを意識していただきたいのです。想像してみてください。サムライは刀を腰から放しても、手元、枕元に置いているではありませんか?

たとえば、あるクライアントのためにコンサルティング活動を行っているとします。たとえ、テレビでお笑い番組を見ていても、また、フロに入っていても、寝ていても、そのクライアントのことを常に考えている。就寝中の夢の中に、経営課題を解決するヒントがあることもあります。その意味では24時間365日、常時仕事モードなのです。また、いつ、どのようなときにでもアンテナを張り巡らす、マインドはオンラインになっていることが不可欠です。

自身の業務の効率化についても同様です。私はよく家電量販店に新製品を見に行きます。その時であっても、「このツールを使えば2時間かかっていた書類作成業務が1時間ですむ」など、自分自身の業務効率化につながるツールであるかどうかという見方を常にもっています。売り場の見方ひとつをとっても、小売業であるクライアントのためという視点を持って見ています。

"休息"とは"働くために必要なもの"です。変な表現ですが、「休みのための休息」は、必要ありません。いわゆる「休息」時であっても、常に、「コンサルティング・スイッチ」が「ON」の状態になっていることが必要です。

楽しく仕事して、お金をいただける、「中小企業診断士」は、私の天職なのです

カザフスタンにて、日本企業とのビジネスマッチングのネタを考慮中

― クライアントへのスタンスとして中小企業診断士に求められるものはどのようなものでしょうか。

クライアントのニーズも時代とともに変化しています。バブル当時は『売上を上げたい』という支援のテーマが主流だったように思います。その後、バブルがはじけてからは経費削減とか、利益確保というテーマが増えてきたように思います。

今では、経費削減がテーマであっても、経費管理のもっと細かいものが求められるケースが多い。

また、クライアントのサポート体制へのニーズも多様化していて夜中に返事が欲しいということもある。このように求められる支援テーマの変化やスピード対応という、高度化・多様化したコンサルティング・ニーズに、的確に対応していくためには、当然、常に提供すべくサービスレベルの向上を図ることが必要です。

また、"歌って踊れる"中小企業診断士であることも重要と考えています。もちろん"歌って踊れる"というのは、本当に歌を歌うとか、踊りを踊るとかという意味ではありません。

クライアントと一緒になって課題解決ができるような雰囲気づくりができること、たとえば、自転車が自分で走り出すまでは、一緒に並走して、補助輪の役割を果たしたり、自転車を押してあげたりすることも必要不可欠です。

"歌って踊れる"というのは、自分の力でクライアントを何とかしてあげようとするのではなくて、一緒になって課題解決していこうとする姿勢のことを意図しています。このスタンスがとても重要なのです。

「属人的なもの」もクライアントと接するときには重要な要素ですね。これだけは誰にも真似することはできません。同じ講演テーマであっても、話し方ひとつで伝わり方が全く異なります。

また、クライアントへの説得力も、誰が言うのかということが大きく左右します。これはマニュアル化できない部分であり、これを知ることが、自身のコンサルティングの強み形成につながるものと思います。

言うまでもありませんが、仕事のベースは「人」と「人」です。その人の「人格」が重要なのだと思います。

これまで、いろいろな業種の経営のお手伝いをさせていただきました。中小企業診断士は、クライアントに対して、言いたいことを言って、それを元に経営活動に取り組んでいただいて、売上が増える。その売上の中から報酬としてコンサルティングフィーがいただける。

クライアントに喜んでいただけて、さらにコンサルタント自身が楽しく仕事してお金をいただける。これは、「労働」、たとえば、時間的拘束、肉体的・精神的苦痛、その対価として給付される「賃金」の性質をもつものではありません。

私にとって、こんなに良い商売はないと思っています。「中小企業診断士」は、私の天職なのです。もっと早くこの資格を知り、取得しておけば良かったのに、と思うことさえあります。

山北 浩史さん:有限会社アックス代表取締役

山北 浩史(やまきた ひろし)/大学卒業後、2年10ヵ月の製薬会社での勤務を経て、1985年経営コンサルタントとしての起業を果たす。1990年中小企業診断士資格を取得、コンサルタント業務の業容拡大を図り、現在に至る。有限会社アックス代表取締役、山北事務所代表、特定非営利活動法人 経済活動支援チーム(NPO-EAST)代表理事、有限責任中間法人 日本中小企業経営支援専門家協会(JPBM)常任理事、経済産業大臣・国土交通大臣委嘱地域中小企業サポーターなどを務める。中小企業診断士、行政書士、商業施設士。

会社名 有限会社アックス
資本金 300万円
所在地 東京都豊島区池袋4-25-12-305
TEL 03-5992-6463
FAX 03-3980-6335
E-mail fwge3483@mb.infoweb.ne.jp