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中小企業診断士の仕事

女性起業家のプラットフォームづくりを通した、きめ細やかな起業支援を目指して

取材・文:渡辺 まどか(中小企業診断士)

【第1回】「働きたい!」という強い思いが原動力に

取材日:2011年8月10日

今回は、専業主婦時代に診断士資格を取得し、起業家としてもご活躍中の品川区武蔵小山創業支援センター長・大江栄さんにお話をうかがいました。

8年間の専業主婦歴を経て中小企業診断士に

大江栄さん
大江栄さん

― 大江さんが診断士資格を取得するに至った経緯について、教えてください。

私は、新卒でオリックス株式会社に入社し、不動産事業本部の不動産担保資金融資の営業に配属となりました。中小ディベロッパー向けに、土地家屋の仕入れ資金の融資を行う部署でした。中小企業向けの営業とは言っても、一千万~十億円単位の融資ですから、商談相手は社長です。当然ながら、決算書やプロジェクトの事業計画書も拝見することになります。

このときに思ったことが2つあって、1つは経営について勉強したいということ、もう1つは「中小企業の経営は、マネジメントが十分でない」ということでした(笑)。たとえば、数千万円の土地の管理ができていなくて、その土地に担保がはりついているにもかかわらず、見て見ぬふりをして、新しい融資が受けられないといったことも珍しくないんです。このとき、「ちゃんと管理すればいいのに。こういうことを経営視点でアドバイスできるようになりたいな」と思いました。

社内には自分で選べる研修制度があって、そのうちの1つが診断士資格で、私は興味を持ちました。ところが、このときは忙しく、勉強をする余裕がなかったんです。その後、社会人2年目で早々に結婚し、すぐに長男を妊娠しました。仕事がハードだったこともあり、子育てと仕事の両立は厳しいと考え、一度退職することになります。すぐに復職するつもりでしたが、長男の手に障害があり、長期入院をしているときに、今度は次男を妊娠したため、復職はかないませんでした。こうして結局、会社には2年半しかいられませんでしたが、社会人の基礎はすべてここで教わることができました。

それでも、とにかく仕事はずっとしたかったんです。長男を生んだときにも漠然と、「35歳までに社会復帰をしよう。40歳くらいまでには、社会人としてちゃんと働いている実感を持てるようになりたい」と思いました。

― 専業主婦から起業家に転身をするきっかけになったのは、やはり診断士資格ですか。

大江栄さん

31歳の春に、その年の中小企業診断士1次試験の勉強を独学で始め、何とか合格できました。新制度1年目で、合格率が異常に高い年度だったのもラッキーでしたね。でも、翌年の2次試験を再受験することになったので、1次試験ももう一度受け直しました。たった4ヵ月間の勉強では、ちゃんとした知識が身についていないと思ったので。2次試験対策は、数日間だけ受験校のお世話になりましたが、メインは独学で学習しました。

診断士資格をきっかけに、子育てをしつつ起業家に転身

― 独学で、さらに短期間合格とは素晴らしいです。合格後は、どのような活動をされたのですか。

独立開業研究会をはじめ、若手の方が運営している元気のよさそうな研究会に2、3所属しました。そこで出会った先輩診断士の事務所で、2ヵ月間限定で事務員として働いたのが、私にとって8年ぶりの仕事でした。中小企業診断士らしい初めての仕事は、エステ業界レポートの作成でした。それ以外には、受験校の添削講師や2次試験の作問など、子育てと両立できる範囲で仕事をしていました。

正直なところ、最初は診断士資格を活かして仕事をしようとは、これっぽっちも思っていませんでした。専業主婦を8年間もやっていたので、「いきなり資格を取ったからと言って、コンサルティングなんてできるわけがない」と思っていたんです。その後、先輩診断士のご紹介をいただいて全国商店街振興組合連合会の研究員として報告書のとりまとめを行ったり、女性起業家支援のグループセミナーの講師をやったり、商工会議所アドバイザーとして経営革新計画の申請のお手伝いをしたりと、徐々に活動の領域を広げていきました。

― その後、活発に中小企業診断士として仕事をするようになったそうですが、業務内容も変わっていったのでしょうか。

大江栄さん

長男に障害があったこともあり、福祉に関心を持った私は、障がい者の福祉授産施設で障害者自立支援に取組みました。たとえば、工賃倍増計画のコンサルティングという名目で事業計画策定と導入支援をしたり、計数管理やマーケティングをテーマに、作業所職員向けのセミナーを行ったりといった活動です。一方で、以前から興味のあった女性の起業家支援にも携わるようになり、その分野のセミナーや創業支援も行っていました。この福祉関係と女性起業家支援の2つの分野がメインとなる形で仕事をしていました。

― 子育てのかたわら、順調にキャリアを積んでこられたのですね。

実は、中小企業診断士4年目くらいまでは、「中小企業診断士」と名乗ることに抵抗がありました。専業主婦を8年間やっていたことを自分で"ハンデ"だと思っていて、自分のレベル感がよくわからなかったんです。ただ、次から次へと仕事を紹介していただけたので、「きっと合格点なんだろう」と思えるようになり、それが自信につながって、堂々と「中小企業診断士」を名乗ることができるようになりました。

― 専業主婦から女性起業家に転身した最大のメリットは何ですか。

専業主婦時代の"ママ友"が、地元にたくさんいることです。長男の中学受験のとき、仕事が忙しくなってほったらかしにしていた私は、塾の先生に呼び出されて怒られたこともありました(笑)。でも、私の仕事が忙しいときには、近所のママたちが手分けして子どもたちの面倒を見てくれるんです。地元の"ママ友"とのネットワークはいまでも続いていて、とても助けられています。それと、子育て中の女性起業家の方の状況や気持ちが手にとるようにわかることです。そのおかげで、共感しながらも、時には厳しいアドバイスを行うことができているのかな、と思います。

(つづく)

【参考ホームページ】

大江 栄(おおえ さかえ)
エフ・ブルーム株式会社代表取締役。大学卒業後、オリックス株式会社に就職。不動産担保の資金融資営業を担当し、経営に興味を持ち始めるが、結婚・出産を機に退職。8年間の専業主婦生活に入る。2003年診断士資格を取得し、個人事務所を開業。2010年8月より品川区武蔵小山創業支援センターの初代センター長に就任、年間100名以上の女性の起業相談を受ける。2011年6月会社設立。