経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

中小企業診断士の仕事

“ビジネス支援図書館” ―全国に広がる地域密着の産業振興支援活動―

レポート:鎌田 浩一(中小企業診断士)

【第1回】「ビジネス支援図書館」とは?

中小企業診断士の活躍の舞台はさまざまですが、今回は、ビジネス支援図書館における仕事をご紹介したいと思います。
「図書館でビジネス支援?」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、今や全国各地の図書館がビジネス支援に取り組んでおり、特に「創業」を活性化させるための地域密着活動として根づきつつあります。今回のレポートを通じて、皆様のビジネス支援図書館ご活用の契機となりましたら幸いです。

公共図書館とビジネス支援の関係

都立中央図書館 1F中央ホール
都立中央図書館 1F中央ホール

どうして、図書館でビジネス支援なのか―。知人に、私が担当させていただいている東京都立中央図書館でのビジネス支援業務についてお話しすると、決まってこの質問をいただきます。

ご承知のとおり、図書館は、世の中のさまざまな図書を蓄積し、無料で利用者に提供する公共サービス機関であり、幼児向けの絵本や児童向けの伝記集などを借りにきたり、学生が自習しにきたり、大人が趣味や仕事上の専門書を探しにきたりと、個人が知的好奇心を満たす場、あるいは教育普及・啓蒙の場としてのイメージが強いのではないかと思います。

公立図書館の管轄省庁は文部科学省であり、そもそもの図書館の機能は、主に市民の学習のための施設だったわけですが、長年を経て洗練されてきた機能、すなわち、「さまざまな専門書が集まっていること」、「集められた蔵書が利用しやすいように分類され、提供されていること」、「在住・在勤の地域で手軽・気軽に利用できること」、「司書が置かれ、レファレンスサービスが可能なこと」などがビジネス支援にも有効ではないか、と近年、考えられるようになってきたのです。図書館を、いわば「地域の知的情報拠点」に位置づけてはどうか、という考え方です。

きっかけは廃業率の上昇

ビジネス支援図書館の試みが始まったのは、2000(平成12)年頃といわれています。

1991(平成3)年頃のバブル崩壊以降、日本経済は低迷を余儀なくされ、失われた10年が続くこととなりました。廃業率が開業率を上回る事態に陥り、現在なお、経済活力にとってきわめて根本的な問題として認識されています。

法律情報コーナー
法律情報コーナー

そのような中で、いかにして国内産業を活性化するか、いかにして雇用を創出するか、そのために、いかにしてベンチャー企業を含めた中小企業の開業の促進を図っていくか、がわが国の1つの大きな課題となりました。このため、創業の増加とそれを通じた雇用の確保を推進するために、数々の施策が講じられてきました。

ご承知のとおり、創業支援についてはさまざまな施策が展開されています。官庁、地方自治体、商工会、商工会議所など、さまざまな機関が経営相談や創業塾などを行っていますが、より幅広い支援促進を企図する中で、いくつかの課題が存在してきました。たとえば、「支援機関の多くが夜間・土日のサービスを行っていないこと」、「支援機関が在住・在勤地の近くにあるとは限らないこと」などです。

知的情報資源の拠点・図書館

そこで注目されたのが、図書館です。地域には、図書館という知的情報拠点があります。しかも、夜間・土日に空いており、司書という案内の専門家も常駐しています。

多くのサラリーマンは、平日には勤めがありますので、平日の日中しか開いていない創業相談などの公的サービスは利用しづらいと思われますし、書店で創業関連の図書を購入することができても、多くの書籍を見比べることは難しいかもしれません。その点、図書館には、創業支援に必要なものが多数そろっています。ビジネスコーナーをつくることで、会社設立などに関する各種ビジネス書を一度に参照できますし、専門家につなぐ窓口機能を持たせたり、図書館の十分なスペースを活用して、専門家を派遣し、アドバイスサービスを行ったりすることもできます。もともと、地域内の知的情報拠点だった図書館に、こうしたいくつかのビジネス支援機能を持たせることで、便利なワンストップサービスを提供し、より気軽に創業の門をたたける機会を拡大してはどうかというのが、ビジネス支援図書館構想の契機となったのです。

わが国におけるビジネス支援図書館構想の参考となったのは、アメリカやヨーロッパでのビジネス支援図書館先進事例といわれています。たとえば、アメリカの図書館では、かなり前から「ビジネス・インフォメーション・センター」といったコーナーを設けたり、リタイアした元経営者の方々などが、政府のアドバイザーとして図書館に赴き、経営の初歩を教えたり、といった創業・ビジネス支援サービスを提供しているそうです。

このようにして登場・発展してきたビジネス支援図書館は、筆者が担当させていただいている東京都立中央図書館をはじめ、今や全国各地に広がりつつあります。また、ビジネス支援図書館設立推進の全国団体として、ビジネス支援図書館推進協議会も発足しています。

(つづく)

【参考ホームページ】

【こちらもおススメ!】