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ストーリーで学ぶ中小企業施策

【第5回】日本のものづくりを元気にしたい!「戦略的基盤技術高度化支援事業」

国は、中小企業を支援するためにさまざまな施策を提供しています。しかし、施策を利用してほしい中小企業は施策を知らない、理解が不十分であるなどの理由により、活用していないことも多いようです。私たち中小企業診断士には、このような企業に対して施策利用を提案していくことも期待されています。
 そこで今回は、「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)」について、ストーリー形式でわかりやすくお伝えします。

<登場人物>

中川さん(中川 晶男)
中川さん

中川さん(中川 晶男)

60歳、プラスチック加工会社の創業社長。2人の子どもは、それぞれ結婚して独立。長男は大手メーカーに勤務後、中川さんの会社に入り、専務として働いている。過去に借金返済で苦労したことがあり、借入には慎重な姿勢。趣味はゴルフで、地元金融機関が主催するゴルフ会の会長を務めている。口癖は「頑張らなくちゃ」。

田中さん(田中猛)
金子さん

田中さん(田中 猛)

48歳、和菓子屋の3代目。見合い結婚した妻と、幼稚園の息子との3人暮らし。商店街の役員を務めるも、最年少の若手で、大先輩たちと若手商店主の意見調整に頭の痛い毎日。経営コンサルタントは理屈屋で何の役にも立たないと思っていたが、5年くらい前から来ている中小企業診断士の佐藤さんと交流しているうちに、意外と役に立つと見直している。特技は風船細工、口癖は「何か面白いことない?」。

佐藤さん(佐藤 正)
佐藤さん

佐藤さん(佐藤 正)

40歳、独立診断士。見合い結婚した妻と2人暮らし。独立直後、先輩診断士に言われて訪問した商店街に通い始めて6年目。お祭りや冠婚葬祭にも顔を出しながら、支援を続けている。時間を作っては関係のできたお店に顔を出しているが、「子どもはまだか」と言われるのがつらい今日この頃。特技は料理、口癖は「大丈夫、何とかなりますよ」。

中小企業診断士には、さまざまな相談が寄せられます。人に関する相談(第4回)お金に関する相談(第1回)(第2回)ITに関する相談(第3回)もあったりします。

中小企業診断士の佐藤さんが商店街を歩いていると、和菓子屋の田中さんに声をかけられます。今日は、新しい登場人物が...。どうやら親子ゲンカの相談みたいですよ。

田中さん(田中猛)

「先生、ちょっとちょっと」

佐藤さん(佐藤 正)

「どうしました? 田中さん」

田中さん(田中猛)

「ちょうど良かった。先生に紹介したい人がいるんだ。入って、入って」

和菓子店の奥にある事務所スペースへ行くと、少し暗い表情の男性が座っていた。

田中さん(田中猛)

「こちら、中川社長。うちの和菓子をよく買いにきてくれるんだ。中川社長、こちらがさっき話していた佐藤先生。相談料はちょっぴり高いけれど、とても頼りになる先生なんだ」

佐藤さん(佐藤 正)

「相談料が高いは余計ですよ(笑)。あっ、初めまして。中小企業診断士の佐藤正と申します」

中川さん(中川 晶男)

「初めまして。ここの近くでプラスチック工場を経営している中川です」

田中さん(田中猛)

「中川社長は、昨日息子さんとケンカをしたらしくて...。ここでグチを聞いていたところなんだ」

中川さん(中川 晶男)

「社長というのはつらいもので、会社の中でグチも言えない。だから、田中さんに聞いてもらっていたんです。そしたら、『佐藤先生にも話を聞いてもらったら?』って」

佐藤さん(佐藤 正)

「何かあったんですか?」

中川さん(中川 晶男)

「息子が、『銀行から3,000万円の借入をしたい』って言うんですよ。私は借金返済で苦しんだことがあるから、つい言い争いになってしまって...」

佐藤さん(佐藤 正)

「3,000万円ですか。何に使いたいのですか?」

中川さん(中川 晶男)

「プラスチック成形加工の技術開発です。新しい機械を購入する費用・材料費・研究のための人件費とかが、結構かかるらしいんです」

田中さん(田中猛)

「ここの息子さんは優秀な技術者で、特許も持っているんだ。アメリカへの留学経験があって、大学の先生と連携して、技術開発に取り組んでいるんだって」

中川さん(中川 晶男)

「たしかに技術開発は大事なんですけれど、借入をあまり増やすと、返済するのが大変だし...」

佐藤さん(佐藤 正)

「そうですね。先行投資は大切ですが、返済のことも考えないと」

中川さん(中川 晶男)

「昔、借入返済で苦労したことがあるんです。返済日が近づくと、胃がキリキリ痛みました。『借入をするときは、返済計画まできちんと考える』ということが、いまも身にしみています」

佐藤さん(佐藤 正)

「おっしゃるとおりです」

中川さん(中川 晶男)

「息子の気持ちもわかるんです。開発を目指している技術は、自動車部品の軽量化・低コスト化につながります。取引先メーカーからの要望があるし、船舶や航空機部品にも転用可能な技術なんです」

佐藤さん(佐藤 正)

「なるほど」

中川さん(中川 晶男)

「息子は、『日本の製造業をもっと元気にしたい』って本気で思っているんです。取引先メーカーはもちろんのこと、大学教授や公設の研究機関と連携して、一所懸命技術開発に取り組んでいます。だから私も、社長として親として、頑張らなくちゃ。息子を信じてサポートしようと思っています。取引銀行に借入を申し込むので、先生、手伝っていただけますか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「中川社長も息子さんも、熱い方ですね。わかりました。私もその気持ちを受け止めて、お手伝いしましょう」

中川さん(中川 晶男)

「ありがとうございます」

佐藤さん(佐藤 正)

「銀行からの借入の前に、ちょっと検討したい制度があるのですが...」

そう言って、佐藤さんはタブレット端末を開くと、"サポイン"というキーワードで検索をした。

中川さん(中川 晶男)

「"サポイン"って何ですか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「"サポーティングインダストリー"の略称です。ものづくり基盤技術を支援する制度があるんですよ。あっ、これこれ」

サポーティングインダストリー
(独立行政法人中小企業基盤整備機構ホームページより)
中川さん(中川 晶男)

「『戦略的基盤技術高度化支援事業(サポーティングインダストリー、以下「サポイン」という。)とは、鋳造、鍛造、切削加工、めっき等、特定ものづくり基盤技術の22技術分野向上につながる研究開発からその試作までの取り組みを支援する事業です』と書いてありますね」

佐藤さん(佐藤 正)

「国が行っているものづくり支援で、プラスチック成形加工技術も対象になっています。過去の採択状況や公募条件などは、経済産業局のホームページに詳しく書かれています」

中川さん(中川 晶男)

「研究開発規模(平成25年度に行う研究開発費用)の上限が、一般型で4,500万円以下、小規模事業型で2,300万円以下と書いてありますね。金額は減るものの、2年度目、3年度目も委託を受けることができる...」

佐藤さん(佐藤 正)

「機械の購入費、資材購入費、研究者の労務費も対象になります。もちろん、さまざまな条件・審査はありますよ。研究開発計画は、中小ものづくり高度化法に基づく認定を受けなければいけませんし、事業化計画もしっかりと検討しなければなりません。応募できる時期も限られています」

中川さん(中川 晶男)

「なるほど」

佐藤さん(佐藤 正)

「私の仲間の中小企業診断士で、ものづくりの支援制度に詳しい人がいます。よかったら、紹介しましょうか?」

中川さん(中川 晶男)

「ありがとうございます。ぜひお願いします。息子も喜ぶと思います」

田中さん(田中猛)

「ほら、中川さん。佐藤先生に話してみて良かっただろ? こう見えて、結構頼りになるんだ」

佐藤さん(佐藤 正)

「"こう見えて"は余計ですよ(笑)」

田中さん(田中猛)

「まぁまぁ、先生。うちの夏季限定メニュー『冷やし饅頭』でも食べて行ってよ。今日の相談料の代わりに、俺がおごるからさ」

中川さん(中川 晶男)

「"相談料が高い"って言っていたのに、随分とリーズナブルですね!(笑)」

佐藤さん(佐藤 正)

「まいったなぁ。でも美味しそうだから、いただきま~す」

※ ここに掲載されている制度内容は、変更される場合もございます。最新の制度を確認のうえ、お申込みください。

※筆者からひと言

「社長とは、孤独な仕事だ」と言われます。社内にいるのは全員部下で、悩みを相談できる相手ではありません。また、取引先金融機関に弱いところは見せられませんし、占い師に相談するわけにもいきません。そんなときに頼りになるのが、中小企業診断士です。親子ゲンカをしてしまった中川社長も、佐藤さんと話をして、明るい表情になったようですよ。

(おわり)

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