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ストーリーで学ぶ中小企業施策

【第4回】業績低迷中も従業員の雇用を守り、育てる「雇用調整助成金」

国は、中小企業を支援するためにさまざまな施策を提供しています。しかし、施策を利用してほしい中小企業は施策を知らない、理解が不十分であるなどの理由により、活用していないことも多いようです。私たち中小企業診断士には、このような企業に対して施策利用を提案していくことも期待されています。そこで今回は、「雇用調整助成金」について、ストーリー形式でわかりやすくお伝えします。

<登場人物>

金子さん(金子真理)
金子さん

金子さん(金子 真理)

40歳。田中さん(前回参照)と同じ商店街で美容院を経営し、夫と小学生の娘との3人暮らし。2年前、隣町の商店街に新しく系列店をオープンしたのをきっかけに、両店舗を行き来しながら忙しい日々を送っている。特技は時短家事、口癖は「いまやらなきゃ!」。

佐藤さん(佐藤 正)
佐藤さん

佐藤さん(佐藤 正)

40歳。独立診断士で、見合い結婚した妻と2人暮らし。独立直後、先輩診断士に言われて訪問した商店街に通い始めて6年目。お祭りや冠婚葬祭にも顔を出しながら、支援を続けている。時間を作っては関係のできたお店に顔を出しているが、「子どもはまだか」と言われるのがつらい今日この頃。特技は料理、口癖は「大丈夫、何とかなりますよ」。

2年前に、満を持して隣町の商店街に2店舗目を開店したものの、思うように売上が伸びずに悩んでいる金子さん。店主たちの中では比較的年齢も近く、顔見知りの田中さんに相談したところ、中小企業診断士の佐藤さんを紹介されました。

金子さん(金子真理)

田中さんのお店は、すこぶる順調ですよね。新しくスーパーと取引を始めたかと思ったら、最近ではネット通販も始めたみたいですし。それに引き換え、うちの新店は、オープンして3年目に突入したばかりだというのに、売上が全然伸びていません。ここ半年ほどは売上が徐々に減り続け、ついには前年割れしてしまったという、目も当てらない状況で困ってるんですよ。

佐藤さん(佐藤 正)

それは一大事ですね。従業員は、全部で何名ですか?

金子さん(金子真理)

2店舗合わせて7名です。おかげさまで、既存店のほうは順調なので、予約状況によって両店舗間でスタッフの配置を変更しながら、なるべく多くのお客様をお受けできるようにしています。ですが、このまま既存店の売上に依存した経営をしていては、スタッフのお給料を払うことさえ難しくなってしまいます。

佐藤さん(佐藤 正)

スタッフの皆さんの様子は、いかがですか?

金子さん(金子真理)

新店メインで稼働しているスタッフは、不安を感じているようです。つい先日も、新店がオープンする際に採用したアシスタント(すべての技術を提供できるスタイリストの補佐をするスタッフ)に、「このまま売上が伸びなかったら、自分たちはクビですか?」と聞かれて、ドキッとしてしまいました。

佐藤さん(佐藤 正)

仮に今後も新店の売上が伸びなかったとしたら、金子さんはスタッフのことをどうするおつもりですか?

金子さん(金子真理)

小さなお店ではありますが、スタッフを採用したからにはそれなりの責任があり、お店の都合で従業員を解雇するようなことがあってはならないと思っています。

佐藤さん(佐藤 正)

そのために考えていらっしゃることはありますか?

金子さん(金子真理)

この2ヵ月で、両店舗にご来店くださったお客様にアンケートを行った結果、売上を上げるための改善策はいくつか見えてきました。とは言え、そのための従業員教育も必要ですし、現実的にはいますぐというわけにはいきません。教育だって、お金がかかりますし...。

佐藤さん(佐藤 正)

金子さん、あなたは素晴らしいです! お店の経営が大変な状況にもかかわらず、従業員のことばかり考えている。実は、一時的に業績が苦しくても、従業員の雇用を維持したいという事業所には、それを支援する「雇用調整助成金」というものがあるんですよ。

金子さん(金子真理)

それは、ありがたいです! どのように支援してくれるんですか?

佐藤さん(佐藤 正)

売上高の最近3ヵ月の月平均値が、その直前3ヵ月か前年同期に比べて10%以上減少しているなど一定の要件を満たしていれば、従業員の休業手当相当額の2/3、1人1日上限7,870円まで助成されます。

金子さん(金子真理)

ということは、予約があまり入っていない日にスタッフを休ませた場合、その助成金をスタッフのお給料に充てられるということですね。

佐藤さん(佐藤 正)

そういうことになります。ただし、前もって「休業等実施計画書」などの必要書類を提出することが必要です(雇用調整助成金の様式ダウンロード)

金子さん(金子真理)

前もって計画する必要があるとなると、うちみたいに繁閑の波があって予約状況が読めない商売では難しいですね...。

佐藤さん(佐藤 正)

大丈夫ですよ。「計画」はあくまで「計画」ですから、休業実施日に変更があった場合には、その旨を申請書類に記載すればよいのです。

金子さん(金子真理)

それは助かります!

佐藤さん(佐藤 正)

さらに、金子さんのお店のように、従業員教育を必要とする事業所の場合、前もって教育訓練計画を提出し、それが認められた場合は、休業手当にプラスして、事業所内訓練の実施費用として1日1人あたり1,500円、事業所外訓練の場合は3,000円が支給されます。

金子さん(金子真理)

教育費の助成まで受けられるのですね。ここまでの先生のお話をうかがっていると、すごく良い制度に思えるのですが、デメリットはないのでしょうか?

佐藤さん(佐藤 正)

計画時点と同様、休業・教育訓練ともに計画に沿って実施した場合には、所定の様式による申請が必要になります。この申請をしなければ、助成金は支給されません。また、あくまで助成金ですから、支給されるのは、従業員に手当を支払った旨を申請して受理された翌月以降となります。届出書類の作成や教育訓練の実施計画など、多少の手間はかかりますが、金子さんのお店としては、この施策を活用しない手はないでしょう。

金子さん(金子真理)

そうですよね! 従業員に受けさせたい外部研修があるので、検討してみます。ちなみに、助成金額の上限などはありますか?

佐藤さん(佐藤 正)

ありますよ。支給限度日数が定められていて、1年間で100日、3年間で300日です。仮に、金子さんのお店のスタッフ7名全員が1ヵ月に4回の休業・教育訓練を事業所外で実施した場合、支給申請の翌月以降に304,360円の助成金が支給されます。教育訓練については、全員平等である必要はなく、特に必要なスタッフ中心に実施することができます。

金子さん(金子真理)

となると、教育訓練の必要がない稼ぎ頭のスタイリストには、これまでどおりお店で働いてもらえばよいということですね。それだけの費用と時間を、アシスタントの研修に充てられれば、今後の売上回復も何とか実現できそうです。こうなったら、いますぐやらなきゃ! 佐藤先生、さっそく教育訓練計画について、相談させていただいてもよろしいでしょうか?

佐藤さん(佐藤 正)

もちろん、喜んで!

※参考

平成25年4月1日以降の雇用調整助成金の助成率等変更点

(おわり)

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