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中小企業診断士の仕事

プロコン×企業内診断士のコラボレーション—協働による診断士活動機会の創出

文:鎌田 浩一(中小企業診断士)茂木 崇(中小企業診断士)

【第3回】「業務タイアップコラボ」の巻

最終回となる今回は、「業務タイアップコラボ」のケースをご紹介します。企業内診断士が、社内ネットワークと診断士活動を通じて構築したネットワークを通じ、プロコンと協働する機会を創出した事例です。

地域貢献への思いがコラボレーションを生む

アクタス宇都宮店
アクタス宇都宮店

最後にご紹介する事例は、「業務タイアップコラボ」です。中小企業診断士の重要な活動の1つに、「地域活性化の一助となること」が挙げられます。今回は、「地域を盛り上げよう!」との思いから、企業内診断士が企業の枠を飛び越え、プロコンとの協働でイベントを開催した事例をご紹介します。

筆者は、株式会社アクタスという、インテリア小売を主業とする企業に勤務する企業内診断士です。同社は、全国主要都市に直営店15店舗を展開する一方で、地方都市にはライセンスショップ、もしくはパートナーショップという形で、約40店舗をFC展開しています。

そのパートナーショップを運営する企業の中に、栃木・群馬・埼玉で4店舗を展開する有限会社スタイルがあります。代表取締役社長の松島郁夫氏は、「インテリアを通じて、地域の皆様の豊かな暮らしづくりに貢献したい」という思いでショップ運営をされてきました。

筆者は、会社での業務を通じて、松島社長から「地域貢献への思い」を幾度となく聞くにつれ、「社長の地域貢献への思いを具現化するようなイベントをできないか?」と考えるようになりました。そんな折、「夢カナ」で知り合った独立診断士の藤井大介氏が、栃木県の農業を活性化させるために「下野農園」というレストランを開業したことを聞き、業種は異なるものの、同じ地域貢献への思いを持った2つの企業を結びつけることが地域活性化の一助となるとともに、中小企業診断士同士ならではのコラボレーションも可能なのではと思い、藤井氏に相談を持ちかけることにしました。

筆者と藤井氏との出会いは、(社)中小企業診断協会東京支部城北支会で、同期の中小企業診断士として知り合ったことから始まります。また、マスターコースも同期で、年齢も同じということもあり、さまざまな相談に乗ってもらったり、アドバイスをもらったりできる貴重な存在です。その藤井氏が、経営支援や農業経営支援コンサルタントとして活躍する一方、地元・栃木の農家の高い生産技術やこだわりを情報発信し、地域の消費者と生産者をつなぐことで、栃木の素晴らしさを広めていくために宇都宮市に開業したのが、下野農園です。下野農園では、単に地元の野菜を料理として提供するだけでなく、生産者の農産物への思いを込めた「ストーリーブック」の作成や、消費者と生産者をつなぐイベント「ファーマーズナイト」等の開催を通じて、消費者に地元の素晴らしさを再認識してもらう活動を続けてきました。

そこで藤井氏に、農業を通じた地域活性化を行う下野農園と、地域の暮らしを豊かにする活動を行う有限会社スタイルとの間で、両社を結びつけるようなイベントを開催したいとの打診をしたところ、快諾いただき、有限会社スタイルが宇都宮市で運営する「アクタス宇都宮店」において、平成23年5月のゴールデンウィーク期間中に、栃木県産野菜の販売や、手づくり雑貨の販売等を行う「マルシェ(青空市場)イベント」を開催することとなりました。

地域活性化に向けた協働

下野農園
下野農園

藤井氏とイベントについて打ち合わせを行う中で、下野農園とアクタス宇都宮店によるマルシェイベントを開催する大きな目的は、(1)地域密着型の運営を行う両社の協働による地元需要の掘り起こし、(2)両社の若手スタッフ交流による地域人材の活性化、(3)特徴的なこだわりを持つ中小企業同士の継続的な連携、の3つとなりました。

(1)について、アクタス宇都宮店の扱う商品(家具・雑貨)は、高品質、高付加価値型商品を中心とした、独自性の高い商品構成となっています。そのため、顧客層は暮らし方にこだわりを持ち、本質的な生活を追求する層が中心となっています。このような顧客層は当然、下野農園で取り扱う、生産者がこだわりを持ってつくった野菜に大きな関心を寄せるものと予想されます。一方、下野農園の顧客層も、食をはじめとした生活にこだわりを持つ方が多く、アクタス宇都宮店の取り扱う高品質の家具や雑貨にも関心を持つことが予想されることから、イベントを通じて両社の顧客が互いを行き来するようになるという、相乗効果を狙う意図がありました。

(2)については、両社で働くスタッフは、比較的年齢が近く(20代後半~30代前半)、地元採用の人材が多いことから、地域貢献を図る両社で働くスタッフがイベントを通じて交流することで、今後、このような地域の若手人材から地域活性化の動きが出てくることを期待しました。

(3)については、地域密着の運営を行っている両社は、顧客だけでなく、取引先等にも特徴的な取組みを行う企業を多く有しています。そうした地元企業の情報を共有することで、新たな連携を生み出す可能性を見出していくという、中期的なビジョンを意図しました。

イベントで得られた大きな成果

マルシェイベント開始直前の写真
マルシェイベント開始直前の写真

イベントは、平成23年5月7日(土)と8日(日)の2日間、アクタス宇都宮店で開催されました。当初に立てた目的どおり、下野農園とアクタス宇都宮店双方のお客様にご来場いただき、両社の取扱商品に大変興味を持っていただくことができました。また、栃木県産の野菜の素晴らしさや、宇都宮市内に、地域に根ざした活動を行うインテリアショップが存在することを認知していただいたことで、新たな顧客層の開拓につながったように思います。さらに、藤井氏のはからいにより、閉店後には、両社の若手スタッフの交流を深める懇親会も行われ、地元の活性化や互いの仕事について等、大いに語り合う機会となりました。当初、イベントの企画を考えていた際には、店舗で働く若手スタッフが地域活性化を担うことなど、想像もしていませんでしたが、語り合う彼らの姿に、今後は業種業態にとらわれず、若い人材が地域活性化に対して能動的に活躍してくれるのでは、という期待を持つことができました。

企業内診断士がプロコンと協働するということ

「企業内診断士は、活動が制約されがち」といった話をよく聞きます。しかし、支部での活動やマスターコース等を通じて、中小企業診断士同士のネットワークをつくることは可能だと思います。今回、そのようなネットワークと、自社の持つリソースの活用、そして何より、中小企業診断士として地域貢献に携わりたいという思いにより、プロコンとの協働につなげることができました。また、プロコンの方が持つネットワークや経験から、多くの気づきを得ることができたとともに、自社の持つリソースを使ってプロコンの方と協働することで、新たな事業の展開をつくり出せるという可能性も感じることができました。

企業内診断士とプロコンは、それぞれ活躍するフィールドが異なります。しかしながら、お互いの持つリソースを持ち寄ることで、需要の掘り起こしや新たな可能性を見出すチャンスも生まれてくるなど、高い相乗効果を得られるものと思います。互いのフィールドを広げるためにも、両者の協働は今後とも、大いなる可能性を秘めているのではないでしょうか。

(おわり)

【参考ホームページ】