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中小企業診断士の仕事

プロジェクトチームで授産施設の販路開拓を支援

文:大石 幸紀(中小企業診断士)

【第2回】最小限のコストと時間でミッションを共有

具体的な支援として最初に行ったのが、現地での視察とヒアリングです。はらから福祉会の武田元・理事長や高橋正勝・営業部長に対し、はらから福祉会の現状についてヒアリングを実施しました。同時に各授産施設で、どのような商品を、どのような工程で製造しているか、視察も行いました。

今回の依頼は、事業終了までの期間が短いこともあり、現在、はらから福祉会が取り扱っている商品を、プロジェクトチームの各メンバーが有している人的関係を活用して、バイヤーなどに紹介していく方法を採用しました。

商品プレゼンテーション
商品プレゼンテーション

的確な紹介をするには、全メンバーにはらから福祉会の商品を知ってもらわなければなりません。ただし、6名全員が往復6時間をかけてはらから福祉会まで出向くことは、時間と旅費のムダですし、忙しいメンバーのスケジュールを合わせていたら、いたずらに時間が経過してしまいます。

そこで、視察は私と森山さんの2名が担当しました。はらから福祉会では、複数の授産施設が各々、豆腐や湯葉、油揚げ、鯛茶漬けといった商品を分担して製造しており、それぞれの施設長がその商品の魅力を一番知っています。そこで、各施設長に自施設が製造している商品のプレゼンテーションをしてもらい、その様子をすべてビデオに撮影しました。その後、プレゼンテーションを受けて感じた疑問点をわれわれが質問し、その質疑応答の様子も、ビデオに収めました。

東京に戻ってきてから、調理施設を備えている区民館を予約し、6名の専門家が集まりました。高橋営業部長も招き、視察時に撮影したビデオを上映して、各施設長の商品プレゼンテーションを視聴します。食品ですので、プレゼンテーションをしている商品の味覚がわからなければ話になりません。そこで、同会のスタッフが上映している商品を調理し、参加者に配っていきます。参加者は、味やパッケージを確認しながら、さらにわいてくる疑問点を私や高橋営業部長にぶつけます。そうして、試食会および説明会を2時間ほどで実施しました。

メンバーの感想は、総じて味については満足がいくものであるが、値段がどうしても高い、というもの。味へのこだわりを持つ顧客層、これら商品の社会的意義を感じてくださる顧客層をターゲットとするチャネルを掘り起こす必要性を、皆で共有しました。そして、数ある商品の中で、独自性を有し、商品としての完成度も高い『ゆば入り鯛茶漬け』と『味噌漬け油揚げ』にターゲットを絞りました。

なお、『ゆば入り鯛茶漬け』の概要は、こちらにてご確認ください。

即採用の一方で、次につながる改善の指摘も

中小企業診断士による試食会
中小企業診断士による試食会

翌日から、各メンバーが試食した中で、どの商品なら自身が持っているチャネルに紹介できるのか、対象商品とチャネルを私にメールで報告してきます。そして私は、担当メンバー名、社名、その会社の特徴を一覧にまとめ、はらから福祉会に随時報告します。私のほうでGOを出した相手先には、メンバーにアポイントをとるとともに、商談日を決めてもらいます。メンバーによっては、最初は自分一人で紹介に行くことを望む者、高橋営業部長に同行を求める者と分かれますので、それぞれの状況も報告したうえで、同行してもらいたい先については日程を調整していきます。

そうして、今回実際に商談を行った相手先は、以下の17社になりました。

  • 飲食店・カタログ販売業への卸売店 3社
  • 飲食店 3社
  • 地域物産販売店 2社
  • 百貨店 2社
  • 高級品扱いスーパー 4社
  • その他 3社

その中で、卸売業1社、地域物産店1社、飲食店1社では、すぐに採用してくださることになりました。ギフト商品として紹介した『ゆば入り鯛茶漬け』については、カタログ販売やネット販売といった通信販売のチャネルで、一定の評価を得ることができました。その結果、パッケージ、入り数、添加物について改善の指摘をいただき、これらの問題をクリアすれば、はらから福祉会が設定している価格でも、カタログや通販サイトのスペースを空けてもよい、というオファーを得ました。

当初は、価格の高さが問題になるかと予測していましたが、最初から、高くてもその価値を認めれば購入する層を顧客として持つチャネルを中心に販路開拓したことが功を奏し、取り扱いを検討するという前向きな回答を得ることができたのは、大きな成果でした。

はらから福祉会の取組みの社会的意義、商品そのものが持つ魅力、そして各メンバーの人的信頼関係の3つが融合された結果でしょう。その後も、高橋営業部長を中心として、紹介した各社担当者との打ち合わせが継続しています。

(つづく)