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埼玉の西端・秩父から日本一を目指す! 商工会議所で活躍する中小企業診断士

取材・文:同友館編集部

【第3回】さらなる高みへ~秩父から本気で日本一を目指して

取材日:2011年1月22日

黒澤元国さんにお話を聞くシリーズもいよいよ最終回。その1つひとつのメッセージは、きっと読者の皆さんにも伝わるはずです。

秩父から本気で日本一を目指す

黒澤元国さん

― 最近、秩父商工会議所の士気が高いとお伺いしましたが...。

いま、秩父商工会議所のモチベーションはすごく上がっていて、会頭や専務理事を筆頭に、全員で同じ方向を目指しています。経営支援において日本一のモデルになるような商工会議所を、本気で目指しているんです。

これまでの商工会議所のあり方が間違っていたわけでは決してなくて、地域や時代の変化に合わせて、われわれも変わっていく必要があります。右肩上がりの時代は、記帳指導や町のにぎわいづくりが大切でしたが、財政や景気が厳しくなっていくこれからは、究極的に企業を元気にする方法を考えなくてはいけません。

商工会議所は、補助金と会員企業からの会費で成り立っていますが、財政が厳しくなってくれば補助金が削減される可能性もあるし、退会する会員企業は全国的に増えています。こうした中、秩父では経営支援を通して、会費を大幅に引き上げてくださる会員企業も出てきています。「退会したい」との意向だったお客様を総務担当の職員が訪ねて経営革新支援につなげてくれた結果、評価が180度変わって退会を取り下げてくれた例もあります。これから先は、地元企業に本当に必要とされる組織にならなくてはいけません。秩父商工会議所が目指している方向は、ごく当たり前のものだと思っています。

経営革新についても、最初は自分だけで支援していましたが、いまでは後輩指導員と同行し、ある程度の計画までは後輩につくってもらうようにしています。平成23年度は、6名の指導員全員、経営革新支援ができるような体制を目指しています。実際に、指導員の意識も変わってきて、自主的に朝の読書を始めたり、資格取得に向けて勉強を始めたり、金融相談対応時には、積極的に経営革新支援の紹介をしてくれたりするようにもなってきました。当所は若い人材が多いので、経験が少ない分、新しい取組みも抵抗なく、どんどん進められます。これからの成長がとても楽しみです。

経営指導員で中小企業診断士―2つの顔を持つ存在として

黒澤元国さん

― 「黒澤さんはなぜ、独立しないのだろう?」という声もよく聞かれます。独立すれば、収入面では大幅な増加も見込めるのではありませんか。

この組織にいることで、自分自身のモチベーションはとても高まっています。たしかに給料はそんなに高くないけれど(笑)、現在の財政事情などを考えると、いまの組織で最大限の評価をもらっていると思いますから、むしろ感謝しています。いまはお金よりも、せっかく動き出してきた組織をしっかりと軌道に乗せたい。みんなで一丸となって、「経営支援日本一の商工会議所」を実現したいと思っています。自分が果たすべき責任をまだ果たせていない以上、いまの組織を出ることはまったく考えていません。

― 黒澤さんほどの方が、5回も中小企業診断士2次試験に落ちるというのは、非常に悔しいご経験だったと思います。すでに商工会で結果も出されている中で、試験をあきらめなかったのはなぜですか。

本当に悔しかったですよ(笑)。でも、結果がすべてだと思っていましたから、「何としても取るんだ。取らなければゼロだし、何年かかっても合格すれば満点だ」と思って、「合格するまで頑張ろう」という気持ちが途切れることはなかったですね。とはいえ、1、2回で受かっていたら天狗になっていたかもしれないし、何回も落ちたことで自分を変えていけた部分もあります。結果的には、適切なときに、適切なタイミングで受かったのだと思っています。

― それだけの苦労をされても、資格を取った意味はありましたか。

この業界で、中小企業診断士は最高水準の資格として認知されていますから、合格したことで得られる評価もありますし、いまの仕事のベースになっています。それに何より、企業訪問で経営者と会うときにも、「自分は勉強して中小企業診断士に合格したのだから、大丈夫。中小企業診断士なのだから、何としてもやりとげるんだ」という自負心が、自分に勢いをつけてくれています。あるのとないのとでは、全然違ったと思いますね。

― 秩父商工会議所のビジョンどおりに経営指導員がスキルアップしていくと、中小企業診断士による専門家派遣が不要になってしまうようなことはないのでしょうか。

それはないと思いますね。むしろそのニーズは、ますます増えていくと思っています。すべての商工会議所の経営指導員が経営革新支援まで内製できるようになるかというと、現実的には難しい部分もありますから、今後も専門家の方々と協力しながら、どんどん支援件数を伸ばしていかなければなりません。理想論的になってしまいますが、指導員と中小企業診断士双方がコンサルティング能力を高め、支援件数を増やしていくことができれば、この国にとってはハッピーなことですよね。

― この記事をご覧の方の中には、経営指導員として働きたいと思っている中小企業診断士や受験生がいらっしゃると思います。皆さんに対して、メッセージをお願いします。

商工会や商工会議所の考え方は、その組織によってまったく異なると思います。思い描いていた中小企業支援と、実際の現場とのギャップが大きいと感じ、失望して辞める方もいるかもしれません。ですから、経営指導員として働くことがよいかどうかは、一概には言えないと思います。

もしも、中小企業診断士として商工会議所に入り、現場で活躍しようと思うのであれば、自分自身がどうやって活躍していくかを考え、組織すらもコンサルティングしていこうという気概を持ってほしいと思います。秩父の話をしましたが、これだけ柔軟な商工会議所は、全国的にも珍しいほうです。組織をイノベーションしていくには、時間もかかります。外から入ってきて結果を焦りすぎると、対立で終わってしまいますから、「花開くまで3年はかかる」というくらいの長い目で見てほしいですね。

― 笑いを交えながらの取材は、あっという間に終わりを迎えます。最後の質問は、 「黒澤さんご自身の夢は何ですか?」でした。「経営支援において、日本一のモデル になるような商工会議所をつくること。それが、いまの僕の夢です」―迷うことなく 即答されたその言葉から、黒澤さんの強い思いが伝わってきました。

(おわり)

黒澤元国(くろさわ もとくに)
秩父商工会議所経営指導員、中小企業相談所中小企業支援課長。1972年生まれ。立命館大学経済学部卒業。2007年中小企業診断士登録。経営品質協議会認定セルフアセッサー、一級販売士。大手スーパーや医療法人などの勤務を経て現在、秩父商工会議所経営指導員として創業や経営革新支援等の各種相談業務に従事。ブログ「モトログ~ある診断士の終わりなき挑戦」http://blue.ap.teacup.com/motokuni/は、2004年12月より毎日更新中。