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ストーリーで学ぶ中小企業施策

【第1回】引退後の不安を解消する「小規模企業共済」

国は、中小企業を支援するためにさまざまな施策を提供しています。しかし、施策を利用してほしい中小企業は施策を知らない、理解が不十分である等の理由により、活用していないことも多いようです。私たち中小企業診断士には、このような企業に対して施策利用を提案していくことも期待されています。
 当コーナーでは、執筆者が実際の企業に提案した施策について、ストーリー形式でわかりやすくお伝えします。

<登場人物>

田中さん(田中 猛)
田中さん

田中さん(田中 猛)

48歳、和菓子屋の3代目。妻と幼稚園の息子の3人暮らし。商店街の役員を務めるも、最年少の若手で、大先輩たちと若手商店主の意見調整に頭の痛い毎日。経営コンサルタントは理屈屋で役に立たないと思っていたが、5年ほど前に知り合った中小企業診断士の佐藤さんと交流しているうちに、評価は変わってきた。特技は風船細工、口癖は「何か面白いことない?」。

佐藤さん(佐藤 正)
佐藤さん

佐藤さん(佐藤 正)

40歳、独立診断士。お見合い結婚の妻と2人暮らし。独立直後、先輩診断士に言われて訪れた商店街に通い始めて6年目。冠婚葬祭等にも顔を出しながら、支援を続けている。時間を作っては、関係のできたお店に顔を出しているが、「子どもはまだか」と言われるのがつらい今日この頃。特技は料理、口癖は「大丈夫、何とかなりますよ」。

商店街の若手で役員も務める田中さんは、入院をきっかけに将来への不安が大きくなっていました。「自営業じゃ退職金もないから、働き続けないとね~」などと、冗談で妻と話していたのですが、それはあくまで健康であることが前提でした。サラリーマンの知人が定年退職し、退職金で海外旅行に行ったような話を聞けば、正直なところうらやましく感じてしまいます。

ある時、商店街の会合に顔を出した中小企業診断士の佐藤さんに聞いてみました。

田中さん(田中 猛)

「いまはいいんですが、この先が心配ですよ。サラリーマンみたいに、頑張ったごほうびでお金がもらえる制度って、ないのかなぁ?」

佐藤さん(佐藤 正)

「ありますよ」

田中さん(田中 猛)

「えぇっ!?」

佐藤さん(佐藤 正)

「サラリーマンの退職金は、会社が将来に備えて積み立てているわけですが、小規模の会社向けにも積み立てておく仕組みがあるんです」

田中さん(田中 猛)

「なんだ、保険みたいなものかぁ。結局、自分で用意しておくってことだろ?」

以前、生命保険会社の営業担当者が熱心に勧誘に来ていたが、よくわからなかったのでお断りしていた。いま思えば、もっと検討しておくべきだったのだろうか...。

佐藤さん(佐藤 正)

「保険とは違いますよ。国の法律で決められた、経営者の退職金の積み立て制度で、小規模企業共済というものがあるんです」

田中さん(田中 猛)

「でも、結局は自分で積み立てるんだろ?」

佐藤さん(佐藤 正)

「もちろん。でも、いろいろとメリットがあるんですよ。私も加入しています」

田中さん(田中 猛)

「へぇ、先生も入っているんだ」

佐藤さん(佐藤 正)

「私も、個人事業主ですから。国の制度なので、民間の保険会社のように倒産を心配しなくていいですし、確定申告の時には掛け金が全額控除になります」

田中さん(田中 猛)

「おぉ、全額控除ですか」

佐藤さん(佐藤 正)

「それだけじゃなくて、資金繰りが厳しくなった時には、積み立てた掛け金の範囲内でお金を借りることもできるんですよ(契約者貸付制度について)。皆さんが興味を持たれる節税額については、インターネットでシミュレーションができますけど、見てみますか?」

田中さん(田中 猛)

「お願いします。...へぇ、こんなサイトがあるんですね」

佐藤さん(佐藤 正)

「普段申告している時の所得額は...。はい、こんな風に出ましたよ」

田中さん(田中 猛)

「おぉっ! そんなに節税できるのかぁ」

佐藤さん(佐藤 正)

「資金繰りや税制面だけでなくて、お店を4代目に引き継ぐ時は、そのまま引き継ぐこともできるんですよ」

田中さん(田中 猛)

「えっ。じゃあ、息子の代になっても積み立て続ければ、どんどん資金繰りに使える枠が増えていくってことですか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「そうです」

田中さん(田中 猛)

「どうやって申し込めばいいんですか?」

佐藤さん(佐藤 正)

「商工会・商工会議所や銀行などの窓口で、手続きできますよ(小規模企業共済加入手続きの流れ)」

結局、田中さんは売上の状況も考えて、無理のない範囲で毎月5万円をかけることにしました。以前、50万円程度の資金繰りで苦しんだことがあったので、資金繰りの手段が増えるのも魅力でした。手続きは、銀行の窓口担当者が丁寧に教えてくれるので、簡単に完了しました。1年以上積み立てておけば、いざというときに積み立て金額の7割~9割の事業貸付が受けられますし、長く積み立てれば受けられる貸付額も増えるので、資金繰りの不安が減りそうです。息子に余計な苦労はさせたくなかったのですが、「承継通算」で自分が積み立てた分も引き継げれば、心配の種が1つ減ります。

ほかにもお得な制度がないか、中小企業診断士にいろいろと相談しようと思っています。

筆者が小規模企業共済を紹介するケース

私は、老後の不安や節税に関して相談を受けた時に紹介しています。「経営者の退職金」というよりは、「引退に備える積立制度」と伝えることが多いです。特に、(1)国が提供している安定性、(2)節税効果、(3)資金調達手段の追加についてお伝えすると、興味を示されるようです。上記のやりとりでも少し触れましたが、事業承継に関連して紹介してもよいでしょう。

(おわり)

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