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中小企業診断士の仕事

プロジェクトチームで授産施設の販路開拓を支援

文:大石 幸紀(中小企業診断士)

【第1回】支援はこうして始まった

「大石さんのネットワークを使って、授産施設の販路開拓を支援してもらえませんか」 仲間の中小企業診断士から一本の電話がかかってきたのは、平成22年1月の終わりでした。授産施設とは、障がいがあるために一般就労が困難な人たちが通所し、働くための施設のこと。私が過去に授産施設の経営戦略構築をお手伝いしたことを知っていた仲間が、私を頼って電話をしてきたのです。

実際は、その彼に授産施設から販路開拓支援の依頼があったのですが、本人は年度末で業務多忙のために、どうしても引き受けることができないとのことでした。また、短期間の依頼であることから、多くの中小企業診断士にネットワークを持つ者のほうが、このミッションを遂行しやすいと考え、私を紹介したというのです。

はらから福祉会の豆腐製造
はらから福祉会の豆腐製造

中小企業診断士を中心とした販路開拓プロジェクトチームに、自社商品の販路開拓と新商品サービス開拓を依頼したのは、宮城県の社会福祉法人はらから福祉会。県南部において、授産施設やグループホーム20施設を職員約80名で運営し、施設利用者約280名に働く場を提供している社会福祉法人です。

本稿では、われわれ6名の中小企業診断士・コンサルタントグループが、この社会福祉法人の販路開拓支援をどのように進めたのか、そしてどのような成果をもたらしたのかをレポートします。

なお、はらから福祉会の概要は、こちらにてご確認ください。

依頼主は障害者福祉界のトップランナー

厚生労働省によると、平成20年度の授産施設の利用者(働かれている方)の全国平均月額工賃は12,587円。この数字を初めて目にした方は、日額と勘違いしてしまいそうな金額ですが、間違いなく月額です。そのような状況において、はらから福祉会では2010年3月期の決算で、利用者に平均月額5万円を超える工賃を支給しています。そして、2012年3月期までに、工賃を7万円にまで引き上げる5ヵ年計画を策定し、現在推進しています。

障がい者は、障害年金の給付を月に6~8万円受けています。工賃7万円が達成できれば、合わせて約15万円となり、親御さんからの自立が可能となるのです。

オリジナル商品 ゆば入り鯛茶漬
オリジナル商品 ゆば入り鯛茶漬

なぜ、このような高い工賃をはらから福祉会は実現できるのか。それには、いくつかの要因があります。その中で注目すべきは、はらから福祉会が扱っている商材は、豆腐、油揚げ、湯葉といった日配品であることです。おいしい商品を提供できれば、毎日リピート購買する顧客をつかめる日配品を主力商品に選んだことが、同会の売上高を年々伸ばしている理由の一つです。

現在の、はらから福祉会の豆腐や油揚げは、一部生協での取り扱いがあるものの、全国の福祉施設での小売りが、主たるチャネルでした。しかし、限られたチャネルでは、売上が頭打ちになることが予想されます。次年度(平成22年度)を迎えるこの時期に、今後の拡販につながる手を打っておきたい―それが、はらから福祉会が外部専門家の力を借りようとの考えに至った理由です。

150名のネットワークから適任者を選抜

私は、中小企業診断士やコンサルタントを会員として組織されたNPO経済活動支援チームの事務局長を務めています。また、会員が100名を超える中小企業診断士独立開業研究会も主宰しています。そのため、総勢150名以上の中小企業診断士の方々が、どの分野の専門性を有するのかを把握していることになります。

今回の依頼を受け、預かっている経歴書やプロフィールを精査し、今回のミッションでもっとも強みを発揮してくれるメンバーを選出しました。そして、声をかけた方全員から参加を快諾してもらいました。そのメンバーは、次のとおりです。

栗田 剛志(中小企業診断士) http://www.m9consulting.biz/

 食品商社で15年営業に従事し、百貨店、高級スーパーへの人脈を有する。食品流通チャネル全般にて、新商品導入や特売・販促企画提案を支援している。

森山かずお(中小企業診断士)

 地域資源の商品開発、販路開拓の実績を有する。また、授産施設の幹部・職員を集めた経営改善セミナーの講師を務めるなど、障害者福祉分野での収益事業立ち上げに造詣が深い。

高橋 順一(中小企業診断士) http://plaza.rakuten.co.jp/junichi55/

 食品メーカーで取締役原料部長、取締役原資材調達本部副本部長を歴任。その経験を活かし、食品メーカーや農水産業、飲食店に対する衛生管理、業務効率化、新商品開発支援を専門としている。

遠藤 裕久(コンサルタント)

 大手印刷会社出身。在籍中より小売業の販売促進支援を手がけていたことから、大手流通業の多数のバイヤーと人脈を有する。現在でも、新潟県などの地域資源の首都圏における拡販を支援している。

内藤 博(中小企業診断士) http://seed-llc.com/

 出版会社出身。広告代理店の経営経験を有するなど販促企画提案、販売戦略立案を得意とする。また、全国生協、百貨店系通販業、健康食品販売業にチャネルを持つ食品卸業を顧客とするなど、食品流通に多数の人脈を有する。

かくして、はらから福祉会販路拡大プロジェクトが立ち上がったのでした。

(つづく)