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中小企業診断士の仕事

“ビジネス支援図書館” ―全国に広がる地域密着の産業振興支援活動―

レポート:鎌田 浩一(中小企業診断士)

【第3回】「ビジネス・起業創業相談会」での仕事

最終回となる今回は、都立中央図書館でのビジネス・起業創業相談会の模様をご紹介します。中小企業診断士の仕事の1つとして、ご参考になれば幸いです。

ビジネス・起業創業相談会とは

相談会場入口
相談会場入口

前回ご紹介させていただきましたとおり、ビジネス・起業創業相談会とは、起業・経営相談等、中小企業のビジネスパーソンや経営者の課題解決を支援するとともに、同図書館におけるビジネス情報資料のいっそうの活用を図ることを目的として、都立中央図書館が提供しているサービスです。

ビジネス上の課題を抱えている都内在住・在勤者の方々を対象に、都立中央図書館の5階セミナールームにて、毎月2回開催しています(第2木曜日の16:00~20:00と、第4土曜日の13:30~17:30)。

身近な図書館で、平日夜間と週末に開催していることもあり、サラリーマンや主婦の方など、老若男女、多数の皆様にご愛用いただいています。また、「商工や中小企業振興という名称がついた機関は、敷居が高い気がして飛び込む勇気がない」といった方々も、図書館ということで、気軽に相談しやすい側面があるようです。

ビジネス・起業創業相談会の概要

相談員
相談員

筆者は、土曜日の午後を担当させていただいており、13:30~17:30にかけて4名の方々の相談にお応えします。完全予約制となっており、1人1時間の面談です。応対は、筆者と、(財)東京都中小企業振興公社にお勤めの中小企業診断士の方との2人で行っています。

相談者は、男性が7割と多いものの、女性の方の相談も増えてきています。年齢は、20~60代と広範囲です。また、都立中央図書館が立地する港区の方をはじめ、都内各地に在住・在勤の方々がお見えになります。

相談分野は、およそ9割が創業に関するものであり、開業率向上を企図して登場してきたビジネス支援図書館の使命に合致した傾向となっています。

業種としては、サービス業が6割で、小売業、製造業、卸売業などが後に続きます。サービス業の中では、「生活文化・支援・アミューズメント関連」が約4割と多く、そのほか、「ビジネス支援(対事業所サービス等)」、「住宅」、「医療・福祉」と続きます。筆者が応対してきた方々に限れば、ほとんどが個人事業主としてスタートする事業に関する相談であり、起業分野としてはネット販売小売業、情報サービス業、コンサルサービス業等が目立ちます。

相談内容は、「創業全般に関する知識を得たい」という方が約6割で、「資金調達」に関する相談が続きます。そのほか、少数ではありますが、「公的支援制度」、「営業・マーケティング」、「人材」、「法律」、「特許」、「ビジネスプラン作成」等、さまざまな内容の相談がみられます。

実際に相談を受けられた皆様のアンケート結果によれば、「夜間や土曜に相談会を行うと、仕事帰りや休日に相談ができて便利」(98%)、「図書館は誰でも利用できる施設なので、気軽に相談にくることができる」(52%)、「図書館の資料やデータベースが利用できて便利」(24%)、「職場や自宅の近所にあるので便利」(21%)と、ビジネス支援図書館の目的・存在意義が地域の皆様に受け入れられ、ご活用いただけていることがわかります。また、相談した後のご感想も、「相談の目的は達せられた」(41%)、「ある程度達せられた」(59%)と、高評価をいただいています。

業務にあたって心がけていること

相談風景
相談風景

当相談業務における筆者の立場としては、公的機関での業務ということから、自社または個人の責任でクライアントと接するケースとは異なり、図書館サービスのレプレゼンタティブとしての立場となります。つまり、相談者と図書館、そして筆者の派遣元である(社)中小企業診断協会に対して責任を負う立場で、業務にあたっています。

創業相談が多いことから、いまだ見ぬ将来の自分に対する夢と不安が交錯する状況下で、「自分のアイデアの出来具合を点検してほしい」という思いで来所される方が多く、人生の岐路に立ち、進むべきか思いとどまるべきかの判断に関するアドバイスを求めて相談に見える場合がほとんどです。

こうした方々に対し、筆者としては、「敬意をもって接する」ことと、「信頼と安心を与える」ことを心がけて業務にあたっています。相談者の皆様は、年齢も違えば、相談内容や相談に至る経緯・事情も異なります。当然に性格もまちまちで、しゃべりたい人(とにかく聞いてほしい人)、聞きたい人、議論したい人、結論を急ぐ人、熟考しながら歩を進めたい人など、実にさまざまですので、創業相談ということで十把一からげの応対をすることはご法度と、肝に銘じています。そして、人それぞれの性格や経緯・状況、事情があることを前提に臨むことが求められるため、1)まずはリラクゼーション、2)相手のタイプをつかむ、3)経緯・状況をつかむ、4)相談者のニーズを聞き出す、5)アドバイスの構成を考える、といった手順を踏むようにしています。

また、アドバイスの段階では、1)最低限のお土産をお渡しする、2)プラスとマイナスの両方を提示する、の2点を心がけています。相談者の多くの悩みは、知識やノウハウをお伝えするだけで解決する場合も多いのですが、その時点では納得気分でお帰りいただけたとしても、ご帰宅後に「いろいろ学べたが、何からスタートしたらよいだろう...」という状況に陥ることも起こりえます。総合的な解決方法だけでなく、「その方が帰宅して、即一歩を踏み出せるような具体的行動」についてアドバイスする(最低限のお土産をお渡しする)ことで、満足感がいっそう高まるものと考えています。

2)のプラスとマイナスの両方を提示するについては、よく準備ができている部分をほめ、認めて差し上げることで背中を押すアドバイスと、準備不足の部分について、一歩下がって熟考なさるよう留意を促すアドバイスの、両方の観点からお伝えすることを心がけています。一方向からの助言だけでは、相談者の方が後々困ることになり、また、大切な人生を苦難の道へとミスリードしてしまうことになりかねないため、責任は重大です。

中小企業診断士として

相談風景
相談風景

こうした相談業務は、中小企業診断士にとって担当しがいのある業務だと感じています。相談者と接する際に求められる能力は、「ニーズに応えること」に尽きると考えますが、この点、中小企業診断士は、経営手法や各種制度・手続に関する幅広い一定の知識を有しており、また、リラクゼーション力、傾聴力、質問力、論理的思考力、問題発見力、問題解決力といったさまざまな手法とツールにも精通しています。

このことは、中小企業診断士が相談者に対して、的確にニーズを把握するとともに、What(何をしたらよいか)と、How(どのようにしたらできるか)の両面からサポートして差し上げられることを意味していると思います。この点が、Whatの提言に終始してしまいがちな他の士業と中小企業診断士との違いではないかとも思うのです。私自身は、まだまだ勉強途中の身ですが、今後、お客様にご満足いただける中小企業診断士を目指して、精進を重ねていきたいと考えています。

最後になりましたが、当業務にて日頃お世話になっております都立中央図書館の皆様、(財)東京都中小企業振興公社の皆様、(社)中小企業診断協会の皆様、ならびに当職務をご紹介・ご推薦いただいた先輩診断士の皆様に、心から御礼申し上げます。

(おわり)

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