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中小企業診断士の仕事

診断士と栄養士 強力夫婦タッグ

文:弥冨 尚志

【第3回】強力夫婦タッグ 動き出す(1)

2人でやれば出来ること。

家内と同行しての打ち合わせ。当初は依頼内容明確化や金額的交渉を私がやるのだろうと言う意識でした。勿論、そういう要素は今でもありますし重要な交渉内容です。

しかし色々な商談を重ねるうちに管理栄養士のノウハウを活用したいと言うニーズに気づき始めて自分が診断士であることを意識する内容が増えて来たのでした。

中小企業診断士と言うのは中小企業の診断や助言に留まらず、その資格試験を突破してきた実力は色んな方面で発揮できる可能性は自分が考えている以上に高いのではないかと思うようになりました。その代表的な事例をお話します。

◎事例1:誰に何を提供するのか。

それは九州に引っ越した家内の栄養士友達からの依頼でした。「私の知り合いの日本料理店がごぼうスィーツを作りたんだけど相談に乗って欲しいと頼まれたので力を貸して欲しい」と言う内容でした。

そのお店の二代目の専務さんが上京された際にお会いして色々お話を伺いました。

そのお店は地域の食材を活用した会席が地元では評判になってきたので東京にも進出したい、と言う意向でした。その目玉商品としてごぼうスィーツをやりたい、と言うものでした。そこで管理栄養士から見てユニークなアイデアはないだろうか、と言うものです。

私と家内の質問はそれぞれこうでした。「誰をターゲットにした商品にしようと思っていますか?」・「ごぼうは低カロリーで食物繊維が豊富な食材です。その食材の長所を活かすことは考えていますか?」

すると「いや、いいものを作れば自然と評判になって売れるだろうと考えていたのでそういう細かなことは考えていませんでした。そう言うことを考えるべきなのでしょうか?」、二人とも間髪いれず「はい」と答えました。

それから3ヶ月に渡ってごぼうスィーツの開発に取り組むことになりました。東京進出こそしていませんが地元のデパートの地下の洋菓子エリアの一角でごぼうスィーツの販売を続けています。ダイエット中の女性や甘いものが制限されている糖尿病の方などに重宝されていると聞いています。

専務さんはごぼうスィーツというアイデアに固執してしまって他のことが疎かになっていたのかもしれません。ごぼうと言う食材の持つ長所をどういう顧客に訴求するのか、そして老舗日本料理店の持つブランドを希釈することなくまた長年培ってきた調理技術も活かしつつどう言う商品を作るのか、と言うことをアドバイスしながら一緒になって商品開発を行いました。それはビジネス的側面と栄養学的側面の両面のアドバイスを行うものでした。

栄養学的な話以外は診断士であれば当然の助言だとお感じになられると思います。私も試験勉強の中で培ってきた内容をセオリー通りに行っただけで特段、私が商品開発に優れたスキルを持っているなど一度も思ったことはありません。(今もそうです)でも顧客にとって見れば両方の話が聞けるメリットがあったからこそ私たちに依頼してくれたのではないかと思っています。

◎ 事例2:栄養士のノウハウを分解する。

それは関西に本社がある大手薬品メーカーからの1本の電話から始まりました。「糖尿が気になる人向けの冷凍給食を通信販売するに当たってメニューの相談に乗って欲しい」そう言う依頼なら遠いことだし家内だけが出向けば済む話だと思っていました。

しかし初回だけ同行することにしたのです。栄養士の家内だけが来ると思っていた相手方は診断士の肩書きの私の同道に違和感を覚えたのか名刺交換のあと「お二人でやっているのですか?」と聞いてきました。私は先の日本料理店の話や起業以来の経緯を説明しました。

すると以外な反応が返ってきました。「それは大変心強いです。ぜひ今回の企画にお二人に協力して欲しい」それは社内の研究所を始め営業所等にも数多くの栄養士はいるがこう言う企画モノに対してなかなか意見を出してもらえないしマイペースな人種なので意見などをまとめづらい。外部の方でまた栄養士の良さをそばで引き出す人がいるのは有難いと言うことでした。

そう言われ自分達に何が出来るのか戸惑いも感じましたが頼られていることは嬉しく思いました。(後日、判ったことですがその担当者は米国でMBAを取得した人でした)

最初はメニューの内容についてのエビデンスを依頼するだけのつもりだったようでした。しかし担当の目的は商品を購入した顧客へのサービスをWebで行うサイトを立ち上げることにありました。その企業は一部上場の会社だけあってとてつもないDBを作り上げていました。数多くのレシピをカロリーは勿論、栄養素や食材の量まではじき出すものでした。それを利用して顧客が1日の食事記録をWeb上で行いながら自社の商品を推奨するサービスを目指していたのです。その仕組みを大手システム会社に依頼しているので出来上がったら一緒に検証して欲しいと言うものでした。

確かに栄養士の臨床の現場では治療者の食事記録を見て適切なアドバイスをすることが求められます。そのWeb版を作ろうと言うものでした。そして更に記録を入力した顧客にリアルタイムでその人だけに合った自社の商品をアドバイスすると言う内容でした。食事内容は何万人の顧客がいたとしても全く一緒になるものではないからその人だけのものを返せる、そう担当者は確信していたようでした。

打ち合わせの帰り道、「さすが大手企業は考えることもやることもスケールが違うね」と感心しながらそのシステムがどんなものになるのか楽しみにしていました。しかしその数週間後以外な連絡がきました。

「システム会社からその仕組みはとても作れない、と言ってきました。何とか力を貸して欲しい」 担当者の気落ちした電話にすぐさま駆けつけ話を詳しく聞きました。簡単に言えば膨大な作業量(何万通りのコメントの作成が必要)になるので期日まで間に合わないと言うものでした。広告代理店側でもお抱えのドクターや栄養士を多数集めて検討した結果だと言うことでした。

「それは残念でしたね」そういう結論で終わると思っていたのですが、担当者からは「お二人のお知恵で何とかできませんか?」

「へっ?」そりゃ無理でしょう。天下の大手システム会社が出来ないと言ったものをウチらが出来る訳がないでしょう。そう思いつつも何が出来るのか考えてみることにしました。

(つづく)