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中小企業診断士の仕事

埼玉の西端・秩父から日本一を目指す! 商工会議所で活躍する中小企業診断士

取材・文:同友館編集部

【第1回】BMX~日本一小さな商工会が成し遂げた大きな夢

取材日:2011年1月22日

今回は、秩父商工会議所で経営指導員として活躍する黒澤元国さんにお話を伺います。黒澤さんと言えば、受験生時代から毎日書き続けているブログ「モトログ"ある診断士の終わりなき挑戦"」や、(社)中小企業診断協会の会報誌『企業診断ニュース』で2年にわたって連載された『ぶらり全国酒味紀行』の執筆者として、若手診断士の間でも有名な存在です。酒席のイメージが強い黒澤さんですが、ここでは昼間の黒澤さんに焦点を当て、地域中小企業支援にかける熱い思いや、商工会議所での仕事の内容をお伝えします。

変わりつつある、商工会・商工会議所の役割

黒澤元国さん

― いくつかの仕事を経験した後、商工会に転職されたのですね。

大学卒業後、大手スーパーや医療法人での勤務を経て、埼玉県大滝村(現・秩父市)に戻り、家業のキャンプ場を継ぎました。そして、地元の若手経営者や後継者が集まる大滝商工会の青年部に参加していたら、「商工会の職員が定年退職になるから、ぜひ引き継いでほしい」と言われたんです。キャンプ場も軌道に乗ってきていたので、あとは弟に任せて商工会に転職しました。平成12年、大滝商工会に転職し、平成14年から経営指導員をしています。しかし、平成20年3月で大滝商工会が解散し、現在の秩父商工会議所に統合されたため、商工会と商工会議所の両方を経験することになりました。

― 商工会と商工会議所は、どう違うのですか。

ざっくり説明すると、比較的都市部にあるのが商工会議所で、それを取り巻くような町村にあるのが商工会です。根拠法や、組織運営の制度などにおいて違いはありますが、小規模企業を支援するという理念は同じです。現在の秩父商工会議所の職員数は17名ですが、大滝商工会のときは、自分と補助員のおばちゃんだけ(笑)。2名しかいない、日本一小さな商工会だったんです。2名しかいないと、事務局長などの管理職も存在しませんし、本当に"何でも屋"でした。

― 経営指導員とは、どういう仕事をする役割ですか。相談員とは別でしょうか。

経営相談員は日時限定の委託業務が多いですが、経営指導員はプロパー職員です。もともとは、金融相談や税務・労務の指導、地元業者の取引紹介などが主要業務でした。商店街などの団体の事務局仕事も多いです。「帳簿のつけ方がよくわからない」という個人事業者の方を手伝ったり、お金を借りる手順を教えたり、町おこしを応援したり...。昔の中小企業基本法で言われていた、「大企業と異なり、資本に乏しい小規模企業との格差を埋める」ための弱者支援のイメージですね。

しかし、中小企業基本法の方針も変わり、より前向きに頑張っている企業を支援しようという流れの中で、指導員にも経営革新やIT化、環境対応への支援などが必要とされるようになってきました。かつての右肩上がりの時代と、経営環境が厳しい現在では、求められるものも当然変わっていきますからね。

― 黒澤さんご自身は、どのようなお仕事が多いのですか。

いま一番多いのは、経営革新の支援ですね。秩父商工会議所では、平成22年度中に21~22件の経営革新支援を完成させる予定ですが、そのほとんどに経営指導員が対応しています。また、平成22年度においては、行政の依頼を受けて、国土交通省の「平成22年度地域経営推進事業」応募の企画立案・助言を行ったり、地元企業からの相談を受けて、「平成22年度地域商業活性化事業費補助金(買物弱者対策支援事業)」への応募を支援したりしました。いずれも狭き門でしたが、無事に採択されました。

日本一小さな商工会青年部から、事業規模数千万円の夢を実現

BMX競技場
BMX競技場

― 先ほど伺った、これまでの経営指導員の仕事の枠組みを超越していますね。何か大きなきっかけがあったのでしょうか。

大滝商工会青年部から始まった、BMX(※競技用の小径自転車、2008年北京オリンピックで正式種目に採用された)プロジェクトの経験が大きいと思います。平成14年頃から、ダム工事で使用した原石採取プラント跡地の利用策が、行政で検討されていました。これといった決め手に欠ける中、商工会青年部からも企画提案をしようという気運が高まっていったのです。

検討を重ねる中で、あるメンバーがBMXのコースを提案しました。「地域を盛り上げたい」という青年部メンバーの思いを何とか形にしたくて、事業化検討を進めていきました。私が中小企業診断士試験の勉強を始めたのが平成13年で、6回目の2次試験で合格したのが平成18年。まさに、中小企業診断士の勉強を反映しながら、BMX計画に取り組んでいったというわけです。

メンバーの誰もがBMXについては素人でしたが、検討していくうちに、維持管理費の低さや期待効果の高さなど、実現可能で魅力的な計画であることがわかってきました。われわれには壮大すぎるくらいの計画でしたし、プロジェクト進行のノウハウもありませんでした。それでも、建設や設計に携わるメンバーの力を借りて積算を行い、全日本BMX連盟やプロ選手を訪ねて協力をとりつけ、タイアップパートナーを見つけ、実行責任者やスケジュールを具体的に煮詰めて、数値シミュレーションを完成させました。満を持して市長への企画提案プレゼンテーションを行ったのは、平成19年12月のことでした。

企画は見事採用となり、2年後の平成21年11月22日、「秩父滝沢サイクルパーク」がオープンしました。ダメもとでのチャレンジでしたが、ついに青年部メンバーの夢が実現したのです。その後、平成22年4月25日には、「第26回全日本BMX選手権大会」も無事に開催されました。BMX世界選手権大会最終選考会も兼ねたビッグイベントです。大滝商工会の解散にともない、青年部そのものは消滅しましたが、メンバーはいまも、「秩父BMX協会」の中心となって活躍しています。

(つづく)

黒澤元国(くろさわ もとくに)
秩父商工会議所経営指導員、中小企業相談所中小企業支援課長。1972年生まれ。立命館大学経済学部卒業。2007年中小企業診断士登録。経営品質協議会認定セルフアセッサー、一級販売士。大手スーパーや医療法人などの勤務を経て現在、秩父商工会議所経営指導員として創業や経営革新支援等の各種相談業務に従事。ブログ「モトログ~ある診断士の終わりなき挑戦」http://blue.ap.teacup.com/motokuni/は、2004年12月より毎日更新中。