経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

中小企業診断士の仕事

女性起業家のプラットフォームづくりを通した、きめ細やかな起業支援を目指して

取材・文:渡辺 まどか(中小企業診断士)

【第3回】センターの取組みと女性起業家としてのビジネス展開

取材日:2011年8月10日

武蔵小山創業支援センター長の大江栄さんにお話をうかがう最終回は、「日本一のセンター」を目指す取組みと、ご自身の女性起業家としてのビジネス展開についてお聞きしました。

日本一の創業支援センターになるための仕掛け

大江栄さん
大江栄さん

― 現時点の、武蔵小山創業支援センターとしての取組みを教えてください。

4本柱で展開していますが、1つ目はセミナー。こちらがセンターの集客装置になっていて、年間80本を提供しています。2つ目は交流会。初めにセミナーにいらっしゃった方が、次は交流会に参加するパターンも多いですね。3つ目は、アドバイザーによる個別相談会。アドバイザーは、士業の方に限らず、専門性の高い方を求めています。セミナー参加者の中で、よりビジネスプランの具体的な方が利用するケースが多いですね。そして4つ目が、イベントです。起業を目指す方の出店イベントなどが挙げられます。これらを複合的に組み合わせて、サービスを提供しています。

また、集客のためにさまざまな工夫もしています。たとえば、「個別相談」や「セミナー」だとハードルが高いので、「サロン」とネーミングすることがあります。「センター長大江のおしゃべりサロン」という時間を定期的に設けているのですが、その時間帯はオープンスペースに座って待機しています。「好きなときに来て、好きなときに帰っていいですよ」とハードルを下げることで、モヤモヤしている女性が、話を聴いてほしくて足を運んでくださいます。

― 最初の大江さんと私のやりとりは、ブログ経由でセミナー講師のお話をいただいたことがきっかけでしたよね。セミナー講師を探すのが大変というお話でしたが、どのような講師を求めているのでしょう。売り込みもあるのではないですか。

ありますよ。でも、基本的にはこちらからお願いした方だけにご登壇いただいています。やはりセミナーは、センターにとっての商品なので、できれば見たことのある方、実績のある方という基準で選ばせていただき、講師の質にはこだわっています。

今後はセミナーグランプリを予定していて、新人講師の方が活躍するチャンスを提供したいと思っています。セミナーの企画はご自身で練っていただき、集客についてもセンターのみならず、ご自身でもしていただきます。テーマは起業に関するもので、広く女性講師を募集する予定です。

― 女性診断士で参加を希望する方も、多いのではないでしょうか。講師業での開業を希望する女性も多いですよね。ところで、「女性起業家輩出の実績で日本一のセンターになる」というお話がありましたが、具体的にはどのような仕掛けをしているのでしょうか。

大江栄さん

「女性のための起業スクールMU★SAKO」(http://www.musashikoyama-sc.jp/musako/)を開講します。全18回の受講期間中に、単に事業計画をつくるだけでなく、チラシやブログをつくったりもします。私たちの目論見としては、「受講中に起業しましょう。終わる頃には、何人か集客もしましょう」といったところです。センターとして、この1年で目標としていた登録ユーザー数1,000名を超えることができたので、次なる施策として、トータルで起業をサポートする狙いです。これまでは単発でのサポートでしたが、このスクールは点と点でなく、面でのサポートを意識しています。終了後の2012年3月には、女性起業家限定のビジネスプランコンテストを開催するのですが、ここの卒業生にも応募してもらい、ファイナルまで残ってほしいと思っています。またビジネスプランコンテスト自体には、「ゆくゆくは日本中の女性起業家のビジネスプランを集めたい」という狙いもあります。

センターには、人の情報がたくさん集まってくるので、誰かと誰かをマッチングすることで、止まっていた事業を前に押し出せることができるんです。すると、「武蔵小山創業センターに行ったら、こんなビジネスが実現しちゃった」といった口コミも発生する。それが個人的な喜びでもあり、センターとしての実績にもなっていくんですよね。現在、週3日ペースでセンターに勤めていますが、私自身の人脈をセンター長というポジションに活かしていきたいですね。

― 今後は新しい取組みもたくさんあって、とても楽しみですね。最後に、大江さん個人のお話についてうかがいたいのですが、最近、法人化されましたよね。

エフ・ブルーム株式会社というのですが、「エフ」には「future(未来)」、「female(女性)」、「flexible(しなやかな)」などの意味が込められていて、「ブルーム」は「花開く」の意味です。

女性起業家および経営者支援が主軸なので、このような思いを込めました。

センターだけではカバーしきれない分野もあると思っていて、たとえば女性起業家が出ていく場所をつくることがその1つです。その第一歩として、女性起業家のプラットフォームをつくり、「起業でちゃんと自立していきたい」という意識の高い女性を集めたいんです。先行投資的に女性起業家および経営者をグループ化することで、コンサルティングやセミナー・勉強会などの講師のニーズも出てくると思っています。

― 今後、大江さんご自身は女性起業家として、どのような方向を目指しているのでしょうか。

専業主婦をしていた頃、仕事をできないことがとても辛かったんです。その頃の私と同じように「妻だから」、「ママだから」ということに縛られて、多くの女性がモヤモヤしていると思います。自分はラッキーなことにそこから抜け出せたので、今度はモヤモヤしている女性をサポートしたいですね。

そして、あと10年が経った頃には、年に数ヵ月間は海外に行くような余裕がほしいですし、もう10年が経った頃には、きちんと社会貢献がしたいです。具体的には、離婚を考えているがゆえに起業を目指す女性がとても多いので、母子家庭が共同生活できる住まいを提供したい。そういったコミュニティを提供し、経済力がついたら自立していけばいい。私自身の離婚経験や子育て経験を活かしつつ、ママ友から助けられたことへの恩返しもしたいので、そうした形でのサポートができればいいなと思っています。

これまで仕事をさせていただいて、つくづく「信念」と「仕事に対する思い」が重要だと感じています。これからも「信念」と「思い」を大切にしながら、一つひとつの仕事に丁寧に取り組んでいきたいと思っています。

(おわり)

【参考ホームページ】

大江 栄(おおえ さかえ)
エフ・ブルーム株式会社代表取締役。大学卒業後、オリックス株式会社に就職。不動産担保の資金融資営業を担当し、経営に興味を持ち始めるが、結婚・出産を機に退職。8年間の専業主婦生活に入る。2003年診断士資格を取得し、個人事務所を開業。2010年8月より品川区武蔵小山創業支援センターの初代センター長に就任、年間100名以上の女性の起業相談を受ける。2011年6月会社設立。