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ストーリーで学ぶ中小企業施策

【第6回】女性や若者の地域での起業や、後継者の新分野挑戦を応援する「創業補助金」

国は、中小企業を支援するためにさまざまな施策を提供しています。しかし、施策を利用してほしい中小企業は施策を知らない、理解が不十分であるなどの理由により、活用していないことも多いようです。私たち中小企業診断士には、このような企業に対して施策利用を提案していくことも期待されています。
 そこで今回は、「創業補助金」について、ストーリー形式でわかりやすくお伝えします。

<登場人物>

熊崎さん(熊崎 大輝)
熊崎さん

熊崎さん(熊崎 大輝)

30歳。IT企業に8年間勤務後、退職して現在は、カーシェアリングと商店街の宅配事業を組み合わせた事業で創業を検討中。和菓子屋の田中さんの甥っ子。

田中さん(田中猛)
田中さん

田中さん(田中 猛)

48歳、和菓子屋の3代目。見合い結婚した妻と、幼稚園の息子との3人暮らし。商店街の役員を務めるも、最年少の若手で、大先輩たちと若手商店主の意見調整に頭の痛い毎日。経営コンサルタントは理屈屋で何の役にも立たないと思っていたが、5年くらい前から来ている中小企業診断士の佐藤さんと交流しているうちに、意外と役に立つと見直している。特技は風船細工、口癖は「何か面白いことない?」。

佐藤さん(佐藤 正)
佐藤さん

佐藤さん(佐藤 正)

40歳、独立診断士。見合い結婚した妻と2人暮らし。独立直後、先輩診断士に言われて訪問した商店街に通い始めて6年目。お祭りや冠婚葬祭にも顔を出しながら、支援を続けている。時間を作っては関係のできたお店に顔を出しているが、「子どもはまだか」と言われるのがつらい今日この頃。特技は料理、口癖は「大丈夫、何とかなりますよ」。

中小企業診断士には、さまざまな方から相談が寄せられます。中でも多いのが、創業希望者からの相談です。若い人から高齢者まで、創業を志す多くの方から、日々相談を受けています。今回は、会社を辞めて新しい事業をしたい、そんな若者からの相談です。

中小企業診断士の佐藤さんが商店街を歩いていると、和菓子屋の田中さんに声をかけられます。

田中さん(田中猛)

「先生、ちょっとちょっと」

佐藤さん(佐藤 正)

「出ましたね、田中さんの『ちょっと、ちょっと』。今回はどうしました?」

田中さん(田中猛)

「先日は中川社長の相談、ありがとうございました。中川社長、とっても喜んじゃって、いろいろな所で「佐藤先生は素晴らしい中小企業診断士だ」って、言って回ってますよ。紹介した私も鼻が高いです」

佐藤さん(佐藤 正)

「それは、お役に立てて良かったです。診断士冥利に尽きますよ」

田中さん(田中猛)

「でね、その話を聞きつけた私の甥っ子が、先生にぜひ相談したいって言ってるんですけど...。また、相談に乗ってもらえませんか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「はいはい、経営の相談なら大歓迎ですよ。で、その甥っ子さんの相談というのは、どのような相談なんでしょう?」

田中さん(田中猛)

「大輝っていう30歳になるヤツなんですけどね。近くにいると思うんで、ちょっと話を聞いてやってくださいよ」

田中さんは携帯電話を取り出し、話し始めた。応接席で待っていると、10分くらいでスーツ姿の大輝がやってきた。

田中さん(田中猛)

「先生、こちらが大輝です。私は店に出てますんで、2人きりで話を聞いてやってもらえませんか?」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「はじめまして。熊崎大輝といいます。ITの会社で8年働いていましたが、先月辞めまして...。実は、会社を創ろうと思ってるんです」

佐藤さん(佐藤 正)

「ほう、創業のために退職されたのですね。こうして、若い人が前向きに何かをしようという姿勢は、立派ですね」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「へへへ、そんなに大したもんじゃないんですけど...。照れちゃうな」

佐藤さん(佐藤 正)

「で、私に相談というのは、どのようなことでしょう?」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「実は俺、新しいアイデアを思いついて、それを実現したくて創業することにしたんです。そのアイデアっていうのは、カーシェアリングと商店街の宅配事業を組み合わせたものなんですよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「へぇ、それは面白そうな事業ですね。詳しく聞かせてくださいよ。私は中小企業診断士なので、守秘義務があります。他人に口外することはありません」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「ええ。その辺は、おじさんから佐藤先生は信頼できる先生だって聞いてますから、心配してません。実は、もう事業計画書まで作ってるんです。ちょっと見てもらえませんか?」

大輝は、きれいに作り込まれた事業計画書を佐藤に見せながら、新事業のアイデアを説明し始めた。

佐藤さん(佐藤 正)

「うん、しっかり作り込まれていますね。アイデアも面白い。資金もそれほど必要としないのですね。チャレンジしてみる価値はありそうですね」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「はい。少ない資金でもできるところがポイントなんです。ただ問題があって、その少ない資金ですら、いまの自分にはあまり用意できないのが情けないところでして...。そこで、先生にお願いすれば、何とかなるかもと思ったんです」

佐藤さん(佐藤 正)

「うーん。この内容だったら、『創業補助金』が使えるかもしれないなぁ」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「そうそう、そういう情報を先生に教えてもらいたいんです」

佐藤さん(佐藤 正)

「創業補助金というのは、平成25年の春から始まったばかりの補助金です。すでに2回公募と採択が行われていて、まさにいま、第3回の公募が行われています。平成25年9月19日~12月24日まで募集してるんです」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「それって、どんな補助金なんですか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「地域の需要や雇用を支える事業を興す創業者に対して、創業に必要な費用の3分の2を、200万円を上限に補助するというものです」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「何年間で返せばいいんですか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「補助金というのは、すぐに返す必要はないんですよ。補助した事業が将来、一定以上の収益を生むようになったら、その収益の中から返してもらえればいいんです」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「収益が出るくらいまで成功したら、喜んでお返ししますよ。で、どうすればその補助を受けられるんですか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「補助金を理解するうえで大切なことは、(1)すべての申請者が補助を受けられるのではなく、申請書を提出して、審査を通った方だけが対象になるということ、(2)お金がポンと渡されるのではなく、あらかじめ補助の対象として定められた種類の経費を支払って、その領収証や証明書類に対して後から補助される「先払い後受取り」だということ、(3)事業期間終了後に報告書を提出して、検査に通らなければ補助金は支払われないこと、の3点だと思います」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「それぞれについて詳しく教えてください」

佐藤さん(佐藤 正)

「まず、前記の(1)ですが、事業の内容や計画、応募者の概要、経費の使い道の3つを決められた申請書に記入するところから、補助金の申請はスタートします。この創業補助金では、独創的なビジネスモデルによって、地域の需要や雇用を創出する事業が対象になるんです」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「独創的なビジネスモデルって、どんなものが対象になるんですか」

佐藤さん(佐藤 正)

「先ほど、この創業補助金はすでに2回の採択が行われているとお話ししましたよね。こちらでその一覧が見られますので、事業テーマを見るだけでもイメージがつかめるのではないでしょうか」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「へぇ、さまざまなテーマが採択されているんですね。私のアイデアも対象になるかもしれないな」

佐藤さん(佐藤 正)

「可能性はあると思いますよ。熊崎さんの事業計画書の内容を、申請書に落とし込んでいけばいいんです。窓口になる事務局は、都道府県ごとによって異なりますので、こちらの「第3回創業補助金公募のご案内」のページから、各事務局のページに飛んで、そこから申請書や申請の手引きもダウンロードできます」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「このページを見れば、『創業補助金Q&A』もありますね。一度、ゆっくり見てみます。でも、この申請書、私に書けるのかな...。ちょっと心配です」

佐藤さん(佐藤 正)

「事業計画書を見た限りは、大丈夫だと思います。でも、もし誰かに助けてもらいたいと思うのなら、『認定支援機関』に相談することもできますよ」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「何ですか? その認定支援機関って...」

佐藤さん(佐藤 正)

「地域の金融機関や公的な支援機関、税理士や弁護士、中小企業診断士など国の認定を受けた機関で、事業計画の策定支援と、専門分野のアドバイスが受けられるんです。『経営革新等支援機関一覧』のページから、お近くの認定支援機関を探して、連絡してみてはどうでしょう?」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「たくさんあるんですね。相談してみようかな。続いて、2つ目のポイント「先払い後受取り」について教えてください」

佐藤さん(佐藤 正)

「募集要項を見ると、『補助対象経費』という項目があって、どのような内容が補助の対象になるのか、ならないのかが細かく決められています。創業に必要な経費であっても、ここで対象になると書かれていなければ、補助の対象になりません。経費が支払われる条件を私なりに整理すると、次の5点が満たされることです」

(1)補助対象経費に指定されている経費であること
 (2)申請書の「補助事業の経費明細」で計画すること
 (3)合理的な相手先から物品やサービスを購入し、実際に支払うこと
 (4)見積書、領収書、その他証明書などを保管し、事業終了後に提出すること
 (5)検査でその必要性が認められること

熊崎さん(熊崎 大輝)

「お金を無条件でもらえるのでは、ないのですね。しっかりと募集要項を読み込んでおかなくちゃ、ですね」

佐藤さん(佐藤 正)

「3つ目のポイントとして紹介しましたが、事業が終わってから事業の進捗や成果、使用した経費の見積書や領収証をまとめて、完了報告書を事務局に提出します。細かい検査を受けて初めて、補助金は支払われるんです。採択されたらやりっ放しでは、補助金は受けられません」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「うわっ...。事務作業、苦手なんですよね。自分にできるかな...」

佐藤さん(佐藤 正)

「事務作業も大事な仕事。それくらいやるという気概がなければ、創業なんてできませんよ」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「はい...」

佐藤さん(佐藤 正)

「ちょっと脅しすぎましたかね。事業を進捗する途中でのアドバイスや報告書の策定などについても、認定支援機関のサポートを受けることができますよ」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「あぁ、ホッとした。ますます認定支援機関にお願いしなくちゃ、という気持ちが強くなりましたよ」

佐藤さん(佐藤 正)

「ちなみに、この創業補助金ですけど、もし考えているビジネスモデルが、海外市場の獲得を念頭とした事業で、国内で創業しようという『海外需要獲得型起業・創業』なら、補助の上限額が700万円になります」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「海外が相手なら、たくさん補助してもらえるんですね」

佐藤さん(佐藤 正)

「また、創業者ばかりでなく、すでに事業を営んでいる中小企業・小規模事業者において、後継者が先代から事業を引き継いだ場合などに業態転換や新事業・新分野に進出する『第二創業』をする場合も対象になって、上限500万円の補助を受けられるんです」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「場合によっては後継者も対象になるなら、この商店街の友だちも、使いたいってヤツがいると思いますよ。さっそく教えてやろうっと」

佐藤さん(佐藤 正)

「どうですか。創業補助金にチャレンジしてみますか?」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「はい。チャレンジしてみようと思います」

佐藤さん(佐藤 正)

「じゃあ、今回の申請でとても大切なことを最後に2つ教えます。しっかり、メモをとっておいてくださいね」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「お願いします」

佐藤さん(佐藤 正)

「まず1つ目は、今回の申請の締め切りは平成25年12月24日ですけど、10月21日までに受付された申請については、先行して審査を実施するということです。10月22日以降の受付分については、応募状況に応じて審査を行うと、発表されています」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「じゃあ、私は10月21日を目指して申請するようにしたいと思います」

佐藤さん(佐藤 正)

「そうですか。あまり日がありませんが、頑張ってください。もう1つの大切な点は、申請時に、認定支援機関になっている金融機関か、金融機関と連携している認定支援機関から、確認書を発行してもらうことが求められていることです。『経営革新等支援機関一覧』から、お近くの金融機関や金融機関と連携している認定支援機関を探して、早い段階で相談に行きましょう。『創業補助金に応募したいです』とお話しすれば、きちんと相談に乗ってくれますよ」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「締め切りギリギリにならないように、金融機関さんには早めに行っておいたほうが良さそうですね」

佐藤さん(佐藤 正)

「そうですね。申請書ができ上がる前でも、先にお話だけはしておいたほうが、後々スムーズに行くでしょうね」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「だいたい、やるべきことがつかめました。先生、ありがとうございます!」

田中さん(田中猛)

「おう、話は終わったかい。大輝、どうだ。先生にいろいろ教えてもらったか?」

熊崎さん(熊崎 大輝)

「うん、おじさん。佐藤先生は噂どおりだったよ。とてもわかりやすく教えてくれた。先生、俺はおじさんと違って、相談料はドカッと払いますから。ただ、時期なんですが、この事業が成功してからの出世払い、ということでお願いできませんか...」

佐藤さん(佐藤 正)

「ふふふ、そうですね。田中さんから出世払いと言われても先がなさそうだけど、大輝さんなら、大きな可能性がありそうですね。わかりました。期待して待ってますよ」

田中さん(田中猛)

「おいおい、先がないは余計だろう」

佐藤さん(佐藤 正)熊崎さん(熊崎 大輝)

「ハハハ(笑)」

※ここに掲載されている制度内容は、変更される場合もあります。最新の制度を確認のうえ、お申し込みください。

※筆者からひと言

成功している創業者は、創業前に多くの方に事業構想について相談し、意見を聞いてよりブラッシュアップしたということをよく聞きます。しかし、大切なアイデアですから、むやみに誰にでも話すわけにはいきません。そこで、中小企業診断士の出番です。守秘義務を負っている中小企業診断士なら、安心して事業の相談ができます。認定支援機関にも、中小企業診断士事務所がたくさん登録していますので、相談に乗ってもらってはいかがでしょうか。

(おわり)

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