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ストーリーで学ぶ中小企業施策

【第7回】徹底的に使いやすい補助金を目指した 小規模事業者を応援する「小規模事業者持続化補助金」

「補助金の申請は難しい」、「自分たちのような小さな会社には負担が大きい」といった声に国が耳を傾け、「多くの小規模事業者にチャレンジしてもらいたい」との思いで作られた補助金「小規模事業者持続化補助金」が、現在募集受付中です(第1次受付締切:平成27年3月27日(金)、第2次受付締切:平成27年5月27日(水)※いずれも当日消印有効)。今回は、この補助金の概要をストーリー形式で紹介します。

<登場人物>

田中さん(田中猛)
田中さん

田中さん(田中 猛)

48歳、和菓子屋の3代目。見合い結婚した妻と幼稚園児の息子の3人暮らし。商店街の役員を務めるも、最年少の若手で、大先輩たちと若手商店主の意見調整に頭の痛い毎日。経営コンサルタントは理屈屋であまり良い印象がなかったが、5年ほど前から来ている中小企業診断士の佐藤さんと交流するうちに見直している。特技は風船細工、口癖は「何か面白いことない?」。

佐藤さん(佐藤 正)
佐藤さん

佐藤さん(佐藤 正)

40歳、独立診断士。見合い結婚をした妻と2人暮らし。独立直後、先輩診断士から言われて訪問し始めた商店街に通って6年目。冠婚葬祭などに顔を出しながら支援を続け、時間を作っては、関係のできたお店に顔を出している。特技は料理、口癖は「大丈夫、何とかなりますよ」。

佐藤さん(佐藤 正)

「田中さん、お久しぶりです」

田中さん(田中猛)

「あれ、先生。しばらく見ないと思ったら真っ黒になっちゃって、どうしたの?」

佐藤さん(佐藤 正)

「ええ、3ヵ月ばかり、仕事でタイに行っていたんです。現地の中小企業振興の仕事です」

田中さん(田中猛)

「へぇ、先生もいつの間にかインターナショナルなんだねえ。何だか遠い存在になっちまって...(しんみり)」

佐藤さん(佐藤 正)

「田中さんらしくないですね。私は何も変わっていませんよ。私は、この商店街で育ててもらったんですから、ここがホームグラウンドです。今日だって、皆さんに紹介したい補助金の募集が開始されたので、真っ先に紹介しにきたんですよ」

田中さん(田中猛)

「補助金かい。そう言えば、甥っ子の大輝のヤツは、創業のための補助金で先生にお世話になったんだったね。でもあれは、これから商売を始めようって人のためのものだろう?」

佐藤さん(佐藤 正)

「今日紹介する補助金は、田中さんにぜひ使ってもらいたいと思ってるんですよ。その名も『小規模事業者持続化補助金』っていうんです」

田中さん(田中猛)

「でも補助金って、大輝みたいに、まだ世の中に普及していない商売を始める人に対して出るもんで、俺の所みたいな昔ながらの和菓子店じゃ、使えないんだろう? それに、申請書っていうのに、文字をびっしり書かないといけなくて、そのうえ、宝くじに当たるくらいの確率でしかもらえないんだろ? うちにはムリムリ...」

佐藤さん(佐藤 正)

「ええ、たしかにいままでの補助金には、田中さんのおっしゃるような面がありました。しかし、この『小規模事業者持続化補助金』は、そういった皆さんの声を吸い上げて、中小企業庁が作り上げた新しい補助金なんですよ」

田中さん(田中猛)

「新しいって、何がだい? 先生がそこまで言うのなら、ちょっと聞いてみたくなるねぇ」

佐藤さん(佐藤 正)

「この『小規模事業者持続化補助金』は、目新しい事業だけを補助の対象としているのではなく、現在商売をされている方ご自身にとって、売上高向上のための新たな取組み、たとえばお客様の開拓や、新しい売り方の創意工夫なら補助する、という内容なのです」

田中さん(田中猛)

「じゃあ、俺の所でも対象になるってことなのかい? 実はよぅ、先生。さっき、俺らしくないって言ってたじゃないか。あれなんだけどさ、最近は売上が落ちてて、ここ数ヵ月は赤字続きなんだ。うちはもう落ち目なのかなぁ、なんて、最近は虚しくなっちまって...。もっと早い時期に手を打っておけば良かったんだけど、いまではいろいろやりたくても、先立つものもなくてなぁ...」

佐藤さん(佐藤 正)

「ならば、なおさら田中さんには、この補助金を使ってもらいたいです。持続化補助金は、このようなことを補助のイメージとしているのですから。

  • 販促用チラシの作成
  • 販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告)
  • 商談会・見本市への出展
  • 店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良・飲食店の店舗改修を含む)
  • 商品パッケージ(包装)の改良
  • ネット販売システムの構築
  • 移動販売・出張販売
  • 新商品の開発
  • 販促品の製造、調達
田中さん(田中猛)

「おぅ、俺がやりたいことばっかりじゃないか。店舗改装もやりたいし、商品パッケージの改良もしたい。それに、新商品の開発もお願いしたいねぇ。まさに、俺のための補助金みたいだよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「ちょっとちょっと、田中さん。待ってください。補助金というのは、好きな分だけ金額が出るものじゃありません。今回の持続化補助金は、たくさんの小規模事業者の方に使っていただきたいという思いから、全国3万社に対して1社当たり50万円を限度に補助するものです。また、使った経費の全額が補助されるわけでもなくて、経費から消費税を除いた金額の2/3を補助するものなのです」

田中さん(田中猛)

「ってことは、使った金額の消費税と1/3は自分で負担しろってことかい? まぁ、考えてみれば、自腹も切らなきゃ、真剣味も出ないってもんだものな」

佐藤さん(佐藤 正)

「そうですね。つまり、税抜で75万円を使用したら、50万円の補助金が出ます。限度額が50万円ですから、100万円を使っても補助金は50万円です。ただし、60万円の使用の場合は、40万円の補助になります。つまり、「50万円」と「使った経費の2/3」で少ないほうの額が補助金額というわけです」

田中さん(田中猛)

「それでも、2/3をもらえるのはありがたいなぁ。さて、どれをやってみようか」

佐藤さん(佐藤 正)

「この持続化補助金、補助の範囲が非常に広くて、とても使い勝手が良いと思いませんか? ただ、誰でも使えるわけではないんですよ」

田中さん(田中猛)

「ええっ! まさか先生、これだけ期待をさせておいて、いまさらうちは使えないって言うんじゃないでしょうね。それはあまりに殺生ですぜ」

佐藤さん(佐藤 正)

「落ち着いてください、田中さん。この補助金を使えるのは、国が定めた基準で『小規模事業者』と言われる方々なんです。さらに、業種業態によってその定義は異なります。大まかに言いますと、こんな感じになります。

卸売業・小売業 常時使用する従業員の数 5人以下の 会社または個人
飲食業・サービス業
(宿泊業・娯楽業以外)
常時使用する従業員の数 5人以下の
宿泊業・娯楽業 常時使用する従業員の数 20人以下の
製造業、建設業、その他 常時使用する従業員の数 20人以下の


常時使用する従業員には、会社役員(従業員との兼務役員は除く)や個人事業主本人は含みません。また、正社員の労働時間の3/4以下しか働いていない方は、パート社員として、常時使用する従業員の数からは除きます」

田中さん(田中猛)

「うちは和菓子製造小売店で、社員は1人だけだから、小規模事業者ってことですかい。何だよ、驚かせやがって。先生も人が悪いや」

佐藤さん(佐藤 正)

「田中さんが勝手に興奮したんですけど...。ご自身の事業が小規模事業者に該当するかどうかで迷われる方は、後ほど紹介する公募要領の『III 参考資料』に分類表が添付されていますので、確認してみてください」

田中さん(田中猛)

「そっか。安心したところで改めて、1/3を負担してでもやりたいことを考えるか。先生、俺はやっぱり、この『商品パッケージ(包装)の改良』っていうのと『新商品の開発』がやりたいよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「ほぅ。それはまた、どうしてですか?」

田中さん(田中猛)

「いまのうちのお得意さんは、60歳を超えた方が8割を占めているんだ。でも、高齢の方はだんだん甘いモノが食べられなくなってくる。その影響が出始めて、うちも売上が落ちていると思っているんだよ。やっぱり、若い女性にうちの和菓子を食べてもらいたい。でも、彼女たちに話を聞くと、うちの和菓子はかわいくないらしいんだ。どうやら、美味しさ+かわいさを求めているんだよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「それで、パッケージの改良と新商品開発に取り組んで、田中さんの和菓子をかわいくしたいのですね」

田中さん(田中猛)

「うん。かわいいと思ってもらって、一度うちの味を経験してもらえれば、リピーターになってくれると思うんだ。若い子たちって、お芋が好きなんだよ。うちは和菓子の中でも、さつまいもを使ったものが最高にうまいんだ。何せ、長野県の農家さんと専売契約を結んで、特別に甘い品種を作ってもらっているんだから」

佐藤さん(佐藤 正)

「へぇ。さつまいもを作ったお菓子が、田中さんのお店の強みなんですね」

田中さん(田中猛)

「そうさ。でも悲しいことに、かわいいっていう感覚は、俺もかみさんも持ち合わせていないんだ。それで、かわいいものを作れるプロの方に、パッケージと新商品をお願いしたいんだよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「なるほど。そうやって、和菓子をかわいくしたいのですね。わかりました。いまのお話を聞いて、田中さんこそこの持続化補助金にぴったりな方だと、改めて確信しました」

田中さん(田中猛)

「え、何で?」

佐藤さん(佐藤 正)

「この補助金は、小規模事業者が申請さえすれば、誰もが補助を受けられるものではないんです。一番大切なことをやってもらう必要があるんです」

田中さん(田中猛)

「何だい? その一番大切なことって...」

佐藤さん(佐藤 正)

「『経営計画書』をきちんと作成することです。ただ、『チラシを作るお金が必要だ』と申請するのではなく、計画書に基づいて新しい顧客層を得るなど販路獲得を進めることが、補助金交付の条件です。経営計画書がしっかりと作られている申請者が選ばれて、補助金を受けられるのです」

田中さん(田中猛)

「やっぱり難しいんだ...。俺、経営計画書なんて書いたことないもん...」

佐藤さん(佐藤 正)

「難しいことはありませんよ。先ほど田中さんが話してくださったことを書けばいいのです」

田中さん(田中猛)

「え? 俺、何を話したっけ?」

佐藤さん(佐藤 正)

「いまのお店の売上は、どのような方に支えられているのか、ということ。その方々が今後、どのようになっていくのかということ。今後は、どのような顧客層を開拓していきたいかということ。そして、田中さんのお店の強みが何かということ。いまおっしゃっていただいたことを、そのまま経営計画書に書けばいいのです。分量は、A4用紙2枚から、せいぜい多くても4枚ですよ」

田中さん(田中猛)

「そんな内容でいいの?」

佐藤さん(佐藤 正)

「はい。念のため、改めて事業計画の項目を整理しますね。

1.企業概要
 2.顧客ニーズと市場の動向
 3.自社や自社が提供する商品・サービスの強み
 4.経営方針・目標と今後のプラン
 5.補助事業の具体的内容
 6.補助事業の効果

の6点です」

田中さん(田中猛)

「口で言うのは簡単だけど、文章にするっていうのが苦手なんだよなぁ。先生、手伝ってくれよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「いえ、今回はご自身で書いてみましょう。頭の中の思いを、自分で文字に書いて表現することが、一番大切だと私は思うんです。それに、私は明日からまたタイに行かなくてはならなくて...。申し訳ないですけど、お手伝いできないんですよ」

田中さん(田中猛)

「ほら、やっぱり先生、変わっちまったよ。冷てぇなぁ...。あぁ、せっかくやる気になったのに、どうすりゃいいんだよ...」

佐藤さん(佐藤 正)

「田中さん、安心してください。この持続化補助金には、力強い助っ人が存在するんです」

田中さん(田中猛)

「ふん、口では何とでも言えるよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「駅前に商工会さんがあるじゃないですか。そこの経営指導員の方から、アドバイスを受けられるんです」

田中さん(田中猛)

「でも俺、商工会さんの会員じゃないよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「会員であるかないかは関係がありません。小規模事業者の皆さんなら、アドバイスを受けられますから、大丈夫ですよ」

田中さん(田中猛)

「そっか。先生がいないんじゃ心配だけど、先生に頼ってばかりじゃいられないよな。できるだけ自分で書いて、商工会の皆さんにあんまり迷惑をかけないようにするかな。で、その申請書と経営計画書の書類は、どうやって手に入れるんだい?」

佐藤さん(佐藤 正)

「これも、皆さんの地元が商工会さんなのか、商工会議所さんなのかによって違ってきます。商工会さんなら、その都道府県の商工会連合会さんのホームページを訪れてください。そこから、さらに詳しい公募要領や申請フォーマットをダウンロードすることができます。商工会議所の方なら、専用ホームページがありますから、こちらからダウンロードしましょう」

田中さん(田中猛)

「よし、わかった。やってみるよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「どのような観点から審査されるのか、といったことも書かれていますから、ぜひ参考にしてください」

田中さん(田中猛)

「うん。この補助金のこと、商店街の皆にも教えてあげよう。説明するうえで、これだけは忘れるな、ってことはあるかな?」

佐藤さん(佐藤 正)

「採択された後のことを理解しておくことが大切です。つまり、(1)お金が先にポンと渡されるのではなく、あらかじめ対象と定められた種類の経費を支払い、その領収証や証明書類に対して後から補助される『先払い後受取り』であること、(2)事業期間終了後に報告書を提出し、検査に通らなければ補助金は支払われないこと、の2点は理解しておいてください」

田中さん(田中猛)

「それぞれについて、詳しく聞きたいね」

佐藤さん(佐藤 正)

「1つ目の点ですが、公募要領を見ると、『補助対象経費』という項目があって、どのような内容が補助の対象になるのか、ならないのかが細かく決められています。販路開拓に必要な経費であっても、ここで対象になると書かれていなければ、補助の対象にはなりません。経費が支払われる条件は、私なりに整理すると、次の5点が満たされることです。

(1)補助対象経費に指定されている経費であること
 (2)申請時点で、「補助事業の経費明細」で計画すること
 (3)合理的な相手先から物品やサービスを購入し、実際に支払うこと
 (4)請求書や領収書などを保管し、写しを事業終了後に提出すること
 (5)検査で認められること

いままでの補助金は、三者見積が必要だったりしましたが、この持続化補助金は、購入先が中小企業の場合は見積書自体の提出も省略されるなど、ずいぶんと簡素化しているのも特徴なんです」

田中さん(田中猛)

「しっかりと公募要領を読み込んでおかなくちゃな」

佐藤さん(佐藤 正)

「2つ目のポイントは、事業が終わってから、事業の進捗や成果、使用した経費の請求書や領収証をまとめて、完了報告書を事務局に提出します。検査を受けてから初めて補助金が支払われるんです。採択されたらやりっ放しでは、補助金は受けられないんですよ」

田中さん(田中猛)

「後始末も大切ってことだね。国のお金を使わせてもらうんだから、そのあたりは当たり前だよね」

佐藤さん(佐藤 正)

「はい。でも、この完了報告書も、従来の補助金に比べると、ずいぶんと簡単になっています。全部で3~4枚でおさまるんです」

田中さん(田中猛)

「よし、わかった。で、いつまでにどうすればいいんだい? この持続化補助金ってヤツは...」

佐藤さん(佐藤 正)

「では、今回の申請の締切について説明します。しっかりメモをとっておいてくださいね」

田中さん(田中猛)

「おうよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「まず1つ目に、今回の申請の締切は2回あって、第1次締切が平成27年3月27日(金)で、第2次締切が平成27年5月27日(水)となっている、ということです(※いずれも当日消印有効)」

田中さん(田中猛)

「じゃあ、俺は3月27日を狙うよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「頑張ってください。もう1つ大切な点は、申請前に、地元の商工会または商工会議所に申請書を提出して、『事業支援計画書』というものを作成してもらう必要があることです。ですから、締切は先ほど申し上げたとおりですが、その前に、いつまでに申請書を持っていけばいいかを、地元の商工会または商工会議所に確認しておくことが必要です」

田中さん(田中猛)

「締切ギリギリにならないように、商工会さん、商工会議所さんには早めに話をつけておいたほうが良さそうだな」

佐藤さん(佐藤 正)

「そうですね。申請書ができ上がる前でも、先に申請する意思があることをお話しだけはしておいたほうが、後々スムーズでしょうね」

田中さん(田中猛)

「よし、これで俺の店も完全復活だ。多くの若い女性が、和菓子を買いにうちの店に殺到する姿が目に浮かぶぜ」

佐藤さん(佐藤 正)

「もしかして、それがもともとの目的だったんじゃ...。でも、それくらいのほうが、いつもの田中さんらしいですけどね」

田中さん(田中猛)

「ハハハ(笑)」

※ここに掲載されている制度内容は、変更される場合もございます。最新の制度を確認のうえ、お申し込みください。

※筆者からひと言

昨年から始まった小規模事業者持続化補助金。昨年は約1万社への交付でしたが、今年は3万社への交付と大幅に拡大しています。そこには、中小企業庁のある思いがあります。この補助金にトライすることをきっかけに、ぜひ経営計画書の立案にチャレンジしていただきたい、ということです。

自社を取り巻く環境の変化や、自社の強みに目を向けて、今後の対応策を考え、実行する。この補助金は、ただ販売促進活動に対して補助をするのではなく、この一連の取組みを応援するための補助金です。ぜひ、チャレンジしてみてください。

(おわり)

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